REVIEW
ドラマ『トランスペアレント』
ゴールデングローブ賞やエミー賞など数々の賞に輝いているAmazonドラマ『トランスペアレント』。70歳の父親がMTFトランスジェンダーであることを子どもたちにカムアウトしたことをきっかけに、家族の運命が思わぬ方向に…というストーリーで、とても面白いです。
第1話のストーリーだけ(さわりとして)ご紹介します。
とっくにリタイアし、すっかり白髪になったモートン(のちにモーラ)は、離婚して一人で暮らしているが、ある日、3人の子どもたちを家に集める。3人はてっきりパパがガンになったとのだと思い、当たり障りのない世間話に花を咲かせていたが、そのうるささに辟易し、モートンはとても本当のことを言い出せなかった…
ロサンゼルスのLGBTセンター。輪になって座り、順番に話をしていくカウンセリング・ミーティングが行なわれている。モートンは、IDの性別と見た目が違うためにスーパーで警察に通報された話を切々と語ったあと、次こそは子どもたちにカムアウトすると誓うのだった…
長女のサラは、ダンナも子どももいて一見、幸せそう。だが、学生時代につきあっていた女性にひさしぶりに会い、あの頃のドキドキ感が甦ってくるのだった…
長男のジョシュは美女バンドのプロデュースをしている。美女たちにクスリを与えたり、寝たりもしている。が、彼が本当に求め、癒しを得られるのは、実の乳母だった…
末娘のアリは物書きのはしくれだが、仕事はうまくいっておらず、なんとか自分を変えたいと思っている。そんな矢先、公園で知り合った黒人男性に一目惚れし…
サラは、パパが住んでいる実家に元カノを連れ込む。焼けぼっくいに火がついたその時、女性の格好をしたモートンが帰ってきて…
(第1話はここまで)
パパはトランスジェンダーですが、長女はどうやらバイセクシュアルで、お互いにそのことは知らなかったのが、第1話のラストで一気にバレてしまうという最高にクィアな展開。長男や末娘だって決して「普通」ではありません。みんなそれぞれ、今の自分の人生に満足しているわけではなく、なんとか自分を保とう(あるいは変えよう)ともがいていて、その姿が切なかったり、滑稽だったり、ラブリーだったり、そういう人間ドラマが実にイイです。素敵です。
70歳で子どもたちにカミングアウトというストーリーは映画『人生はビギナーズ』を彷彿させますが、ドラマチックな出来事は70歳のパパだけに起こるのではなく、家族全員にあるというところが異なります(感動よりも「おかしみ」に重点があるところも)。また、ファミリーの中にセクシュアルマイノリティがいるという点ではエミー賞常連ドラマ『モダン・ファミリー』に通じるものがありますが、ゲイじゃなくてトランスジェンダーというところが「アメリカの今」を感じさせます。
そして、いろんな映画やドラマに出演してきてコメディセンスも抜群な俳優ジェフリー・タンバー(日本で言うと…山崎努さんとか大杉漣さんみたいな?)がトランスジェンダーの主人公を演じているところが、絶妙なおかしみを醸し出していて、このドラマの人気の源となっている気がします。
脚本も面白いし、俳優たちのキャラや演技もとても好感が持てます。
同性婚が実現したあと、アメリカでは「次はトランスジェンダーだ」とばかりに、ケイトリン・ジェンナーがカムアウトしたり、トランスジェンダーをトイレから締め出す州法にセレブがこぞって反発したりしていますが、この『トランスペアレント』は、そういうトランス支援的なムードにピタリとハマった作品なのではないでしょうか。
『トランスペアレント』はAmazonプライム会員なら見放題です。PCがなくてもスマホで視聴できます。ぜひ、ご覧ください。
『トランスペアレント』
2014年/アメリカ/監督:ジル・ソロウェイ、ニーシャ・ガナトラ/出演:ジェフリー・タンバー、ジュディス・ライト、エイミー・ランデッカー、ジェイ・デュプラス、ギャビー・ホフマン他
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