REVIEW
フライングステージ「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」
8月27日(火)、下北沢OFF OFFシアターで劇団フライングステージの新作「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」が幕を開けました。初日レポートをお届けします。
8月27日(火)、下北沢OFF OFFシアターで劇団フライングステージの新作「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」が幕を開けました。今回は初の試みで、初日の前にプレビュー公演(ゲネプロ的なもの?)が行われました。あまり完成度が高くないだろうことは容易に想像できる公演だったにもかかわらず、実にたくさんの方が詰めかけ、行列をつくっていました。舞台のレポートをお届けします。(後藤純一)
二丁目という町はある意味、ハコであり、それ自体がテーマというわけではなく、そこに生きてきた人たちをどう描くか、何を表現するか、ということが大事だと思いますが、僕は、たくさんの亡くなった方たちが実は二丁目という街を見守っているんじゃないか、という視点が素晴らしいと思いました。
かつて二丁目で生き生きと活躍し、二丁目という街に華やかさや笑いや感動や色気や文化を生み出していた、けど、残念ながら今はもうこの世にいない方たち――たとえば、バー『クロノス』のクロさん、川口昭美さん、隼人さん、春日亮二さん、伊達ロザンナさん、真崎航さん、そしてフライングステージの羽矢瀬さん――そんな方たちへの追悼の気持ちが込められている舞台だと感じました。
お盆に限らず、折にふれて亡くなった方のことを思い出し、その声に耳を傾け、思いを受け継ぐこと…それはとても大事なことなんじゃないかと思います、ゲイとかノンケとか関係なく、人間として。そのことを、この舞台は思い出させてくれたような気がします。
それでいて、ゲイたちの生き生きした青春が描かれ、実にさまざまなタイプのゲイバーの様子(ゲイの生態)の紹介があり、レインボー祭りの感動が再現され、とても楽しい舞台でした。個人的には、「赤線最後の日」のシーンで岸本さん&石関さんが実に生き生きとパンパンを演じていたのがツボでした。
舞台美術はとてもシンプルでしたが、照明を効果的に用い、キャストの方が全員、トップスが純白、ボトムスが黒という衣装で統一されていたこともあり、さわやかで清潔感のあるステージになっていたと思います。
もしかしたら、激しいケンカの場面もないし、女装も出てこないし、妙に舞台進行の語りが多いし、いつものフライングステージの芝居とはちょっと違うてかも…という印象をもつ方もいらっしゃるかもしれません。それは、ソーントン・ワイルダーの「わが町」を下敷きにした作品だから、というのも一つの理由だと思います。逆に、「わが町」を知っている方には、より面白く観ていただけると思います。
フライングステージ「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」は9月8日まで上演中です。ぜひ足をお運びください。
フライングステージ第38回公演「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」
日程:8月27日〜9月8日
会場:下北沢 OFFOFFシアター
チケット: 前売3,500円、ペアチケット6,500円、トリプルチケット9,000円、学生2,500円、当日券3,800円、当日学生券3,000円、プレビュー公演 全自由席2,500円(予約・前売り、当日とも)
作・演出: 関根信一
出演: 石関準、遠藤祐生、岸本啓孝、木村佐都美、小林高朗、水月アキラ、関根信一
(画像は、劇団フライングステージから提供していただきました。Photography : Joshia Shibano)
INDEX
- “怪物”として描かれてきたわたしたちの物語を痛快に書き換える傑作アニメーション映画『ニモーナ』
- 映画『怪物』レビュー
- 恋に翻弄されるゲイの愚かで滑稽で愛すべき姿態をオゾン流にキャムプに描いた大傑作メロドラマ『苦い涙』
- ドリアン・ロロブリジーダさん主演の素敵な短編映画『ストレンジ』
- クラシックの世界のリアルを描いた登場人物がクィアだらけの映画『TAR/ター』
- 僕らはこんな漫画をずっと読みたかったんだ…田亀源五郎『魚と水』単行本
- PrEPについて楽しく学べるポップでセクシーな映画『The PrEP Project』
- ゲイカップルが世界の運命を決める――M.ナイト・シャマランの最新作『ノック 終末の訪問者』
- レポート:『OUT IN JAPAN 2023 Spring 写真展 by LESLIE KEE』『アキラ・ザ・ハスラー 「Here’s Your Playground」』
- 高校生のひと夏の恋と成長を描いた青春ドラマにして最高のクィア・コメディ映画『あの夏のアダム』
- 中国で男娼として生きる主人公やその周囲の若者たちの群像をせつなく美しく描いた映画『マネーボーイズ』
- 50代以上のゲイの方たちの食事会の様子を通じて人生を映し出した映画『変わるまで、生きる』
- これまで見捨てられがちだった人々をも包み込んで慈しむような素晴らしいゲイ映画『老ナルキソス』
- 驚くべき魂を持った人間の崇高な最期を描いた映画『ザ・ホエール』
- ゲイと女性2人の美大同級生たちの人生模様を料理とともに描くドラマ『かしましめし』
- ゲイである父、娘たち、元彼の人間模様を描き、人間の「尊厳」や「愛」を問う映画『すべてうまくいきますように』
- レビュー:リン・モンホワン『同棲時間』公演記録映像上映+アフタートーク
- レビュー:リン・モンホワン『赤い風船』『アメリカ時間』
- 大興奮!大傑作!本当に面白いクィアSFアクションムービー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
- 実にポップでインテレクチュアルでエモーショナルで画期的な『極私的梅毒展』@akta
SCHEDULE
- 05.18秋田プライドマーチ
- 05.18An Evening with ALASKA
- 05.18SPECTRUM vol.1
- 05.18GLOBAL KISS
- 05.18PIERROT OKINAWA 19th anniversary