REVIEW
アダム・ランバート『トレスパッシング』
アダム・ランバートのニューアルバム『トレスパッシング』が発売されました。ゲイであることをオープンにしたうえでメジャーデビューを果たしただけでなく、アーティストとして着実に成長し、見事にビルボード初登場1位も獲得したアダムに拍手を贈りつつ、この名作をぜひ、聴いてみてください。
ゲイであることをオープンにしたうえでメジャーデビューを果たすという前代未聞のチャレンジを見事にクリアし、ポップスター街道を走り続けてきたアダム・ランバート。待望の2ndアルバム『トレスパッシング』のレビューをお届けします。
すでにお伝えしたように、この『トレスパッシング』は5月末、ビルボードのアルバムチャートで見事、初登場1位に輝き、同時にオープンリーゲイのアーティストとして初めての全米チャート1位という快挙を成し遂げました(詳しくはこちら)
前作『For Your Entertainment』はグラム・テイストを前面に打ち出した感じで、ゲイ的にはどうか…あまりノレなかった方も多いのでは?と思うのですが、このアルバムはR&Bっぽい曲やクラブノリな曲もあり、エレクトロなフレーバーも随所にまぶされ、お世辞じゃなくイイ曲ぞろい!と思える、そりゃあ売れるわと納得できる、文句ナシなアルバムに仕上がっていたのでした。
恋人のサウリくんに自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしさを表現したと言われているアルバムからの1stシングル「Better Than I Know Myself」、ゲイコミュニティが直面してきた苦難について歌ったバラード「Outlaws Of Love」、思わず口ずさみたくなるメロウなメロディラインが素晴らしい(ゲイクラブでもぜひかかってほしい)2ndシングル「Never Close Our Eyes」などはもちろんのこと、個人的には「Underneath」も名曲だと思いますし(ライブで聴いたらちょっと泣いちゃうかも…)、1曲目を飾る「Trespassing」がものすごくわかりやすくQueenリスペクトだったのもアガりました。
一聴して感じたのは、歌の上手さだけでなく、表現力が明らかに深みを増しているということ。恋人ができてリアルな気持ちを歌に…といったことだけでなく、ゲイとして直面してきた様々な困難などを自分なりに歌で表現したり、(昨年LGBT団体から表彰されたように)実生活でも権利擁護活動やチャリティに貢献したりという経験を経てきたことが彼自身の人間的成長につながっているのでは?と思わせます。
アルバムの楽曲に話を戻すと、こんなにイイ曲がたくさん詰まったアルバム、さぞかしスゴい人が曲を作ってるんだろうな…と思ったら、案の定、あのファレル・ウィリアムス(Track1,5)、今をときめくブルーノ・マーズ(Track4)、ドクター・ルーク(Track4,8)、そして大御所ナイル・ロジャースといった豪華ミュージシャン/プロデューサー/ソングライター陣が参加していました。そして、同じオープンリー・ゲイのイケメンアーティストであるサム・スパローが、ソングライティング(Track9)やボーカル(Track3)で参加しているのも素敵です。
そしてそして、実はこのアルバム、アダム自身がエグゼクティヴ・プロデューサーを務め、ほぼ全曲でソングライティングも手がけているというからオドロキです。歌だけでなく曲も書けるなんて…いつの間にそんな技を…スゴい!の一言。
ゲイとしてメジャーデビューを果たして騒がれてあとは尻つぼみ…というのではなく、着実にアーティストとして成長し、深化/進化を遂げ、見事にセールスもついてきているわけですから、本当に立派だと思います。
デビュー前から見守ってきた人間としては、本当にうれしい限りです。
みなさんもアダム・ランバートの今後の活躍にも期待し、応援してください!
『トレスパッシング』【初回生産限定盤】
SMJ/SICP-3444/¥3,150(税込)
※特典:DVD付
※豪華キラキラ銀箔ジャケット(日本盤独自デザイン)
※ジャケ・ステッカー封入(初回生産限定盤ジャケット絵柄)
【CD】
1.Trespassing トレスパッシング
2.Cuckoo クックー
3.Shady (feat. Nile Rodgers & Sam Sparro) シェイディ feat. ナイル・ロジャース&サム・スパロー
4.Never Close Our Eyes ネヴァー・クローズ・アワ・アイズ
5.Kickin' In キッキン・イン
6.Naked Love ネイキッド・ラヴ
7.Pop That Lock ポップ・ザット・ロック
8.Better Than I Know Myself ベター・ザン・アイ・ノウ・マイセルフ
9.Broken English ブロークン・イングリッシュ
10.Underneath アンダーニース
11.Chokehold チョークホールド
12.Outlaws Of Love アウトローズ・オブ・ラヴ
<以下はAdditional Tracks>
13.Runnin' ランニン
14.Take Back テイク・バック
15.Nirvana ニルヴァーナ
16.By The Rules バイ・ザ・ルールズ(日本盤ボーナス・トラック)
【DVD】
アルバム『トレスパッシング』のスタジオ制作の様子などを収録したアルバム・メイキング映像、アダム自身による楽曲解説等を収録したDVD。字幕入り(初回限定盤のみ)
1.Making Of The Album
2.Track-By-Track Highlights
3.Better Than I Know Myself (Official Video)
同時発売
ライヴDVD『グラム・ネーション・ライヴ』
SIBP-214~5/¥4,095(税込)
※特典:国内盤のみボーナス・トラック収録、特製ポスター封入、アルバム『トレスパッシング』、シングル「ベター・ザン・アイ・ノウ・マイセルフ」との連動プレゼントキャンペーン応募券付
INDEX
- 米史上初のゲイの大統領になるか?と騒がれた人物の素顔に迫る映画『ピート市長 〜未来の勝利宣言〜』
- 1920年代のベルリンに花開いたクィアの自由はどのように奪われたのか――映画『エルドラド: ナチスが憎んだ自由』
- クィアが「体感」できる名著『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』
- LGBTQは登場しないものの素晴らしくキャムプだったガールズムービー『バービー』
- TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」
- ただのラブコメじゃない、現代の「夢」を見せてくれる感動のゲイ映画『赤と白とロイヤルブルー』
- 台湾映画界が世界に送る笑えて泣ける“同性冥婚”エンタメ映画『僕と幽霊が家族になった件』
- 生き直し、そして希望…今まで観たことのなかったゲイ・ブートキャンプ・ムービー『インスペクション ここで生きる』
- あらゆる方に読んでいただきたいトランスジェンダーに関する決定版的な入門書『トランスジェンダー入門』
- 世界をトリコにした名作LGBTQドラマの続編が配信開始! 『ハートストッパー』シーズン2
- 映画『CLOSE クロース』レビュー
- 映画『ローンサム』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『ココモ・シティ』(レインボー・リール東京2023)
- FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~(レインボー・リール東京2023)
- 映画『マット』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『秘密を語る方法』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『クリッシー・ジュディ』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『孔雀』(レインボー・リール東京2023)
- クィアな若者がコスメ会社で働きながら人生を切り開いていくコメディドラマ『グラマラス』
- 愛という生地に美という金糸で刺繍を施したような、「心の名画」という抽斗に大切にしまっておきたい宝物のような映画『青いカフタンの仕立て屋』