REVIEW
すべての裸は素晴らしい――ブロードウェイミュージカル『フルモンティ』
太ってても痩せてても年を取ってても関係ない、男の裸はみんなセクシーという愛にあふれたメッセージが感動的ですらある素晴らしいミュージカルでした。全人類に観てほしい傑作です!

1997年の映画『フル・モンティ』をご覧になったことがある方は少なくないことでしょう。失業し、職だけでなく家族まで失いそうになったりしている男たちが起死回生を賭けて男性ストリップショーに挑戦するという熱い青春ストーリーで、決して体を鍛えているわけでもないただの中年男性たちが、さまざまなハードルを乗り越えながら仲間と励まし合いながら必死にダンスを練習したりして、フルモンティ(完全に全部脱ぐという意味)を成功させる姿が全世界で感動を呼びました。この映画はのちにブロードウェイで舞台化されて人気を博し、トニー賞作品賞を含む9部門にノミネートされました。そんな『フル・モンティ』は、以前、日本版の上演もありましたが、今回は日米合同制作として山本耕史さんやゆりやんレトリィバァさんが出演するものの全編英語で上演されるというものになります。オリジナルの映画では、メインの6人のほかにロンパーというゲイのキャラクターも登場していましたが、今回は?
<あらすじ>
ニューヨーク州の郊外にある街・バッファロー。今は閉鎖された製鉄所で働いていたジェリーは失業中で、職安に通う⽇々をすごしている。⼀⼈息⼦ネイサンの教育費も払えず、離婚した元妻パムに親権を奪われそうになっていた。職安には親友のデイブや元上司のハロルドなど、かつての仲間たちも同じように仕事を探しに通っている。
そんなある⽇、ジェリーとデイブは⼥性たちが男性ストリップショーに熱狂している光景を⽬にする。その中にはデイブの妻ジョージーの姿もあった。男性ストリッパーの⾁体美などについて興奮気味に話している様⼦に衝撃を受けたジェリーは「⾃分たちもストリップで⼀儲けできるのでは」と思い⽴つ。
メンバーに集まったのは体型にコンプレックスを抱えるデイブ、内気なマルコム、社交ダンス経験のある元上司ハロルド、年配のホース、そして⾃信満々のイーサンなど事情も性格もバラバラな男たち。慣れないダンスに悪戦苦闘しながらも、彼らは少しずつ⼼を通わせていく。
やがて彼らは、”全てをさらけ出す” という⼤胆なアイデアに挑もうとするが、さまざまな壁が⽴ちはだかる…。
ルッキズムを愛で乗り越え、性を礼賛する、感動的ですらあります。素晴らしい作品というほかありませんでした。
長身でマッチョでイケメンな男性ストリッパーとは対照的に、太ってたりガリガリだったりハゲたおじさんだったり黒人だったりする多様な男性たちがストリップに挑戦することになり、そんな体で女性たちにお金を払ってもらえるのか、(いつも女たちを品定めしていたが)今度は俺たちが品定めする番だ、といった苦悩のシーンも盛り込みつつ、いろんなハードルを愛で乗り越えていくというお話ですが、すべては「男たちが舞台上で全裸になる」ためなのです。そこが素晴らしい。
キホン、ノンケの男女や家族の物語ですが、特筆すべきは、映画版とはゲイの扱いが大きく違っていたことです。映画版よりもよくなっています(今のブロードウェイですから、当然ですよね)。あまり詳しく書かないほうがよいと思ったので控えますが、製作陣のゲイに対する思いが伝わってきます。
会場は女性とゲイが圧倒的に多かったです(前から2列目で観てたカップル、うらやましかったです。自分は2階席だったので…字幕は見やすかったですけどね)
東京は9月7日まで。大阪は9月10日〜14日です。是非是非!
日米合作ブロードウェイミュージカル「フル・モンティ」
東京公演
日程:8月19日(水)〜9月14日(月)
会場:東京国際フォーラム ホールC
大阪公演
日程:9月10日(木)~14日(月)
会場:新歌舞伎座
INDEX
- 大興奮!大傑作!本当に面白いクィアSFアクションムービー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
- 実にポップでインテレクチュアルでエモーショナルで画期的な『極私的梅毒展』@akta
- 女性と同性愛者を抑圧し、ペストで死ぬ人々を見殺しにする腐敗した権力者への叛逆を描いた映画『ベネデッタ』
- トランスジェンダーへの偏見や差別に立ち向かうために読んでおきたい本:『トランスジェンダー問題: 議論は正義のために』
- 『痛快!明石家電視台』ドラァグクイーン大集合SP
- 殺伐とした世界に心を痛めるすべての人に観てほしいドラマ『THE LAST OF US』第3話
- 3人のドラァグクイーンのひと夏の旅を描いたハートフル・コメディ映画『ひみつのなっちゃん。』
- 40歳のゲイの方が養護施設で育った複雑な生い立ちの20歳の男の子を養子に迎え入れ、新しい家族としての生活を始める姿をとらえたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』
- 貧しい家庭で妹の面倒を見る10歳のゲイの男の子が新しい世界を切り開こうともがき、成長していく様を描いた映画『揺れるとき』
- ゲイコミュニティへのリスペクトにあふれ、あらゆる意味で素晴らしい、驚異的な名作『エゴイスト』
- ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いたフランス発の短編映画『パロマ』
- 文藝賞受賞、芥川賞候補の注目作――ブラックミックスのゲイたちによる復讐を描いた小説『ジャクソンひとり』
- ドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』
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