REVIEW
FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~(レインボー・リール東京2023)
7月21日(金)、レインボー・リール東京2023の渋谷ユーロライブでの上映がスタートしました。アジア短編集、とてもよかったです!

先週の三連休は表参道のスパイラルホールで開催され、盛り上がりを見せた第31回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)。7月21日(金)から23日(日)までは渋谷ユーロライブで開催されます。その最初の上映となった「FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~」のレビューをお届けします。
ユーロライブと聞いて、ユーロスペースを思い出した方、正解です(以前あった桜丘ではなく、円山町です。念のため)。映画館のユーロスペースと同じビルの2Fが、ユーロライブというイベントホールになっています。
暑いので、ハチ公口から道玄坂を登って行くとか前のBunkamuraのところから入っていくよりも、井の頭線改札横のエスカレーターを上がってマークシティに入り、涼しいマークシティを通り抜けて、出たところから信号を渡って、のほうがいいと思います。ON AIRを過ぎて、club asiaのすぐ先です。ON AIRのところにローソンがあるので、飲み物など買って行けます。(なお、ユーロライブ、ユーロスペースは喫煙所がありませんので、ご注意ください)
2Fのユーロライブのロビーには、物販などのブースはないのですが、フォトブースで記念写真も撮れますし、映画のポスターやメッセージパネルが展示されていたり、映画のチラシやHIV関係のパンフなども置かれていて、待ち時間もいろいろなことをして過ごせそうです。
ホールは結構広かったです。上映が始まるまでの間に流れていたのが夏テーマの歌謡曲で、素敵でした(キョンキョンの「夏のタイムマシーン」とか)
16:15から今年の映画祭の上映作品の紹介映像やCM、映画予告などに続き、「FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~」の上映が始まりました。
インド映画『孤独な王子』は、映像や音楽がやたらクオリティが高くて、プロフェッショナルすぎて、ちょっとビックリしました。さすがはボリウッドの国ですね。インドのゲイの王子といえばマンヴェンドラ王子ですが、もしかしたらオマージュを捧げる気持ちもあるのかもしれないな…と思ったり。とても美しい、古代の神話のような作品でした。王子の護衛が全員女性なのも素敵でした。
<作品解説>
孤独な王子は彫刻家を宮廷に招き、芸術作品を作らせる。彫刻家が大理石の塊を彫っていくうちに、王子もまた新たな自分を発見していく。壮大な世界観と映像美が見どころのファンタジー・ロマンス。
孤独な王子 ★日本初上映
英題:The Lonely Prince 監督:シヴィン&サニー 2020|インド|16分|英語
台湾の『U・ラブズ・ユー』は近未来モノの女性映画で、台湾ってこういうのが流行ってるのかな?と思ったら、『ロザリンドとオーランドー』と同じ監督でした。どうりで。納得!
<作品解説>
配達ロボットのUは在宅勤務の映像編集者リンミンに恋をする。しかし、ロボットと人間の交際は禁じられていて…。『ロザリンドとオーランドー』(第30回クロージング作品)のチェン・ホンイー監督による近未来的でポップなSFロマンス。
U・ラブズ・ユー ★日本初上映
英題:U Loves You 原題:看不見攻擊的程式 監督:チェン・ホンイー(陳宏一) 2021|台湾|22分|中国語
インドネシアの『マカッサルはサッカーファンの街』は、サッカーファンという「ザ・ホモソーシャル」な男集団に属し、必死に仲間に受け入れられようと涙ぐましい努力をして、ゲイとしての自分を押し殺してしまう主人公の痛みや切なさを描いています。インドネシアは以前と違って非常にホモフォビアの強い国になってしまいましたよね…。ちょっとぽっちゃりしたアクバルくん、かわいいです。そこから抜け出して自由な世界に行けたらいいのに…と思ってしまいました。
<作品解説>
男たちがサッカーに熱狂する街、マカッサル。ゲイの青年アクバルは、仲間から拒絶されることを恐れてサッカーファンのふりをするが…。ホモソーシャルな男たちのコミュニティを鋭く描いたドラマ。サンダンス映画祭2022出品作。
マカッサルはサッカーファンの街
英題:Makassar Is a City for Football Fans 監督:コージー・リザル 2021|インドネシア|20分|インドネシア語
台湾の『タンクフェアリー』、最高!でした。ガスボンベの配達の仕事は通常、お腹が出てるような中年男性がやってるんだそうですが、「タンクフェアリー」は渡辺直美さんそっくりな女装(ですよね?)の配達人で、バッチリメイクして、ネイルも完璧です。彼女は配達先の家の男の子を見てピンときて、魔法をかけ、男の子は一気に女装に目覚め、二人は意気投合。ガスタンク型のミラーボールの下で華麗にダンス!お母さんもビックリ!という素敵作品です。最後がまるでドリフのような展開で、思わず「ダメだこりゃ」って言いたくなりました(笑)
<作品解説>
ジョジョは孤独で夢見がちな小学生。ある日、家に“タンクフェアリー(ガスタンクの妖精)”が現れて、ジョジョに魔法をかける。世界中の映画祭を席巻した最高にキュートなミュージカル。
タンクフェアリー
英題:Tank Fairy 原題:桶妝仙女 監督:エーリヒ・レトシュタット 2022|台湾|10分|中国語
韓国作品『ティンダー時代の愛』は、まさかの爆笑コメディでした。今回の映画祭で観てきた作品の中で最も笑いが多かったと思います。韓国でもこんなにエッジの効いた、突き抜けたクィア映画が作られてるなんて…オドロキでした。エブエブっぽさもあり、本当に面白い作品です。ぜひご覧いただきたいです。
<作品解説>
レズビアンの高校生ヨンジュは、母とケンカした末に最悪の結果を招いてしまう。自己嫌悪から自殺を試みるヨンジュだが、クラスメートの邪魔が入り、事態は思わぬ方向へ。自己肯定感の低い若者たちが自分を好きになるまでの物語。
ティンダー時代の愛 ★海外初上映
英題:Love in the Tinder Age 原題:틴더 시대 사랑 監督:チョン・インヒョク(정인혁) 2019|韓国|29分|韓国語
FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~
アジアの短編映画を集めたプログラム。ファンタジー、SF、ミュージカル、コメディなど、さまざまなジャンルの異色作が勢ぞろい。クィア映画の可能性を広げる“ファンタスティック”な作品をお楽しみください!
7月21日(金)16:15- @ユーロライブ
7月23日(日)16:50- @ユーロライブ
INDEX
- 同性へのあけすけな欲望と、性愛が命を救う様を描いた映画『ミゼリコルディア』
- アート展レポート:CAMP
- アート展レポート:能村 solo exhibition「Melancholic City」
- 今までになかったゲイのクライム・スリラー映画『FEMME フェム』
- 悩めるマイノリティの救済こそが宗教の本義だと思い出させてくれる名作映画『教皇選挙』
- こんな映画観たことない!エブエブ以来の新鮮な映画体験をもたらすクィア映画『エミリア・ペレス』
- アート展レポート:大塚隆史個展「柔らかい天使たち」
- ベトナムから届いたなかなかに稀有なクィア映画『その花は夜に咲く』
- また一つ、永遠に愛されるミュージカル映画の傑作が誕生しました…『ウィキッド ふたりの魔女』
- ようやく観れます!最高に笑えて泣けるゲイのラブコメ映画『ブラザーズ・ラブ』
- 号泣必至!全人類が観るべき映画『野生の島のロズ』
- トランス女性の生きづらさを描いているにもかかわらず、幸せで優しい気持ちになれる素晴らしいドキュメンタリー映画『ウィル&ハーパー』
- 「すべての愛は気色悪い」下ネタ満載の抱腹絶倒ゲイ映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』
- 『ボーイフレンド』のダイ(中井大)さんが出演した『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第2話
- 安堂ホセさんの芥川賞受賞作品『DTOPIA』
- これまでにないクオリティの王道ゲイドラマ『あのときの僕らはまだ。』
- まるでゲイカップルのようだと評判と感動を呼んでいる映画『ロボット・ドリームズ』
- 多様な人たちが助け合って暮らす団地を描き、世の中捨てたもんじゃないと思えるほのぼのドラマ『団地のふたり』
- 夜の街に生きる女性たちへの讃歌であり、しっかりクィア映画でもある短編映画『Colors Under the Streetlights』
- シンディ・ローパーがなぜあんなに熱心にゲイを支援してきたかということがよくわかる胸熱ドキュメンタリー映画『シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング』