REVIEW
TVアニメ『放浪息子』
フジテレビ系で放送されているTVアニメ『放浪息子』は、女の子になりたい男の子や男の子になりたい女の子の「心の旅」を繊細に描いた名作です。

『ハチミツとクローバー』や『のだめカンタービレ』『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』などで話題になったフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」(木曜25:15~25:45) 。現在この枠で放送されているアニメ『放浪息子』は、女の子になりたい男の子や男の子になりたい女の子の「心の旅」を描いた作品です。
原作の漫画は、小学校時代からスタートしていますが、アニメ版は中学の入学式の場面からスタートします。簡単にご紹介しましょう。
第1話は、詰め襟を着た二鳥くんが教室にひとり座り、「おんなのこってなんでできてる?」「首のところにプラスチックの板が入ってて、なんだか窮屈…」とつぶやくシーンから始まります。
中学の入学式。先生が遅刻したせいで自主的に自己紹介が始まります。二鳥くんは同じ小学校の高槻さんとつきあっていたとはやし立てられます。が、本当は違うのです。二鳥くんと高槻さんは、男子の詰め襟を着て登校した女子・更科さんに目が釘付けになります。
二人には秘密がありました。二鳥くんは女の子になりたい男の子で、高槻さんは男の子になりたい女の子。小学校のとき、おたがいの秘密を打ち明けあい、友情をあたためあったのです。
高槻さんをバスケ部に誘った更級さんは「今日は詰め襟の気分だったの。私服の気分の時は私服で来るし」と、人目なんて全く気にしてない様子。高槻さんは、そんな彼女をカッコいいと感じます。
もともと見た目が女の子っぽい二鳥くんは、学校帰り、トイレでセーラー服に着替えて街を歩きます。誰もが女子だと疑いません。自然なかわいらしさがあります。家に帰り、部屋で姉のピンクのブラウスとスカートを見て思わず着てみたとき、姉に見つかって「脱げ。気持ち悪い」と怒られます。二鳥くんはTシャツにスカートという中途半端な格好のまま外に走り出します。桜並木が美しい橋の上で偶然、高槻さんに会い、二鳥くんはボロボロ泣きはじめます。高槻さんは上着を貸してくれます。「女の子みたくなった」。高槻さんも胸にためこんだ思いを吐き出すように「あー!」と叫びます。桜の花びらが舞い散ります(BGMはドビュッシーの「月の光」)
ラストシーン、セーラー服を着た高槻さんが教室にひとり座り、「男の子の服が着たい、女の子の服が着たいって、それだけだったのに…」とつぶやきます。
繊細でやわらかいタッチで思春期の子どもたちの揺れる心を、美しく、丁寧に、リアルに描き出されています。いわゆるアニメ作品のノリが苦手な方も、アート作品として観られると思います(アニメ版『青い花』が文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出されたように、この作品も高く評価されるのでは?)
性同一性障害という言葉もトランスジェンダーという言葉も出てきませんが(それが思春期のリアリティかもしれません)、独特の優しい世界の中で(でも、はっきり嫌悪感をあらわにする人もいます)、二鳥くんや高槻さんは「自分らしさ」を求めて「放浪」するのです。
『放浪息子』は現在、第3話まで放送されたところです。
第2話では「はっきりした」女子たちの生きづらさが描かれ、二鳥くんの親友・有賀くんの秘密も明らかにされています。
第3話では、バスケ部に入った高槻さんが「ブラ、つけたら?」と言われて傷つくシーンが描かれ、また、文化祭で男女が入れ替わる「倒錯劇」をやることになります。
毎週木曜深夜に放映されていますので、ぜひチェックしてみてください。

放浪息子
フジテレビ 毎週木曜25:15~25:45
(第1話がこちらから無料で視聴できます)
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