REVIEW
休日課長さんがゲイ役をつとめたドラマ『FOGDOG』第4話「泣きっ面に熊」
相貌失認を患う休職中の警察官と破天荒な先輩刑事が未解決事件の“霧”を晴らす新感覚刑事ドラマ『FOGDOG』の第4話「泣きっ面に熊」に休日課長さんがゲイ役で登場しました。これまでになく身近に感じられる(周りにこういう人いる!と思える)ナイスなキャスティングでした

読売テレビ系で毎週月曜深夜1:29〜放送の『FOGDOG』。人の顔を識別したり憶えたりするのが困難な相貌失認を患う狗飼錐(平祐奈さん)は現在休職中の警察官で、もう1人の主人公・猿渡響(丸山隆平さん)は、捜査一課で抜群の検挙率を誇るも、度重なる暴力行為から左遷されてしまった“昭和の熱血刑事”。世間にうまくなじめない凸凹コンビながら、錐の驚異的な記憶力と猿渡の型破りな行動力で難事件に立ち向かうという、新感覚の刑事ドラマです。
8月11日深夜に放送された第4話「泣きっ面に熊」は、こんなお話です。
<あらすじ>
狗飼錐と猿渡響は、7年前に寺で起きた未解決殺人事件の捜査を続けていた。事件の鍵を握るのは、被害者の衣類に残された香水の痕跡。錐の天才的な嗅覚と記憶力、猿渡の体当たりの行動力で、被害者であるゴシップ記者とプロボクサー・熊田浩紀(佐野岳さん)、住職(六平直政さん)、そしてその息子の蜂屋満(休日課長さん)をつなぐ手がかりを発見する。事件の切ない真相とは…。
*以下、ネタバレを含みます
WEBザテレビジョンの記事にも書かれていたように、ボクサーの熊田浩紀とタイレストランを営む蜂屋満は7年前につきあっていて、週刊誌のゴシップ記者が、二人が寺の前で会っているところをパパラッチし、二人の関係をバラされたくなかったら金を用意しろと脅していたのでした。その記者の下劣さには本当に反吐が出ます(ドラマでも「ひでえ…」というリアクションでした)。記者が殺された背景にはそういうことがあり、その事件以来、二人は会っていませんでした。
錐は、ボクサーである熊田と、寺の住職の息子でありタイレストランを営んでいる蜂屋という、何の関係もなさそうな二人がかつてつきあっていたことを、あることを手がかりに見抜き…という展開が、今回のドラマの肝になっています。
ゲイ的に肝だったのは、休日課長さんがゲイ役で出演していたことです(Bear好きな方たちの間で人気ですよね)。世間に山ほどあるBLドラマではまずお目にかかれない、「こういう人いる!」とか、「友達や彼氏(あるいは自分)に似てる!」と思えるような、たいへん稀有な(日本の芸能界にはほとんどいない)方で、そこがよかったです。「よくぞ選んでくれました」って感じです。お相手の佐野岳さんも、ボクサー役を務めるくらいの筋肉質な体で、金髪のショートヘアで、GOGOとかやってそうなルックスです。そういう意味で、僕らの周りにいてもおかしくないようなカップルに見えましたし(ボクサーはあまりいないですけどね…)、お二人のカップルとしての演技も自然でよかったです。お互いを思い合う気持ちってノンケもゲイも変わらないし、という姿勢で演出なり演技なりをしていたんだろうな、と思います(最後はグッときました)。ちなみにセクシーなシーンはありませんが、二人がハグするシーンがあって、キュンとさせられます。
ドラマの内容としても、「別にゲイじゃなくても成立するお話だけどちょっとネタとしてゲイを使ってみた」というのではなく、男どうしで片方が有名人のカップルだからこそ脅迫が成立するのだし、殺人事件にも発展してしまうというのにはリアリティや必然性があります(もしかしたら過去に、同様の事件も起こっていたかもしれません。海外ドラマでもこういう展開、観たことあるような気がします)。さらに言うと、こういうお話の場合、昔だったら「絶対に知られてはいけない秘密」として隠しておくのが当たり前みたいな描写になりがちだったのが、今は、愛のためなら世間に公表することも辞さないくらいの温度感になっていて、時代は変わったのだなぁとしみじみ。海外ドラマのように有名人が感動のカミングアウトを果たすようなお話が描かれる日も間近ですね。
かつて、15年くらい前までは、テレビドラマに登場するゲイって、場末な雰囲気のゲイバーのママだったり(髪の薄いおじさんが口紅だけ塗ってワンピースを着てたり)、過剰にオネエだったり、ステレオタイプというかテレビ用に作られたキャラが多く、ゲンナリさせられたものです。今や、こんなにもいろんな方が自然にゲイカップルを演じたり、ゲイ役として出演するようになりました(2018年の『弟の夫』や『隣の家族は青く見える』あたりが転機になった気がします)。いい時代になったなぁと思います。と同時に、海外のようにゲイの俳優がもっと活躍する(俳優がカミングアウトしても活躍し続けられる)時代も早く来てほしいかも、と思いました。
『FOGDOG』第4話「泣きっ面に熊」
TVerでご覧いただけます(8/19まで)
INDEX
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
- 絶望の淵に立たされた同性愛者たちを何とか救おうと奮闘する支援者たちの姿に胸が熱くなる映画『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』
- スピルバーグ監督が世紀の名作をリメイク、新たにトランスジェンダーのキャラクターも加わったミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』
- 同性愛者を含む4人の女性たちの恋愛やセックスを描いたドラマ『30までにとうるさくて』
- イケメンアメフト選手のゲイライフを応援する番組『コルトン・アンダーウッドのカミングアウト』
- 結婚もできない、子どももできないなかで、それでも愛を貫こうとする二人の姿を描いたクィアムービー『フタリノセカイ』
- 家族のあたたかさのおかげで過去に引き裂かれた二人が国境を越えて再会し、再生する様を描いた叙情的な作品――映画『ユンヒへ』
- 70年代のゲイクラブ放火事件に基づき、イマの若いゲイと過去のゲイたちとの愛や友情を描いた名作ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』
- 何食べにオマージュを捧げつつ、よりゲイのリアルを追求した素敵な漫画『ふたりでおかしな休日を』
- ゲイの青年がベトナムに帰郷し、多様な人々と出会いながら自身のルーツを探るロードムービー『MONSOON モンスーン』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』
- ホモソーシャルとホモセクシュアル、同性愛嫌悪、女性嫌悪が複雑に絡み合った衝撃的な映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 世紀の傑作『RENT』を生んだジョナサン・ラーソンへの愛と喝采――映画『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
- 空を虹色に塗ろう――トランスジェンダーの監督が世界に贈ったメッセージとは? 映画『マトリックス レザレクションズ』
- 人種や性の多様性への配慮が際立つSATC続編『AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章』
- M検のエロティシズムや切ない男の恋心を描いたヒューマニズムあふれる傑作短編映画『帰り道』
- 『グリーンブック』でゲイを守る用心棒を演じたヴィゴ・モーテンセンが、自らゲイの役を演じた映画『フォーリング 50年間の想い出』
SCHEDULE
- 01.23LADY GAGA NIGHT







