REVIEW
血のつながりだけじゃない家族のありようを世に問う素敵な映画『レンタル・ファミリー』
家族を「レンタル」するサービスをめぐるあれこれを描き、血のつながりだけじゃない、人と人とが心通わせるなかで生まれる「chosen family」的な家族のありようを世に問うような映画でした。主演は『ザ・ホエール』でゲイ役を演じたブレンダン・フレイザー。今回はゲイ役ではありませんが、その魅力が全開です。ぜひご覧ください

『ザ・ホエール』で第95回アカデミー主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザーが主演を務め、全編日本で撮影を敢行したヒューマンドラマ。日本人監督・HIKARIがメガホンをとり、東京で暮らす落ちぶれた俳優が、レンタル・ファミリーの仕事を通して自分自身を見つめ直していく姿を描いた作品です。
<あらすじ>
かつて歯磨き粉のCMで一世を風靡したものの、近頃は世間から忘れ去られつつあるアメリカ人俳優フィリップ。俳優業を細々と続けながら東京で暮らし、すっかり街になじんでいた。そんなある日、フィリップはレンタル・ファミリー会社を経営する多田から仕事を依頼される。レンタル・ファミリーとは、依頼人にとって大切な「家族」のような役割を演じることで報酬を得る仕事。最初のうちは、他人の人生に深く関わることに戸惑うフィリップだったが、仕事を通して出会った人々と交流していくうちに、いつしか彼自身の心にも変化が起こりはじめる。




いろんな意味でよかったです。クィア映画かと言われると微妙ですが、当事者のキャラクターも登場しますし、旧来の家族のありようを根本的に問い直し、多様な家族のありようを提示する作品なので、LGBTQとの親和性は高いはず。そして何より、ブレンダン・フレイザーの魅力が全開で、まさかのサービスショットもあったりして、ファンとしてはうれしい限りでした。
まず、ネタバレになるので詳しくは述べませんが、性的マイノリティ(クィア)のキャラクターが登場するエピソードが、この映画における大事な感動的場面になっていたことはお伝えしておきます。(もうそれだけで十分という気もしますが、まだまだ語るべきポイントがあります)
そもそもフィリップは単身アメリカからやってきて、仕事があまり上手くいってなくて、小田急沿線かどこかのマンションで独り暮らししてて、恋人もいなくて、たまに風俗を利用している(そこがよかった。セックスワークを肯定しているという意味でも、ブレンダンの裸が見れたという意味でも)ような、側から見ると寂しい生活を送ってる人です。
そういうフィリップが、レンタルファミリーの仕事を通じて出会った人たちに対して、血のつながった家族と同然…というより、実の家族よりも濃く、強い「絆」ともいうべきつながりを深めていくところが、この映画のメインストーリーになっています。“家族”のような役割を演じる人をレンタルするというありようが、血のつながりを重視するのではなく各々が大切だと感じる人と家族になっていくLGBTQの「chosen family」を連想させるのです。もっと言うと、フィリップはストレートですが、もし彼がゲイだったとしても依頼者との絆を深めていく話は成立しただろうし、全く変わらなかっただろう、むしろさらに意味のある映画になっただろうと思えました。
一見幸せそうに見えた家族が実はそうでなかったとか、世間的な価値観や表面的な家族愛に疑問を投げかけるようなところもあって、興味深かったし面白かったです(そういうなかでフィリップの奮闘が輝くのです。素敵でした)
ブレンダン・フレイザーは『ザ・ホエール』での死にゆく巨漢のゲイの役も素晴らしかったのですが、実は1998年の『ゴッド・アンド・モンスター』という、伝説の映画監督(イアン・マッケラン)が若くハンサムな庭師の青年(ブレンダン・フレイザー)にゲイ的な欲望を抱く、そして二人の間には互いの孤独を埋め合うような友情と交流が生まれる…という映画にも出演していて、本当にゲイに縁があるんですよね。というか、実際にゲイであるイアン・マッケランが惚れるハンサムな青年の役として、ゲイの映画監督(『シカゴ』『ドリームガールズ』のビル・コンドン)が数多の俳優たちの中からブレンダン・フレイザーを選んだわけですから、ゲイ好きする俳優であるのは間違いないでしょうし、当時『ハムナプトラ』シリーズで売れに売れていたブレンダンがそういう役を引き受けたことで、ゲイコミュニティ内でも株が上がったはずです。
(『glee/グリー』のダレン・クリスとかもそうですが)ストレートながらゲイ役を演じて有名になった俳優は何人もいるのですが、ブレンダン・フレイザーはそんななかでもちょっと特別に素敵な人なのです。
そんなブレンダンが今回、(別にゲイに対するサービスというわけではないでしょうが)セクシーな胸毛をはだけたベッドシーンや入浴シーンなどを披露しているのは、全く予想していなかっただけに、たいへんアガりました。前から好きだったけどブレンダンのことがもっと好きになったというか、キュンキュンしちゃう感じでした。
ディズニー配給のれっきとしたアメリカ映画なのに全編日本で撮影されていて、なおかつハリウッドにありがちなステレオタイプな感じが全くない(監督が日本人の方なので当然ですが)というのもなかなか面白いです。
出演する柄本明さん、真飛聖さん、安藤玉恵さん、平岳大さん、山本真理さんなどが、当て書きしたんじゃないかと思うくらい役にハマっていました。キャスト選びが実によかったです。
いろんな意味でいい映画、面白い映画でした。
大ヒット中につき、もう少し上映が続くと思いますので、まだの方はぜひ。
レンタル・ファミリー
原題:Rental Family
2025年/アメリカ/110分/配給:ディズニー/監督:HIKARI/出演:ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理、柄本明、ゴーマンシャノン眞陽ほか
INDEX
- 血のつながりだけじゃない家族のありようを世に問う素敵な映画『レンタル・ファミリー』
- はるな愛が愛として生きられるようにしてくれた医師の真実が明かされる――関西らしい笑いあり涙ありの名作“アイドル”映画『This is I』
- 【AQFF】痛みを抱えるゲイたちに贈る愛の讃歌――韓国で初めて同性結婚を挙げたキム=ジョ・グァンス監督の最新作『夢を見たと言って』
- 【AQFF】泣けるほど心に残る、恋に傷つく青年たちの群像――イ=ソン・ヒイル監督が10年ぶりに手がけたクィア映画『ソラスタルジア』
- 【AQFF上映作品】これがゲイ映画というものです! 純朴なゲイの青年とその友達、二丁目的なコミュニティ、そして恋の真実を描いた感動作『3670』
- アート展レポート:Manbo Key「Under a void|空隙之下」
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- 【アジアンクィア映画祭】俺様オヤジ vs マイノリティ連合の痛快バトル・コメディ――ドラァグとK-POPを添えて――映画『イバンリのチャン・マノク!』
- ロシアの強大なマチズモに立ち向かう孤高のドラァグ・アーティストの姿を映し出した映画『クイーンダム/誕生』
- 性の多様性について子どもから大人まで理解し共感できる決定版的な良書『多様な性を生きる LGBTQ+として生きる先輩たちに人生のヒントを聞いてみた』
- ミニマムなのにとんでもなくスリリングでクィアな会話劇映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』
- 異国情緒あふれる街で人と人とが心通わせる様にしみじみと感動させられる名作映画『CROSSING 心の交差点』
- ワム!のマネージャーだったゲイの方が監督した真実のドキュメンタリー『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』
- アート展レポート:ネルソン・ホー「鏡中花、水中月 - A Mere Reflection of Flower and Moon」
- レポート:グループ展 “Pink”@オオタファインアーツ
- アート展レポート:東京都写真美術館「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」
- レポート:國學院大學博物館企画展「性別越境の歴史学-男/女でもあり、女/男でもなく-」
- 実は『ハッシュ!』はゲイカップルに育てられた子どもの物語として構想されていた…25年目の真実が明かされた橋口監督×田辺誠一さんによる映画『ハッシュ!』スペシャルトークイベント
- レポート:短編集「Meet Us Where We’re At」上映会
- レビュー:BSSTO「世界の・周りの・私のジェンダー」を見つめるショートフィルム特集
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