REVIEW
ドラマ『おっさんずラブ』
4月21日、テレ朝でドラマ「おっさんずラブ」がスタートしました。第1話の内容を紹介しつつ、このドラマの見どころや、ある種の意義について、お伝えします。

2018年4月21日(土)、テレビ朝日で連続ドラマ「おっさんずラブ」の放送がスタートしました。世間的にもかなり注目され、賞賛の声が多数上がっています。ゲイから見てもそんなに「バカにされてる」と感じることなく、笑って楽しめるものになってると思いますし、実はとてもいいドラマなんじゃないか、ある種の意義があるんじゃないかとも思えました。レビューをお届けします。(後藤純一)




天空不動産・東京第二営業所に勤務する33歳独身の春田創一(田中圭)はある日、通勤途中のバス内で痴漢に間違われるが、偶然乗り合わせた営業部長の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が冤罪を証言してくれたおかげで、事なきを得る。そのままバスに乗っていると突然、車体が揺れ、黒澤部長は春田に抱きつき、黒澤部長のスマホが床に落下する。そのスマホを春田が拾うと、なぜが待ち受け画面には春田の顔写真が――。
そんな2人が働く営業所に、入社3年目で本社のエースとなった牧凌太(林遣都)が異動してきて、黒澤部長は春田に「俺のパソコンから春のキャンペーンの資料、牧くんに起こしてあげてくれないか」と指示され、春田が黒澤部長のパソコンを操作。すると、「Spring」という名のフォルダ内に大量の春田の隠し撮り写真データがあるのを発見し、動揺。黒澤部長は自分に好意を抱いているのではないかと疑い始める――。
疑いが晴れないまま悶々としていた春田は帰宅途中、自宅近くで牧に出くわし、牧がウィークリーマンション暮らしで料理ができると知り、一軒家の実家である自宅に部屋が余ってるため同居しないかと持ち掛け、牧はその提案に応じる。そして一緒に生活するなかで、春田の人柄の良さに気づき、牧は想いをつのらせていく――。
快適な同居生活を送る春田は、仕事面では週末から始まる春の新生活応援キャンペーンの準備に追われていたが、ある日、返却された営業日報を開くと、部長コメント欄に「本日19時、大場海浜公園にて待つ」と書かれており、春田が指定の場所に出向くと、黒澤部長から告白され――。
正直、そんなに期待していなかったのですが、意外とよかったです。面白かったし、これはアリだと思いました。
特に、運河沿いの公園で、部長(吉田鋼太郎さん)が花束を持って、真っ直ぐに「好きだ!」と叫ぶシーン。ダンディな部長にあんな風に男らしく告白されたら、グッときますよね。ちょっと感動しました。そして部長は、「すまん、俺には妻がいる」と言い始め、ああ、奥さんには内緒で「愛人」としてってことなのかな…と思ったら、なんと、「別れるまで待ってくれ」と言うのです。そして実際、奥さんに土下座して離婚してくれと頼み込む。信じられないくらいの一途さ。男気。ピュアネス。
それでいて、少しでも二人きりでいようとしたり、気づけば見守ってたり、なんとか春田に振り向いてもらいたいと思ったり、オトメな部分も垣間見えて…。
吉田鋼太郎さんという実力派俳優だからこその、ギャップの面白さですよね。
はるたん(田中圭さん)も、どこにでもいるような、女好きでロコツに男をいやがるキャラではあるのですが、だんだんかわいく見えてくるから不思議です。田中圭さんは「東京タラレバ娘」のときに、母性本能をくすぐる、面倒見てあげなきゃと思っちゃうタイプだなあと思いましたが、今回、表情の作り方が天才的だと思いました。ハマり役ですね。
本社から赴任してきて、ひょんなことから春田と同棲することになり、その生活力の高さで春田を喜ばせる後輩の牧(林遣都さん)は、1話の最後に「巨乳じゃなくて巨根なんですけどダメですか?」というやや意味不明なセリフとともに壁ドン&キス(しかもシャワーに濡れながら)というオドロキの直球さを見せてくれて、やるじゃん、と思いました。
林遣都さんは映画『パレード』で男娼の役を、映画『にがくてあまい』でゲイの役を演じてきた方ということもあり、不安なく見れますし、いちばんリアルというか、自分に近いのはこの人だなぁと感じる方、多いと思います。
春田の幼なじみの女性・ちず(内田理央さん)が、春田が「部長から告られて…」とボヤいてるのに対して、「年上だからダメなの? 同じ職場だから?」と、普通に応対するシーンもいいです。「好きになるのに異性とか同性とか関係ない」というスタンスが徹底しています。
第1話では特に目立つことはありませんでしたが、『隣の芝生は青く見える』でゲイカップルの年上のほう(わたるん)を演じた眞島秀和さんも出演しています。そして今後、男性との恋愛が始めるようなことがポスターで示唆されています(男性に後ろから手を回されたかたちで、コピーは「こんなに切なくなるなら、恋なんてしなきゃよかった」)
世間的にも「部長さんクソかわいい」という声が上がるのも、うなずけますし、BLファンのみならず、ゲイが見ても楽しめるドラマだと思いました(もしかしたら、同性愛をネタにして笑いをとってる、あんなのリアルなゲイじゃない、と不快に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、もともとノンケだった結構な年の男性が、本気で男性を好きになって、ゲイとして生きはじめるという話も現実にありますし、何より、真っ直ぐで、純愛で、むしろ現実のゲイよりカッコよく描かれているわけですから…。男との恋愛を本気でいやがる春田のリアクションは不快かもしれませんが、決して「気持ち悪い」と言わせないところにも配慮を感じます)
チャレンジングな企画ではあると思いますが、ある意味、男社会にありがちな同性愛嫌悪を軽やかに反転させる(「キモい」を「エモい」へ)という離れ業をやっているわけで、スゴいと思います。これまで世の男たちは、男であることを証明するために、日々ゲイを侮蔑し、排除してきたわけですが、別に男どうしで愛しあってもいいんだよ?何も恥ずかしくないよ?という世界を疑似体験させることで、同性愛嫌悪症という恐怖心を薄れさせ、自然に受け入れさせることにもつながる気がします。案外、世間を変えるのは、こういうドラマのほうなのかもしれません。
実は「おっさんずラブ」は、2016年年末に単発のスペシャルドラマとして放送された作品で、視聴者たちの大絶賛によって、今回めでたく連続ドラマ化されることとなったものです。
もともとはテレ朝ドラマ部の若手のトライアル企画としてスタートしたドラマだそうです。当時アシスタントプロデューサーで、「おっさんずラブ」を企画した貴島彩理さんは、こう語ります。「ある日、大学時代の女友達の家に泊まりに行ったんです。仕事終わりの夜遅くに行ったのに『おかえり』と出迎えてくれて、夕飯も作ってくれて。朝は、いつまでも寝ている私を起こしてくれて、朝食にパンケーキとコーヒーが出てきたんです。その時、『マジか……妻!』と思ったんですよ。それで、同性だけど『この子と結婚しちゃいけない理由ってなんだっけ? いいじゃん、妻で』と思って。その時の思いをそのまま企画にしたんです」
単発ドラマの放送後、「続きが見たい」「感動した」という声がたくさん寄せられました。「LGBTの方からも『勇気をもらった』という声をいただいて、すごくうれしかった」と貴島さんは語っています。

土曜ナイトドラマ「おっさんずラブ」
テレビ朝日系 毎週土曜 23:15~
<おっさんずラブ>目指すは「月9」? 男同士の恋愛を王道で描く(毎日新聞/まんたんウェブ)
https://mainichi.jp/articles/20180421/dyo/00m/200/028000c
『おっさんずラブ』今期連ドラ・ベスト1!中年男同士の珠玉の純愛ドラマ、大爆笑連発(ビジネスジャーナル)
http://biz-journal.jp/2018/04/post_23094.html
ドラマ【おっさんずラブ】キャストあらすじ!キュン死注意!田中圭&吉田鋼太郎&林遣都のピュアなラブストーリー!(dorama9)
https://dorama9.com/2018/03/02/ossanslove/
ドラマ『おっさんずラブ』のポスターとキャッチコピーが完璧だと話題に(Pouch)
https://youpouch.com/2018/04/21/504702/
INDEX
- 『逃げ恥』新春SPが素晴らしかった!
- 決して同性愛が許されなかった時代に、激しくひたむきに愛し合った高校生たちの愛しくも切ない恋−−台湾が世界に放つゲイ映画『君の心に刻んだ名前』
- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
- ハリウッド・セレブたちがすべてのLGBTQに贈るラブレター 映画『ザ・プロム』
- ゲイが堂々と生きていくことが困難だった時代に天才作家として社交界を席巻した「恐るべき子ども」の素顔…映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
- ハッピーな気持ちになれるBLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(チェリまほ)
- 僕らは詩人に恋をする−−繊細で不器用なおっさんが男の子に恋してしまう、切ない純愛映画『詩人の恋』
- 台湾で婚姻平権を求めた3組の同性カップルの姿を映し出した感動のドキュメンタリー『愛で家族に〜同性婚への道のり』
- HIV内定取消訴訟の原告の方をフィーチャーしたフライングステージの新作『Rights, Light ライツ ライト』
- 『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをした感動のドラァグ・リアリティ・ショー『WE'RE HERE~クイーンが街にやって来る!~』
- 「僕たちの社会的DNAに刻まれた歴史を知ることで、よりよい自分になれる」−−世界初のゲイの舞台/映画をゲイの俳優だけでリバイバルした『ボーイズ・イン・ザ・バンド』
- 同性の親友に芽生えた恋心と葛藤を描いた傑作純愛映画『マティアス&マキシム』
- 田亀源五郎さんの『僕らの色彩』第3巻(完結巻)が本当に素晴らしいので、ぜひ読んでください
- 『人生は小説よりも奇なり』の監督による、世界遺産の街で繰り広げられる世にも美しい1日…『ポルトガル、夏の終わり』
- 職場のLGBT差別で泣き寝入りしないために…わかりやすすぎるSOGIハラ解説新書『LGBTとハラスメント』
- GLAADメディア賞に輝いたコメディドラマ『シッツ・クリーク』の楽しみ方を解説します
- カトリックの神父による児童性的虐待を勇気をもって告発する男たちの連帯を描いた映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
- 秀才な女子がクラスの男子にラブレターの代筆を頼まれるも、その相手は実は自分が密かに想いを寄せていた女子だった…Netflix映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』
- 映画やドラマでトランスジェンダーがどのように描かれてきたかが本当によくわかるドキュメンタリー『Disclosure トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』
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