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人種や性の多様性への配慮が際立つSATC続編『AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章』

SATCの続編ドラマ『AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章』が12月29日からU-NEXTで配信スタート!

待望のSATC続編『AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章』

 キャリー、ミランダ、シャーロットが帰って来ました! サマンサこそ登場しないものの(本当に残念)、往年のSATCファンはきっと気になっているはず。というわけで、U-NEXTでの配信がスタートしたSATC続編『And Just Like That… / セックス・アンド・ザ・シティ新章』のレビューをお届けします。




<あらすじ>
ニューヨークで久しぶりのブランチに集合したキャリー、ミランダ、シャーロット。話題は、キャリーが出演中のポッドキャスト番組、ミランダがティーンの息子の部屋でコンドームを踏んでしまったこと、シャーロットの憧れのママ友、髪の毛の色、そして疎遠になってしまったサマンサのこと…。時が経っても、悩みを相談できる友達がそばにいるのは変わらない。新たな挑戦、出会いと別れ。いくつになっても人生は驚きの連続。50代になって新たなライフステージを歩む彼女たちの物語が始まる――。



 映画『セックス・アンド・ザ・シティ』が2008年(キャリーが「スマホよくわかんない」って言ってましたね)、『セックス・アンド・ザ・シティ2』が2010年。なんと10年以上も前のことです。キャリー、ミランダ、シャーロット、サマンサが繰り広げる豪華すぎるドタバタ。それぞれの恋の結末。スタンフォードとアンソニーの、白鳥が泳ぎ、ライザ・ミネリが歌う、夢のようなゲイ・ウエディング。ジェニファー・ハドソンとの友情。アリシア・キーズの歌う主題歌…。懐かしいです。
  
 10年ぶりに触れたSATCの世界線は、あまりにもきらびやかでまぶしすぎて、ちょっと慣れるのに時間がかかりました。ニューヨークであんな広い(ウオークインクローゼットとかある)部屋に住むってどんだけ家賃払うんだろう…とか、ちょっと気軽にブランチであんな高い店使うんだ(ロケ地はホイットニー美術館の1階にある素敵なカフェレストラン)しかも残しちゃうんだ…とか、自分の境遇とのあまりの違いに愕然としてしまって…(そういうふうに見てしまう自分の悲しさよ…年をとったんだな、と感じます)
 でも、サマンサがなぜいなくなったのかという話から、だんだんドラマに引き込まれていきました。シャーロットの娘たちのイマドキ感。ミランダの奔放なファミリー(スティーブがいい感じに年をとってました。相変わらず素敵です)。キャリーの新しい挑戦。新たなキャストも多数、登場します。以前はほとんど見られなかった黒人やラテン系、アジア系のキャストが増えていて、人種的多様性への配慮が感じられます。そして、事前にニュースで報道されていたように、サラ・ラミレス演じるチェ・ディアズというメキシコ系でノンバイナリーの人物も登場。なるほど、こういう役なのね、と。チェ・ディアズ以外にも、トランスかノンバイナリーの若い子もちょっと登場します(プロナウン=代名詞のことに言及)
 
 個人的には、キャリーとビッグのカップルってできすぎててそんなに魅力を感じなかったのですが(むしろスティーブという人を選んだミランダに好感)、今回初めて、ビッグってやっぱイイ男だなぁ〜ってキュンとしたし(ラブラブな生活を続けるヒントをもらった気がします)、キャリーに感情移入せざるをえませんでした。
(現実世界ではクリス・ノースが残念なことになっていますが…)
 
 あと、この新章で重要なポイントになっている人種的・性的マイノリティへの配慮に関して、3人の中で最もカタブツでありしっかり者であるミランダが「やらかしてしまう」ところが面白いと思いました(みんなミランダを演じているシンシア・ニクソンがレズビアンの活動家でありNY市長選にも出馬したりとかしているのを知ってるからこそ、あえてミランダがやらかすのがギャグとして活きてくるわけです)
 
 スタンフォードが登場した時は、思わず声が出そうになりました。たぶん病気のせいだと思うのですが、出番が少なめで…その分をアンソニーがカバーしてくれていたように思います。ウィリー・ガーソンが何話まで出演するのかわかりませんが、しっかり見届けたいです。
 
 脚本や監督などをマイケル・パトリック・スミスやダレン・スターというゲイのクリエイターが務めているので、安心してゲイテイストに楽しめます。
 あえて詳しくは申し上げませんが、SATCのファンだった方(世間に結末が広まってしまう前に)早めにご覧になったほうがいいと思います。きっと新鮮な驚きがあるはずです。


【追記】2022.1.30
 その後の展開です。
 涙、涙の第2話(SATCでこんなに泣けるなんて…)、スタンフォード(ウィリー・ガーソン)の最後の登場となった第3話(ああ、ついに…涙)、主役の彼女たちの近親者にLGBTQの人物が現れる第4話、そして、ミランダさんご乱心!の第5話と続きます。
 ここまで観て、『AND JUST LIKE THAT...』が現代のアメリカを反映し、人種的多様性やLGBTQをフィーチャーしたドラマだと称されることの意味がよくわかりました。以前のSATCは女性とゲイがハマるセックスと恋愛のドラマだったと思いますが、『AND JUST LIKE THAT...』は満を持してLGBTQドラマと言える作品へと進化したのです。

【追記】2022.3.5
 第6話から10話(最終話)まで観終わっての感想です。
 クィアが本当にメインテーマになったなぁとしみじみ。ミランダはあの年で新しい自分を発見したわけだけど(スティーブはちょっとかわいそうだけど)、世間体とか社会的地位とかじゃなく、自分がやりたいことへとまっすぐに突っ走る様が潔い。さすがはミランダ。応援したいです。シャーロットとハリーも最初は戸惑ってたけど、すっかり慣れて、受け容れたし、素敵な親だと思いました(ていうかいまだに現役でヤってるっていうのがオドロキ!)。最終話に出てくるトランスジェンダーのラビ、超ステキでした。
 キャリーはようやく吹っ切れたというか、前に進むことができて、よかった。ちゃんとサマンサとの友情が続いているところもよかった。9話のアンソニーもすごくよかった。
 あと、7話に登場する整形の先生(ジョナサン・グロフがカメオ出演)の奥様キラーっぷりに大いに笑わせてもらいました。人は何か…たとえば天下一品のラーメンを食べたり、セックスしたり、幸せになれる手段を持っていると思うけど、SATC(そしてAJLT)も大勢にとっての、幸せになれる方法の一つだったとあらためて思いました。さすがはゲイが作ってるドラマです。
 観て本当によかったと思います。満足です。次のシーズンがあるなら、また観たいです。
 
 
AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章
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