REVIEW
ゲイコミック『きのう何食べた? 4』
ゲイカップルの毎日の晩ご飯(レシピと作り方の詳細もわかって実用的)をからめながら、二人の幸せライフを描いたゲイコミック『きのう何食べた?』の第4巻が発売されました。
弁護士の筧史朗(シロさん)&美容師の矢吹賢二(ケンちゃん)というゲイカップルの毎日の晩ご飯(レシピと作り方の詳細もわかります)をからめながら、二人の幸せライフを描いたゲイコミック『きのう何食べた?』の第4巻が発売されました。作者はあの男女逆転版『大奥』の作者、よしながふみさん。もともとBLコミック作家でグルメ漫画(『愛がなくても喰ってゆけます』)も手がけてきたよしながさんが満を持して『モーニング』に(たぶん確信犯的に)連載している作品で、「バリバリの男性誌にゲイ漫画が!」とゲイの間でも話題になりましたが、2009年版「このマンガがすごい!」オトコ編で6位になるなど、世間でも大きな反響を呼んでいます。『西洋骨董洋菓子店』や『大奥』のようにいずれ映画化もされるのでは?と期待されます。
『きのう何食べた?』第1巻〜第3巻の内容をざっとお伝えしましょう。
史朗は43歳には見えない若々しさを保ち、仕事にやりがいを求めず、毎日定時退社しては自分流に手際よく晩ご飯を作ります。高校のときにゲイであることが母親にバレて、母親は新興宗教に走ってしまい、以来、実家とは距離を置いています。職場では「言う必要がない」のでカミングアウトしていません。
賢二は41歳の美容師で、明るくて人当たりがよく、職場でもカミングアウトしています。一方、人がよすぎるので、面倒な客の対応もするはめに。料理は得意ではなく、専ら史朗が作った手料理を食べる係です。
二人は、日常生活の中でささいなトラブルや面倒に巻き込まれ、何とかやり過ごし、最終的には二人で美味しいご飯を食べてほっこり、というパターンで連載が進んでいきます。
第2巻では二人の「なれそめ」が明らかにされ、二丁目が登場しました。第3巻では賢二が初めて大晦日を独りで過ごすという「大問題」が生じます(でも、そこで作られたものがとても美味しそうでした)
さて、第4巻では、つつましく幸せに暮らしているゲイカップルのもとにどんなドタバタが訪れるのでしょうか?
筧はふつうな髪型(リーマン系)、賢二は美容師ということもあってややロン毛。40代ですが、一般受けするだろう(草食系と言うんでしょうか)さわやかな雰囲気です。ところが今回、ちょっと頭の薄いがっちり系のヨシさんと、50代で恰幅のいいテツさんというカップルが登場しました。(リアルだと思います)
4人はレストランで食事をしていて、調味料とかインテリアの話題で盛り上がっているのですが、筧はずっと無口です。店を出た後、賢二は「ごめんね。隣の席のカップルに絶対バレてたよね」と言います。それに対して筧が「なんでそこで謝るんだよ」と怒るところから、第4巻がスタートします。
2話目では、ヨシさんとテツさんのカップルが家にご飯を食べに来るというので、筧が大慌てします。料理の達人であるヨシさんに気に入ってもらうために、どれだけ凝ったおもてなし料理を作ればいいのか、悩むのです(何を作ったかは、コミックで確かめてくださいね)。ご飯をいただきながら、ヨシさん&テツさんは弁護士である筧に、テツさんが亡くなったときの相続について相談を始めます。とても身につまされる、ホロリとさせられるシーンでした。
3話目は、風邪で寝込んでしまった筧のために、ふだん料理をしない賢二が晩ご飯を作るというお話です。決して上手ではないのですが(筧が寝ながら「水出しすぎ…」とか「手際が悪い…」と悶えます)、ヒシヒシと愛が伝わってきて、何だか泣けてきました。
といった感じで、とてもリアルなゲイライフを描いていながら、ゲイの読者もノンケの読者も感情移入できるような、ますます素晴らしい第4巻なのでした。
もちろん、筧の料理の腕も冴えわたっています。なにしろおもてなし料理が登場!ですから。実際にホームパーティをやったり、日々のご飯のレシピに悩んでいる方などもぜひ、お買い求めください。(後藤純一)
『きのう何食べた?』公式サイト
http://morningmanga.com/lineup/24
INDEX
- 驚くべき魂を持った人間の崇高な最期を描いた映画『ザ・ホエール』
- ゲイと女性2人の美大同級生たちの人生模様を料理とともに描くドラマ『かしましめし』
- ゲイである父、娘たち、元彼の人間模様を描き、人間の「尊厳」や「愛」を問う映画『すべてうまくいきますように』
- レビュー:リン・モンホワン『同棲時間』公演記録映像上映+アフタートーク
- レビュー:リン・モンホワン『赤い風船』『アメリカ時間』
- 大興奮!大傑作!本当に面白いクィアSFアクションムービー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
- 実にポップでインテレクチュアルでエモーショナルで画期的な『極私的梅毒展』@akta
- 女性と同性愛者を抑圧し、ペストで死ぬ人々を見殺しにする腐敗した権力者への叛逆を描いた映画『ベネデッタ』
- トランスジェンダーへの偏見や差別に立ち向かうために読んでおきたい本:『トランスジェンダー問題: 議論は正義のために』
- 『痛快!明石家電視台』ドラァグクイーン大集合SP
- 殺伐とした世界に心を痛めるすべての人に観てほしいドラマ『THE LAST OF US』第3話
- 3人のドラァグクイーンのひと夏の旅を描いたハートフル・コメディ映画『ひみつのなっちゃん。』
- 40歳のゲイの方が養護施設で育った複雑な生い立ちの20歳の男の子を養子に迎え入れ、新しい家族としての生活を始める姿をとらえたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』
- 貧しい家庭で妹の面倒を見る10歳のゲイの男の子が新しい世界を切り開こうともがき、成長していく様を描いた映画『揺れるとき』
- ゲイコミュニティへのリスペクトにあふれ、あらゆる意味で素晴らしい、驚異的な名作『エゴイスト』
- ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いたフランス発の短編映画『パロマ』
- 文藝賞受賞、芥川賞候補の注目作――ブラックミックスのゲイたちによる復讐を描いた小説『ジャクソンひとり』
- ドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』
- 伝説のゲイ・アーティストの大回顧展『アンディ・ウォーホル・キョウト』
- 謎めいたゲイ・アーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』
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