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REVIEW

LGBTQコミュニティが作ったドラァグ満載なクィア・ゾンビ映画『クイーンズ・オブ・ザ・デッド』

スタッフとキャストのほとんどがLGBTQという素敵なクィア・ゾンビ映画『クイーンズ・オブ・ザ・デッド』をご紹介します

LGBTQコミュニティが作ったドラァグ満載なクィア・ゾンビ映画『クイーンズ・オブ・ザ・デッド』

 ゾンビ映画の巨匠、ジョージ・A・ロメロ(『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生』『ゾンビ』『死霊のえじき』)の娘であるティナ・ロメロが初めて製作したゾンビ映画であり、スタッフもキャストもほとんど全員がLGBTQというところが素敵なクィア・ゾンビ映画『クイーンズ・オブ・ザ・デッド』。10月25日に大阪の第七藝術劇場で、12月6日渋谷ユーロライブで上映されます。レビューをお届けします。
(後藤純一)

<あらすじ>
NY・ブルックリンのウェアハウス(倉庫)でドラァグクイーンとクラブキッズたちのパーティが開催。ゲストとしてクレジットされていたヤスミンがドタキャンし、レジデントのクイーン、ジンジーが頑張ってフロアを盛り上げるなか、ヤスミンに代わる強力なサプライズゲストとなるべく、伝説のクイーン、サマンセが呼び出される。しかしそこに、ドラァグクイーンのゾンビが現れ、オーガナイザーのドレーの兄でトイレ修理に駆り出されていたノンケのバリーが、ゾンビを倒そうと斧を投げつけ、誤って見習いのケルシーが負傷してしまう。スマホに緊急情報が届き、TVで市長が家に待機しろと呼びかけ、みんなはドアを塞いで倉庫に立てこもるが、GOGO BOYのジャックスがゾンビ化していて…。






 ドラァグクイーンのパーティの舞台裏がものすごく詳細に描かれていたり(もちろんドラァグクイーンのショーも楽しめます)、随所に笑いが散りばめられていて、エンタメ作品として面白く観られます。
 ホラー映画が苦手な方でも(私も苦手ですが)大丈夫だと思います。ゾンビ映画って(マイケル・ジャクソンの『スリラー』のPVに代表されるように)もはや「怖い」というより、素材として「お約束」を踏まえたうえでいかにアレンジを加えて面白くするかというジャンルになっていると思うのですが、今作はまさに、ティナ・ロメロというジョージ・A・ロメロのDNAを受け継いだ監督によるクィア・ゾンビ映画という、新しくて楽しい作品になっています。
 
 冒頭に登場するド派手なドラァグクイーンを演じるジュリー・Jや、ジンジー役のニナ・ウェスト(ミュージカル版『ヘアスプレー』でエドナを演じたりしているそう)といったドラァグクイーンのほか、あの不朽の名作『POSE』でエレクトラを演じたドミニク・ジャクソンが、プライドの高いクイーン、ヤスミンを演じているのが見どころです。わけあってドラァグを封印し、今は病院でゲイのナースとして働いているサムが、意を決してサマンセになるシーンも素敵です。ゲイのキャストとしては、ほかにも、『glee』でライバル校のイケメンコーチを演じたシャイアン・ジャクソンがバーテンダー・ビリーの役で出演していたり、無名かもしれませんがNYの劇場でアクターとして活躍するクインシー・ダン=ベイカー(ナイスなBEARです)がクィアとは縁遠いノンケ男・バリーを演じていたり、ほかにもGOGO BOY(と言っても日本のGOGOとは違うロン毛でクイーンに近い感じ)の役で2人ほど出演しています。
 それから、パーティのオーガナイザーの役が、元女子ビルダーで『愛はステロイド』に出演したケイティ・オブライアン、オーガナイザー見習いのケルシーを演じたのが『テレビの中に入りたい』に出ていたジャック・ヘヴン、そして米国のLGBTQコミュニティの大御所である有名なコメディアンのマーガレット・チョーもケルシーの恋人の役として出演しています。
 ケイティ・オブライアン、シャイアン・ジャクソン、マーガレット・チョー、ドミニク・ジャクソンのようなメジャーな作品に出演してきたLGBTQのアクターたちが一肌脱いでこのLGBTQコミュニティ・ムービーに華を添えているというか、快くこの画期的な作品に協力してくれている感があります。
 
 ともするとB級映画と見なされかねない作品なのですが、サムが一度ドラァグをやめて、ヤスミンの穴埋めとして呼び出されてサプライズで復帰を果たすことになったものの、まだ迷いがあり、そうこうしているうちにゾンビ襲来という危機的な状況を迎え、ジンジーの励ましもあって、サマンセ(ビヨンセをリスペクトしたドラァグネームですよね)としてステージに…といったあたりのエピソードや、ドレーの兄ということでクィアだらけのパーティにまぎれ、ノンケ男として煙たがられていたバリーが、危機を回避するために仲間として迎えられるところ、トランスジェンダーやノンバイナリーにまつわるいろいろなど、LGBTQ的に意味のあるシーンが多数描かれていて、面白いです。素晴らしい、と言っても過言ではないかも。
 
 米国ではこれまで、映画やドラマに少なくとも一人はLGBTQが登場してほしい、その登場する人物も“モンスター”や“異常者”として死んだり不幸になったりするのではなく、ふつうに当たり前に暮らす人物として描いてほしい、クィアの役はできるだけ当事者が演じるようにしてほしい(参考:リプレゼンテーション)といった時代から、『glee』のように大勢の当事者が出演する作品や『POSE』のようなオール当事者キャストの作品が製作される時代になり(どちらもゲイのライアン・マーフィが監督してますね)、ついに、スタッフも含めてほぼ全員がLGBTQ(一人を除いて全員だそう)という映画が誕生し、劇場で一般公開される時代になったのです。この作品は、そういう意味で、LGBTQコミュニティにとって記念碑的な作品だと言えます。
 
 例えばトライベッカ映画祭などで観客賞を受賞したり、America's Rainbow Film Festival(ARFF)でプライドアワードを受賞したり、本国ではなかなかの支持を集めた作品なのですが、日本では残念ながら日の目を見ないままで(映画会社によって配給されたりせず)、こんなに意義深い映画なのにもったいない!ということで、堀川さんという方が上映会を企画してくれました。大阪と東京で1回ずつという限られた上映なのですが、都合の合う方はぜひ!


クイーンズ・オブ・ザ・デッド
原題:Queens of the Dead
2025年/米国/100分/脚本:ティナ・ロメロ、エリン・ジャッジ/監督:ティナ・ロメロ/出演:ケイティ・オブライアン、シャイアン・ジャクソン、マーガレット・チョー、ドミニク・ジャクソン、ニナ・ウェストほか
<大阪>
10月25日(日)13:15-
第七藝術劇場
<東京>
12月6日(日)10:00-
ユーロライブ

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