REVIEW
映画『ドラマクイーン・ポップスター』(レインボー・リール東京2025)
6月21日(土)・22日(日)に渋谷ユーロライブで第32回レインボー・リール東京が開催されました。21日に上映された映画『ドラマクイーン・ポップスター』のレビューをお届けします

1992年から始まり、国内で最長寿のLGBTQコミュニティイベントとなっているレインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)。2年ぶりとなる今年はプライド月間に渋谷のユーロライブで、7月第2週に東京ウィメンズプラザホールで開催されることになりました(詳しくは特集をご覧ください)
今回、渋谷のユーロライブで全6プログラムのうち4プログラムを鑑賞しました。レビューをお届けしていきます。
アレクシ・ラングロア監督によるフランス・ベルギー映画『ドラマクイーン・ポップスター』は、「ゼロ年代ポップワールドを背景に繰り広げられるクィアでキャンプな愛憎ドラマ」(映画祭公式サイトより)で、カンヌ国際映画祭2024批評家週間に選出されたほか、BFIロンドン映画祭2024でも上映された作品です。
<あらすじ>
ミミはポップアイドルとしてデビューが決まり、同時にレズビアン・クラブでのパンキッシュなパフォーマンスが人気のビリーと恋愛関係になる。ミミは急速にポップスターとして売れ、元は憧れの存在だったビリーを一瞬で超えて有名になるが、セクシュアリティや恋人のことは世間に秘密で…。


女装のゲイのインフルエンサー(ユーチューバー?)がストーリーテラーになっていて、思った以上に笑いがたくさん盛り込まれたPOPでCAMPなエンタメ作品でした。
『アメリカン・アイドル』のフランス版みたいな番組のオーディション会場。初めてで緊張している若いミミの前にいた女性がアイコンタクトしてきます。着ていたシャツのボタンを外すと、その下のTシャツに、エリー・ムーアという伝説のレズビアンのパンク歌手のポートレートがプリントされていました。ミミの前に名前を呼ばれたその彼女は、「くたばれ家父長制!」と叫び、会場をつまみ出されます。ミミは緊張しながらもオーディションに臨み、首尾よく合格。そして、つまみ出された彼女が撒いていたチラシを見て、そのライブに足を運ぶのです。
ビリーはパンクバンドをやってて、マッチョな着ぐるみを着たダンサーを従えて、鍛えた腹筋やなんかを讃える歌を歌ったり(ちなみにビリーは、声はマイリー・サイラス、見た目はビリー・アイリッシュにちょっと似てると思いました)。ミミはすっかりビリーの魅力にハマり、二人はすぐに恋に落ちるのです。が、ミミはデビュー曲が大ヒットし、国内のみならず海外でも人気が出て、あれよあれよという間に世界的なポップスターになってしまい、会う時間もなかなかとれず、カミングアウトも考えられず、二人の距離はどんどん広がるばかり。そうして、「事件」は起きたのでした…(80年代の佐良直美さんの事件を思い出しました)
ポップスターの憂鬱というか、ミュージシャンや俳優などは、業界の圧力もあってカミングアウトが難しく、プライベートでも本当に好きな人と一緒にいることができないし、LGBTQのお店に出入りするのも憚られる、息が詰まるような生活を強いられるという問題がリアルに描かれていました。さらに、商業主義とフェミニズムとのバッティングの問題などもわかりやすく描かれています。売れるためにはいろんなものを我慢したり媚びたりしなくてはいけない。魂が削られるようなこと。
エリー・ムーアという伝説のパンク歌手が、カミングアウトしたばかりに芸能界を追われ、ホームレスになって悲惨な死を遂げるというエピソードもあって、シリアスでした。
レズビアンだけでなく、ミシェルというミミの大ファンのゲイが登場するのですが、好きすぎるあまり、行動がストーカー的にエスカレートしてしまい、迷惑をかけます(リアルにそういう人もいるのかもしれないけど、ちょっと悪意も感じたり…)。そんなミシェルも、最も熱心にファンを増やしてくれたインフルエンサーだったわけですし、最後には許されます(熱烈なファンとストーカーは紙一重ってことなのでしょう。愛と憎しみがそうであるように。映画のエンディングのときに、「マイノリティや忘られた変人」に捧げるという言葉が映し出されていて、なるほど、と思いました)
次は7/12(土)15:30 東京ウィメンズプラザにて上映されます。今回のプログラムのなかでいちばんポップなエンタメ作品なので、きっと楽しめると思います。
ドラマクイーン・ポップスター
原題:Les reines du drame 英題:Queens of Drama
監督:アレクシ・ラングロア
2024|フランス・ベルギー|115分|フランス語 *日本初上映
INDEX
- 近未来の台北・西門を舞台にしたポップでクィアでヅカ風味なシェイクスピア:映画『ロザリンドとオーランドー』(レインボー・リール東京2022)
- 獄中という極限状況でのゲイの純愛を描いた映画『大いなる自由』(レインボー・リール東京2022)
- トランスジェンダーの歴史とその語られ方について再考を迫るドキュメンタリー映画『アグネスを語ること』(レインボー・リール東京2022)
- 「第三の性」「文化の盗用」そして…1秒たりとも目が離せない映画『フィンランディア』(レインボー・リール東京2022)
- バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
- 雄大な自然を背景に、世界と人間、生と死を繊細に描いた『遠地』(レインボー・リール東京2022)
- 父娘の葛藤を描きながらも後味さわやかな、美しくもドラマチックなロードムービー『海に向かうローラ』
- 「絶対に同性愛者と言われへん」時代を孤独に生きてきた大阪・西成の長谷さんの人生を追った感動のドキュメンタリー「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」
- アジア系ゲイが主役の素晴らしくゲイテイストなラブコメ映画『ファイアー・アイランド』
- ミュージシャンとしてもゲイとしても偉大だったジョージ・マイケルが生前最後に手がけたドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル:フリーダム <アンカット完全版>』
- プライド月間にふさわしい名作! 笑いあり感動ありのドラァグクイーン演劇『リプシンカ』
- ゲイクラブのシーンでまさかの号泣…ゲイのアフガニスタン難民を描いた映画『FLEE フリー』
- 男二人のロマンス“未満”を美味しく描いた田亀さんの読切グルメ漫画『魚と水』
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
- LGBTQユースの実体験をもとに野原くろさんが描き下した胸キュン青春漫画とリアルなエッセイ『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
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