REVIEW
田亀源五郎『嬲り者』《復元完全版》
『弟の夫』ドラマ化が大反響を呼んでいる田亀源五郎さんが25年前『さぶ』誌に発表した初の長編作の単行本《復元完全版》です。レジェンドの始まりとなる記念碑的作品を、保存版としてぜひ、お手元に。

『弟の夫』ドラマ化が大反響を呼んでいる田亀源五郎さんが20代でまだサラリーマンだった頃(1992〜93年)、『さぶ』誌に掲載された初の長編作です。
当時はゲイ雑誌の全盛期で、『嬲り者』で長編デビューして人気を博した(単行本もすぐに売り切れたそうです)田亀さんは1994年、専業作家となる決意をし、『G-men』の創刊にも携わりつつ、『銀の華』『PRIDE』『君よ知るや南の獄』といった伝説的な名作長編を怒涛のように発表し…そして現在の『弟の夫』へとつながるわけですが、そのレジェンドのスタート地点に燦然と輝く(田亀さん自身はそれまでの集大成の気持ちで描いたそうですが)記念すべき作品が『嬲り者』なのです。
リアルタイムで『さぶ』誌の連載をご覧になっていた方もいらっしゃるでしょうが、未見の方も多いと思いますので、これを機にご覧になってはいかがでしょうか。
目を覆いたくなるかもしれないようなハードなSM描写が続きますが、最後に一筋の愛の光が差してきて、感動を誘います(まるで宗教画のような構図で描かれたカットはとても美しいです)。しかし、主人公が「あなただけのものになりたい」と望んだ瞬間、それは手の平からこぼれ落ちていき…のちの『銀の華』や『君よ知るや南の獄』にもつながるような、深いテーマです。
<あらすじ>
プロレスラーとして活躍していたグレート平山は、シャブ中になるも、奥村という男に拾われ、ボディガード兼地下レスリングの出演者として更生する。しかし、金に目がくらんだ社長は、平山をヤクザの組長に身売りしてしまう。平山は組長からハードな調教を受け、男妾として堕ちていく…
当時発表された原稿は(『さぶ』誌といえども)性器に消しが入っていましたが、今回、その部分を田亀さんが復元し(結構大変だったそうです)、《復元完全版》として発行されることになりました。カラー口絵4ページは当時のまま掲載。さらに、田亀さんの手元に残っていた、使用しなかった絵の下描き16ページ分を付録としています。電子書籍版も発売されていますが、そちらは、せっかくの《復元完全部分》が大きなモザイクで全消しになっているそうですので、ぜひ書籍版でお求めください。スリーブケースに入った豪華版です。
INDEX
- ゲイクラブのシーンでまさかの号泣…ゲイのアフガニスタン難民を描いた映画『FLEE フリー』
- 男二人のロマンス“未満”を美味しく描いた田亀さんの読切グルメ漫画『魚と水』
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
- LGBTQユースの実体験をもとに野原くろさんが描き下した胸キュン青春漫画とリアルなエッセイ『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
- 絶望の淵に立たされた同性愛者たちを何とか救おうと奮闘する支援者たちの姿に胸が熱くなる映画『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』
- スピルバーグ監督が世紀の名作をリメイク、新たにトランスジェンダーのキャラクターも加わったミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』
- 同性愛者を含む4人の女性たちの恋愛やセックスを描いたドラマ『30までにとうるさくて』
- イケメンアメフト選手のゲイライフを応援する番組『コルトン・アンダーウッドのカミングアウト』
- 結婚もできない、子どももできないなかで、それでも愛を貫こうとする二人の姿を描いたクィアムービー『フタリノセカイ』
- 家族のあたたかさのおかげで過去に引き裂かれた二人が国境を越えて再会し、再生する様を描いた叙情的な作品――映画『ユンヒへ』
- 70年代のゲイクラブ放火事件に基づき、イマの若いゲイと過去のゲイたちとの愛や友情を描いた名作ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』
- 何食べにオマージュを捧げつつ、よりゲイのリアルを追求した素敵な漫画『ふたりでおかしな休日を』
- ゲイの青年がベトナムに帰郷し、多様な人々と出会いながら自身のルーツを探るロードムービー『MONSOON モンスーン』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』







