REVIEW
ドラァグクイーンに憧れる男の子のミュージカル『Everybody's Talking About Jamie』
『ジェイミー!』のオリジナルの舞台が日本語字幕付きでご覧いただけるという奇跡が…17日から配信の映画版が待ちきれない方など、ぜひご覧ください。
ドラァグクイーンとしてプロムに出場したいという夢を抱くゲイの高校生ジェイミーが、教師の反対や無理解な父親との確執など多くの困難を乗り越えながら、夢に向かってあきらめずに奮闘する姿に勇気と感動をもらえる、最高にハッピーなポップ・ミュージカル映画『ジェイミー!』が、いよいよ17日から配信されます(舞台の日本版も好評のうちに幕を閉じましたが)。そんな『ジェイミー!』のオリジナルであるウェストエンド(いわばロンドンのブロードウェイ)のミュージカル『Everybody's Talking About Jamie』がYouTubeで日本語字幕付きで観られるという奇跡が…(なんということでしょう)。映画の配信が待ちきれない方など、ぜひご覧ください。
<ストーリー>
英国・シェフィールドに暮らす16歳の高校生ジェイミー・ニューは、将来ドラァグクイーンになることを夢見ているゲイの男の子。母親やその親友・レイ、親友のプリティ、ドラァグ用品店の店主などが応援してくれて、真っ赤なヒールやドレスもプレゼントしてもらい、プロムにドラァグクイーンとして出席しようとしますが、理解のない父親や教師、クラスの男子などから投げつけられた心ない言葉に傷つき、何度となく挫折しそうになります。果たしてジェイミーはドラァグクイーンになれるのか……
観れて本当によかったです。
これがミュージカルだ!っていう熱さがありました。音楽、歌、ダンス、どれをとっても魅力的。特に音楽が素晴らしいです(Dan Gillespie Sellsというゲイのシンガー・ソングライターが手がけているそう)。ステージの上の方にバンドがいて(キホン見えなくて、舞台転換の時とかにシルエットで見える程度)生演奏で聴かせるのですが、コンサートのような熱さです。1曲歌が終わるたびに歓声と割れんばかりの拍手。それだけでジーンときます。すごい臨場感。ダンスもポップ、コンテンポラリー、ヴォーグ、いろんなダンスが自由自在にアレンジされていて楽しいです。
たぶん映画に比べると地味に見えると思うのですが、低予算とかそういう制約を乗り越えて、本当に良い作品になってるし、だからこそ全世界に向けての映画化も実現したんだろうなぁと思います。
先生が無理解なところは『ザ・プロム』を彷彿させますし、ガサツなノンケ男がホモフォビックなところは『キンキー・ブーツ』を彷彿させます。
ジェイミーが厳しい現実とどう向き合っていくか、どう成長していくかということを描いているようでいて、ジェイミーだけじゃなくお母さんの苦しみや葛藤や心の成長も描かれていたりするのがリアルだし、そういう母子が固い絆で結びついている姿も泣かせます。お母さんがなんとなくレズビアンっぽい見た目なのもイイです。
ジェイミーの親友がプリティという名前のムスリムの女の子っていうところも素敵でした(たぶん実話なんでしょうけど、クラスがずいぶん人種的に多様で、よかったです)
そしてロコ・シャネルと仲間のクイーンたち(ロコはスペイン語で「頭がおかしい」という意味)。最高!です。
第1幕と第2幕を合わせて2時間半近いのですが、きっと観てソンはないので、この週末にでもぜひ!ご覧ください(もしかしたらそのうち観れなくなったりするかもしれませんし…)
INDEX
- 米史上初のゲイの大統領になるか?と騒がれた人物の素顔に迫る映画『ピート市長 〜未来の勝利宣言〜』
- 1920年代のベルリンに花開いたクィアの自由はどのように奪われたのか――映画『エルドラド: ナチスが憎んだ自由』
- クィアが「体感」できる名著『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』
- LGBTQは登場しないものの素晴らしくキャムプだったガールズムービー『バービー』
- TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」
- ただのラブコメじゃない、現代の「夢」を見せてくれる感動のゲイ映画『赤と白とロイヤルブルー』
- 台湾映画界が世界に送る笑えて泣ける“同性冥婚”エンタメ映画『僕と幽霊が家族になった件』
- 生き直し、そして希望…今まで観たことのなかったゲイ・ブートキャンプ・ムービー『インスペクション ここで生きる』
- あらゆる方に読んでいただきたいトランスジェンダーに関する決定版的な入門書『トランスジェンダー入門』
- 世界をトリコにした名作LGBTQドラマの続編が配信開始! 『ハートストッパー』シーズン2
- 映画『CLOSE クロース』レビュー
- 映画『ローンサム』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『ココモ・シティ』(レインボー・リール東京2023)
- FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~(レインボー・リール東京2023)
- 映画『マット』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『秘密を語る方法』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『クリッシー・ジュディ』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『孔雀』(レインボー・リール東京2023)
- クィアな若者がコスメ会社で働きながら人生を切り開いていくコメディドラマ『グラマラス』
- 愛という生地に美という金糸で刺繍を施したような、「心の名画」という抽斗に大切にしまっておきたい宝物のような映画『青いカフタンの仕立て屋』
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