REVIEW
ドラァグクイーンが活躍する舞台『Lipsynca~ヒールをはいたオトコ!?たち~』
本物のドラァグクイーンが登場し、ゲイテイストなショーを繰り広げる笑いあり感動ありの舞台『Lipsynca~ヒールをはいたオトコ!?たち~』が初日の幕を開けました。その華やかなショーの画像とともに、レビューをお届けします。

こちらのニュースでもお伝えしたドラァグクイーンが活躍する舞台『Lipsynca~ヒールをはいたオトコ!?たち~』が14日、新宿の「シアターサンモール」で初日の幕を開けました。その前に行われたゲネプロ(本番さながらのリハーサル)におじゃますることができましたので、このお芝居のレビューをお届けいたします。(後藤純一)
あらすじ

たくさんのクイーンたちが観客席から
登場し、お客さんを楽しませます

そして華やかなオープニングショー!
本物のドラァグ・ショーがたっぷり味わえます!


ドロシー&ナジャ&フォクシーさんの
本格的なショーが素敵です!
ノンケさんが演じているドラァグクイーンの衣装も、コシノジュンコさんが制作したものだったり、本物の方から借りたものだったり。ウィッグ(かつら)もレディ・ガガ風にビール缶を巻き付けたり、フルーツが山盛りに盛られていたり。「女性」ではなく「ドラァグクイーン」らしい過剰さ、ゴージャス感が出るように努力されていました。
TVによく出てくるゲイバーのママみたいな感じ(中途半端なメイクで青ひげが浮いてるような、あからさまに嘲笑を誘うような感じ)ではなく、ニューハーフのような女性美でもなく、ゲイテイスト以外の何者でもない、リアルなドラァグクイーンのパフォーマンスが、こうしたメジャーな商業演劇に登場するのは初めてではないでしょうか。それは、(これまでの世間の風潮に反し)ゲイカルチャーやゲイテイストをカッコいいものとして認め、賞揚することに他ならず、間違いなく快挙と言える出来事だと思います。
ゲイと家族の関係を描き、感動を喚び起こしました


世間一般の人たちが全員、こうした(派手に女装した)ゲイに対していきなり諸手を挙げて好意を示すということは考えにくいので、この芝居にも「ゲイに対する嫌悪感(ホモフォビア)」を表現するシーンが出てきます。中には「おかまのくせに!」という強烈なセリフも…。
芝居の本筋は『デズモンド・グレイ』のパーティを成功させるために素人をオーディションし…という流れですが、ときどきそうしたホモフォビアをむきだしにしたセリフが飛び出し、ハラハラさせられます。でも、そんなひどいセリフを放つ人にもレッキとした理由があるということが、だんだん明らかになっていきます。
オーナーの鈴木も、もう1人のゲイの男の子も、二人とも、ゲイであるがゆえに家族との関係が悪くなったという過去を持っています。鈴木のほうは、もういい年ですし、割り切った様子ですが、もう1人のゲイの男の子は、現在進行形で悩んでいます。後半、お店のパーティに向けたドタバタ劇の中で、そうした「ゲイとその家族の関係」の難しさが描き出されています。「男が男を愛して、女が女を愛して、いったい何が悪いのよ!」というセリフが観客の胸を打ちます。
このセリフには、長年、ゲイを白い目で見たり嘲笑したり排除したりしてきた世間の風当たりを痛いほど感じてきた人の、本当は家族にゲイであることを理解してほしい、ありのままの自分を受け容れてほしいという、心からの叫びが込められています。
キホン華やかなドタバタ劇ですので、あまりシリアスな場面はなく、このセリフを言うシーンが「効く」というか、ズシンと観客に響く、そういう重みを与えられていたように感じました。このセリフこそが芝居の中でいちばん大事だとみんなが思っていたんじゃないでしょうか。そんな作り手側の「思い」が感じられて、後からジワジワきました。
* * * * * *


華やかなフィナーレ!
『Lipsynca』は二丁目から程近い「シアターサンモール」で19日(祝)まで上演されます。この3連休の間にぜひ、お出かけください。

日程:2011年9月14日(水)~19日(祝)
会場:シアターサンモール(東京都新宿区新宿1-19-10サンモールクレストB1)
料金 (全席指定・税込) :前売¥5,500、当日¥6,000
問合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (10:00-19:00)
INDEX
- 「絶対に同性愛者と言われへん」時代を孤独に生きてきた大阪・西成の長谷さんの人生を追った感動のドキュメンタリー「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」
- アジア系ゲイが主役の素晴らしくゲイテイストなラブコメ映画『ファイアー・アイランド』
- ミュージシャンとしてもゲイとしても偉大だったジョージ・マイケルが生前最後に手がけたドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル:フリーダム <アンカット完全版>』
- プライド月間にふさわしい名作! 笑いあり感動ありのドラァグクイーン演劇『リプシンカ』
- ゲイクラブのシーンでまさかの号泣…ゲイのアフガニスタン難民を描いた映画『FLEE フリー』
- 男二人のロマンス“未満”を美味しく描いた田亀さんの読切グルメ漫画『魚と水』
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
- LGBTQユースの実体験をもとに野原くろさんが描き下した胸キュン青春漫画とリアルなエッセイ『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
- 絶望の淵に立たされた同性愛者たちを何とか救おうと奮闘する支援者たちの姿に胸が熱くなる映画『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』
- スピルバーグ監督が世紀の名作をリメイク、新たにトランスジェンダーのキャラクターも加わったミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』
- 同性愛者を含む4人の女性たちの恋愛やセックスを描いたドラマ『30までにとうるさくて』
- イケメンアメフト選手のゲイライフを応援する番組『コルトン・アンダーウッドのカミングアウト』
- 結婚もできない、子どももできないなかで、それでも愛を貫こうとする二人の姿を描いたクィアムービー『フタリノセカイ』
- 家族のあたたかさのおかげで過去に引き裂かれた二人が国境を越えて再会し、再生する様を描いた叙情的な作品――映画『ユンヒへ』
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