REVIEW
田亀源五郎『奴隷調教合宿』
ゲイエロティック漫画の単行本としては約3年ぶりとなる田亀源五郎さんの最新刊『奴隷調教合宿』が発売されました。レビューをお届けします。

月刊アクション連載中の『弟の夫』が高い評価を得ている田亀源五郎さん。ゲイエロティック漫画の単行本としては2014年6月の『エンドレス・ゲーム』以来となる『奴隷調教合宿』が、2016年2月に発売されました。タイトル作の『奴隷調教合宿』と併録の『金曜の夜は四つん這いで』、ともに『バディ』に掲載された作品で、いずれも加筆修正して単行本化されました(今回もポット出版から発売されています)。レビューをお届けするとともに、発売記念トークショーのご案内も差し上げます。(後藤純一)
タイトル作の『奴隷調教合宿』は、王道にして直球のゲイSM作品で、およそありとあらゆるSMプレイが盛り込まれた一大スペクタクル巨編となっています。ストーリーもたいへん面白く、「えー、そこまでやっちゃうの?」とか、「そんな展開になっちゃうんだ?」と思うこと請け合いです。若いマッチョが好きな方も、がちむちヒゲ野郎系が好きな方も、太めが好きな方も楽しめると思います。伝説的な名作『銀の華』は江戸の遊郭が舞台でしたが、こちらは現代の大学の野球部。『銀の華』が「いまここ」ではない世界のフィクションとして、ある意味、百花繚乱のゲイテイストな趣向や芸術性を楽しめたのに対し、『奴隷調教合宿』は、実際にありそうな、汚い大人たちの生々しい欲望がリアルに描かれているだけに、より残酷さが際立ち、エロティックでもあり、SMの真髄に迫るものがあると思います。ちょっと深読みしすぎかもしれませんが、さりげなくフェミニズム的な要素が入っていたり、人が洗脳されていく過程が描かれていたり、そこに社会的なメッセージを読みとることも可能かもしれません。
併録の『金曜の夜は四つん這いで』も、短編ながら、ゲイの心をわしづかみにするような傑作でした。田亀さん自身、あとがきで「『弟の夫』では、主にゲイを「同性を愛する人間」として描いているので、こちらでは「同性に欲情する(同性とセックスする)人間」という側面に、フォーカスを定めたいと思った」と書いているように、おつきあいとか愛情とかを排し、潔く、徹頭徹尾ヤリまくるゲイの物語で、ゲイの世界のある一面を端的に、見事に描ききっていると思いました。短髪ヒゲマッチョのイカニモなモテ筋が肉便器と化している様をフィクションと見るかリアルと見るかは、きっと意見が分かれるところだろうと思うのですが、そういうモテ筋な(ヤル相手に困らない)マッチョくんが一人でわびしくご飯を食べるシーンが意識的に繰り返し描かれているところに、田亀さんらしい文学性を感じました。
『弟の夫』は文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、フランス語版は今年のアングレーム国際漫画祭にノミネートされ、現地でパネル展示やサイン会も行われました。海外では以前からGengoroh Tagameをゲイエロティックアートの巨匠として評価し、個展などもたびたび開催されてきましたが、日本でも田亀さんのゲイエロティックコミックがもっと公に(それこそ文化庁とかに)評価されるようになるといいですね。
奴隷調教合宿
著:田亀源五郎/希望小売価格:2,400円+税(この商品は非再販商品です)/発行:ポット出版プラス/A5判/288ページ/並製・函入
なお、『奴隷調教合宿』の発売を記念して、2月24日にトークショーが行われます。聞き手にエスムラルダを迎え、田亀源五郎の世界におけるエロとSMの意味を存分に語るものとなりそうです。トークショー終了後にはサイン会も行われるそうですので、ぜひ。
新刊『奴隷調教合宿』紙版電子版同時発売記念
田亀源五郎トークイベント
「田亀源五郎におけるエロとSM」
日時:2017年2月24日(金)18:30開場 19:00開演 20:30終了
場所:レインボー倉庫下北沢
参加費:1,000円(当日会場でお支払いください)
定員:50名(先着順)
応募方法:ポット出版Webサイトにて受付中
INDEX
- 大興奮!大傑作!本当に面白いクィアSFアクションムービー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
- 実にポップでインテレクチュアルでエモーショナルで画期的な『極私的梅毒展』@akta
- 女性と同性愛者を抑圧し、ペストで死ぬ人々を見殺しにする腐敗した権力者への叛逆を描いた映画『ベネデッタ』
- トランスジェンダーへの偏見や差別に立ち向かうために読んでおきたい本:『トランスジェンダー問題: 議論は正義のために』
- 『痛快!明石家電視台』ドラァグクイーン大集合SP
- 殺伐とした世界に心を痛めるすべての人に観てほしいドラマ『THE LAST OF US』第3話
- 3人のドラァグクイーンのひと夏の旅を描いたハートフル・コメディ映画『ひみつのなっちゃん。』
- 40歳のゲイの方が養護施設で育った複雑な生い立ちの20歳の男の子を養子に迎え入れ、新しい家族としての生活を始める姿をとらえたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』
- 貧しい家庭で妹の面倒を見る10歳のゲイの男の子が新しい世界を切り開こうともがき、成長していく様を描いた映画『揺れるとき』
- ゲイコミュニティへのリスペクトにあふれ、あらゆる意味で素晴らしい、驚異的な名作『エゴイスト』
- ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いたフランス発の短編映画『パロマ』
- 文藝賞受賞、芥川賞候補の注目作――ブラックミックスのゲイたちによる復讐を描いた小説『ジャクソンひとり』
- ドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』
- 伝説のゲイ・アーティストの大回顧展『アンディ・ウォーホル・キョウト』
- 謎めいたゲイ・アーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』
- 『ボヘミアン・ラプソディ』の感動再び… 映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
- 近年稀に見る号泣必至の名作ゲイ映画『世界は僕らに気づかない』
- ぼくらはシンコイに恋をする――『シンバシコイ物語』
- ゲイカップルやたくさんのセクシャルマイノリティの姿をリアルに描いた優しさあふれる群像劇『portrait(s)』ほか
- TheStagPartyShow movies『美しい人』『キミノコエ』
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