REVIEW
アヴァンギャルド×コンプレックス第1回公演 鄭義信×中村中「COUPLES 冬のサボテン」
同じ野球部の4人のゲイたちが、甲子園に出場した18の時から、人生のほろ苦さを味わう38歳まで、20年にわたって繰り広げる青春と恋と友情のドタバタ劇です。

同じ野球部の4人(正確に言うと、もう1人…その意味は、ぜひ舞台で確かめてください)のゲイたちが、甲子園に出場した18の時から、人生のほろ苦さを味わう38歳まで、20年にわたって繰り広げる青春と恋と友情のドタバタ劇です。笑いあり、涙あり。そんな「COUPLES 冬のサボテン」のレビューをお届けします。(後藤純一)
小劇場におけるゲイが主人公の舞台作品といえば、寺山修司さんの『毛皮のマリー』(1967年)や、宮沢りえさんが出演して二丁目でロケをして話題になったドラマ『ロマンス』(1999年)の原作であるつかこうへいさんの『いつも心に太陽を』(1979年)が有名だと思います。今回リバイバル上演された鄭義信さんの『冬のサボテン』(1997年)は、知る人ぞ知る(隠れた)名作なのではないでしょうか。
鄭義信さんについて簡単にお伝えすると、1987年に劇団「新宿梁山泊」を旗揚げし(京大西部講堂で観た『千年の孤独』、それから、大阪・中之島公園の特設テントで上演された『人魚伝説』の、舞台の壁がバーンと外され、主人公が船に乗って夜の川へと消えていく…というラストシーンは今でも忘れられない演劇体験です)、また、1994年、『ザ・寺山』で岸田國士戯曲賞(日本の演劇界で最高の栄誉)を受賞、それから、映画『月はどっちに出ている』『愛を乞うひと』『血と骨』の脚本がキネマ旬報ベスト・テン脚本賞を受賞するなど、数々の賞に輝いています。2014年には紫綬褒章も授与されています。
そんなスゴい方が、70年代後半〜90年代後半に生きたゲイたちの群像を、『冬のサボテン』という戯曲に書いていて、私も知らなかったのですが、もともと鄭義信さんのファンであること、青山吉良さんが今回、ゲイ的な部分の監修を務めていること、中村中さんが作曲を務めている、ということもあって、観に行こうと思いました。
2時間があっという間の、楽しい時間でした。
二丁目版『真夜中のパーティ』みたいだったなぁと思いました。
今回旗揚げしたアヴァンギャルド×コンプレックスという劇団の代表の岩男海史さんという方が、女装して二丁目で働いているハナちゃんという役をやっていたのですが、個人的には、ゲラゲラ笑えて、好きでした。必要以上にクネクネしたり過剰にオネエだったりせず、ちゃんと二丁目でママやってそうなノリや雰囲気が出てるし、キップのいいオネエさんみたいなキャラで、良かったです(吉良さんの指導が良かったんだと思います)
それから、ベーヤンという、吃音症(寺山修司へのオマージュでしょうか)で見た目も冴えない…というより、正直キモいキャラが登場するのですが、マイノリティの中でもマイノリティで、二丁目の世界からもこぼれ落ちてしまうようなキャラクターが登場していたことで、ハッとさせられ、胸を打たれました。
劇中、「ホモ」という言葉がバンバン飛び交いますが、時代的に、LGBTという言葉もなく、二丁目でも「ゲイ」といえば「ゲイボーイ(女装しているような人)」というイメージでしたので、4人のゲイたちが「ホモ」と呼び合うのは、リアルだと思います。世間体のために女性と結婚したり、生きづらさが色濃くにじんでいるような、今の感覚とはかけ離れた部分もあるかもしれませんが、そういう時代だったのだと割り切って観ていただければ…と思います。決してノンケさんが興味本位でゲイの世界を面白おかしく書いて演じている、というのではありません。そこは大丈夫です。
着替えシーンという「サービスショット」もあったりはするものの、あまり二丁目受けするような(スポーツマン的な雰囲気の)役者さんもいらっしゃらないですし、そこはあまり期待せず…。
ともあれ、まるで『セックス・アンド・ザ・シティ』のように、4人(正確に言うともう1人)のゲイが集まって恋バナに話を咲かせたり、青春している、楽しさも、ほろ苦さもある作品ですので、もし興味がある方は、ご覧になってみてください。
アヴァンギャルド×コンプレックス第1回公演「COUPLES 冬のサボテン」
日程:10月31日(木)〜11月4日(月祝)
会場:下北沢小劇場 楽園(本多劇場のビルの地下です)
チケット:前売3500円、カップル6000円、演劇初めて割:2000円
作・監修:鄭義信
作曲:中村中
出演:岩男海史、髙倉直人、永田涼、中西良介、大江晋平
スペシャルサンクス:青山吉良
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