REVIEW
最高に素敵な国⺠的ドラァグクイーン“パンティ”の生き様を描いたドキュメンタリー映画『クイーン・オブ・アイルランド』
アイルランドを世界初の国民投票で同性婚を実現する国に導いた国⺠的ドラァグクイーン“パンティ”の悪びれない、素敵すぎる生き様を描いたドキュメンタリー映画『クイーン・オブ・アイルランド』がアイルランド映画祭で上映。実は“パンティ”が誕生したのは東京だったという事実にも驚かされます。プライド月間にふさわしい名作です!

アイルランド映画祭で国⺠的ドラァグクイーン“パンティ”の半⽣を追った圧巻のドキュメンタリー映画『クイーン・オブ・アイルランド』が上映されています。ドラァグクイーンとして開花し、人気を博しながら、HIV陽性であることがわかり、それでもめげずにLGBTQの権利回復運動に取り組み、アイルランドのゲイコミュニティを代表する存在になったパンティ・ブリス。アイルランドでは2015年、世界で初めて同性婚の法制化を承認するかどうかの国民投票が行なわれ、パンティは同性婚実現のキャンペーンの先頭に立って奮闘したのでした。
東京プライドフェスティバル1日目・6月6日(土)の夜に上映された回はさながらゲイ映画祭のようでした。レポートをお届けします。
<概要>
同性愛が犯罪とされていた時代に育った少年ローリー・オニールは、ドラァグクイーンの世界に魅了され“パンティ・ブリス”としてブレイクした。HIV陽性の診断を受けながらもチャリティや権利運動に取り組み、その鋭いウィットとパワフルなスピーチでゲイ・コミュニティを代表する存在になったパンティ。2015年5⽉、パンティ⾃らがキャンペーンの先頭に⽴った、アイルランドで同性婚の法制化の是非を問う世界初の国⺠投票は歴史に残る名シーンだ。






「Tokyo Pride 2026」プライドフェスティバル(以下TP)1日目の6月6日(土)、予報よりもずいぶん晴れて暑い日となり、代々木公園はたくさんの人でにぎわい、みなさん思い思いに出展ブースやステージを楽しんでいらっしゃいました。
TPは18時で終了したのですが、19時から恵比寿のガーデンシネマでアイルランド映画祭の一環として『クイーン・オブ・アイルランド』が上映されることになっていました。たぶんTPの開催に合わせて、土曜のこの時間に上映を設定してくれたんだと思い、粋な計らいだな、と思いました。
原宿から恵比寿までは2駅なので、そんなに時間はかからなかったのですが、ごはんを食べたり(恵比寿駅の中の立ち食いそば屋で食べました。意外と美味しかったです)していたら意外と時間が過ぎて、映画館に着いたのが50分くらい。そこで早速、友人(というかゲイの大先輩)にお会いしました。
映画は、1968年生まれのローリー少年がどのようにしてドラァグクイーンになったか、当時のアイルランドのゲイを取り巻く状況はどんなだったか(アイルランドでは1993年まで同性間の性交渉が非合法だったそう…厳しいですね)といったことから始まりましたが、なんと、ローリーはゲイが生きやすい国として日本を選び、東京で「パンティ」と命名されたのだということがわかりました。その頃の映像として、ミス・グローリアスこと古橋悌二さんらが出演した、表参道のスパイラルホールでの伝説のクラブパーティ「XXX BALL」(スパイラルで『S/N』が上映されていた期間中に開催された盛大なパーティ)の映像が映し出されていて、そういえば、キャンディ&パンティってユニットが出てた!と思い出し、こんな身近な人だったんだ!と驚きました。ほかにも、たぶん「DeLight」の楽屋じゃないかな、とか、当時の二丁目で撮ったと思われる映像や写真もいろいろ映ってました。
パンティは95年には帰国するのですが、HIVに感染していることがわかり(カクテル療法の登場に間に合って本当によかったです)、そんなに深刻には言ってないですけれども(HIVを持ってることのカミングアウトも大変だけど、ドラァグやってるってこともなかなか言えないのよ!とか)、ゲイであるということだけでも厳しいのに、何重にも困難に直面することに…。さらに、一度RTE(日本で言うNHK)に出たときの発言が右翼に叩かれ、RTEはパンティを擁護するのではなく謝罪をしてしまい、それからパンティは道を歩いてるだけで暴言を吐かれたり牛乳パックを投げつけられたりするようになったといいます(一緒に歩いてた友人が暴行されたりも)
そんなパンティは、愛する恋人や友人たちに恵まれたこともあり、だんだんゲイコミュニティの活動に力を入れるようになり、同性婚の法制化のキャンペーンでは、先頭に立って人々を説得します。ゲイの聴衆に向かって「私に牛乳パックを投げつけたヘイターだって、性犯罪者でも、殺人鬼だろうと、結婚はできる。でも、あなたはできない。怒らないの? もっと怒ろうよ」と叫ぶ場面にはシビれました。ハーヴィ・ミルクみたいでした。見事に国民が賛成してくれる結果となった時のシーンは、涙なしには観れませんでした。
パンティはすっごい下ネタとかクィアなジョークをバンバン言うドラァグクイーンなのですが、誰かを傷つけたりしないようなギリギリのところを上手に攻めてくタイプで(地頭がいいんでしょうね)、田舎のノンケの人たちとかもゲラゲラ笑わせたりとか、「人のよさ」で愛されている人で、でも、その境地に達するまでには、HIV感染とか、たくさん傷ついたり苦労したりってことがあったんだろうな…と想像させました。
必ずしも同性婚のことだけがテーマではありませんが、これ、Marriage For All Japanの上映会とかでもっと大勢の人に観てもらうべき映画なのかも、と思ったりしました。そもそもあきらめちゃってる人も多いかもしれないコミュニティの方たちに、なんで結婚できないんだ!おかしいだろ!という「怒り」の感情を思い出させるというか、僕ら怒っていいんだ、って思わせる作品だと思いましたし、日本の同性婚運動にはこういうドラァグクイーンのキャンプな(ビッチな?)毒みたいなものが足りないのかも、とも思いました。
素晴らしかった、プライドの夜に観るのにこれ以上ふさわしい映画もないだろうと思い、終わったら拍手しようと思ってたのですが、終映後、僕より先にどなたかが拍手し、会場が拍手に包まれ、さながらレインボー映画祭のような空気になっていました。
映画館を出ると、来た時とはまた違う(ドラァグの追っかけをしている)友人にも会い、まるでゲイ映画祭みたいだったね、と話したり、写真を撮ったりしました。いい思い出になりました。
次回は11日木曜の19時からです(アイルランド映画祭のクロージングです)。これを逃すと次にいつ観ることができるかわからないので、この機会にぜひご覧ください!!
(後藤純一)
クイーン・オブ・アイルランド
2015年/アイルランド/86分/監督:コナー・ホーガン/出演:ローリー・オニール(パンティ・ブリス)、デイビッド・ノリス、ウーナ・ムラーリー
6月6日(土)19:00-、6月11日(木)19:00-、YEBISU GARDEN CINEMAにて上映
INDEX
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