REVIEW
ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』
今シーズン、『きのう何食べた?』『腐女子、うっかりゲイに告る。』と並ぶゲイが主役のドラマとして注目を集めました。実はとてもいいドラマだったと思います。レビューをお届けします。

ゲイとしてのリアリティは全然ないと思います。だいたいゲイですと言って女装して学校に行く人っていないですよね…(普段から女装しているのはトランスの方ですよね…)
原田先生=のぶおは(もともとゲイバーで働いてた人として)「戦闘服だから」と言っていて、なるほどなぁ…と。商売でやってる方なら、まあ、そういう方もいるよね、と。
古田新太さんの演技も、あえてだと思いますが(「何食べ」の内野さんと対照的に)全くゲイっぽくなくて、女装と合っていなくて、妙にちぐはぐで、どうにも整合性が取れてない印象。正直、初めは違和感が拭えませんでした。
しかし、その辺りの違和感を除けば、実に痛快な熱血学園ドラマですし、毎回、いい話だなぁと思わせてくれますし、楽しめました(今をときめく白石麻衣さんが「ポコチン」とか言っちゃうところも面白いです)。今の時代、『金八先生』ではなく、女装家のゲイの先生こそが学園ドラマを面白くする(成立させる)んだなぁという感慨もあります。
(※以下は、第8話以降のストーリーに触れていますので、すでにご覧になった方に読んでいただきたいと思います)
学園ドラマの常として、毎回、生徒のだれかが問題を起こしたり、困難に直面したり、ということがあるわけですが、ずっとLGBTとは関係なく進んできて、第8話でようやく、フィーチャーされました。学園祭のクラスの出し物でゲイバーをやることになり、男子が全員女装、女子が全員男装するのですが、初めて女装した光岡が、自分はずっとこういう格好をしたかったんだ、ということに気づき(本当のジェンダー・アイデンティティに目覚め)、全校生徒の前で告白するのです。20年近く前の『金八先生』の鶴本直(上戸彩さん)があんなにシリアスで、壮大な物語だったのに対し、光岡のカミングアウトはあっさり受け入れられたのが時代だなぁと、まあそうだよね、という感じでした。
そしてラス前の第9話。
なぜのぶおが教師になったのかという真実が明かされるとともに、ゲイ差別のことが語られていました。
のぶおの高校の先生が、とてもいい先生で、好きになってしまい、告白するのですが、「気持ちに応えることはできないが、原田はそのままでいいんだからな」と、ゲイであることは応援してくれて、それで自信が持てるようになったそうです。のぶおが大学を出てブラブラしてた時に、先生が亡くなったと知らせを受け、お焼香に行きます。仏壇に置かれた先生の「やりたいことノート」の「教え子を卒業させる」欄にハンコがないのを見て(生徒がいる限り、「済」にはなりません)、のぶおは一念発起して教師を志しますが、最初に赴任した学校で変態教師だと生徒にいやがらせを受け、親からもクレームが入り、レズビアンの友人と偽装結婚し、養子で娘をもらい、でも、学校は辞めてしまうのです。まだ世間がLGBTに寛容ではない時代でした。
今回、のぶおが生徒に暴力を振るった疑惑の動画がネットに投稿され、女装したゲイであることの方がマスコミに取りざたされます。テレビのワイドショーでは「この先生が暴力を振るったことで、ゲイが暴力的であると見なされる」と言われたりもします(現代の差別。実にリアルです)。「LGBTにもいろんな人がいるのに」と、呟くのぶお。当事者がとても世間の人たちに言いたいこと、大事なことを、視聴者に伝えています。プラス、のぶおは世間様に対しても誰に対しても、少しもひるまず、ゲイの女装家であることを隠さず、堂々としています。ものすごいゲイプライドの持ち主だと思います。
まだ最終回は観ていませんが、このドラマは、フィクションであり、同時に、メタファーかもしれないと思いました。
ゲイっていう設定だけど、トランスジェンダーでも、外国人でも、在日の人でも、障害を持った人でも、いろんなマイノリティの人に置き換えて考えることができるかもしれない。額面通り受け取るのではなくて。
ポイントは、今回の先生が(日本人の異性愛男性ではない)マイノリティであり、そのことを逆手にとって、学校という「戦場」に、女装という戦闘服を着て乗り込み、いたって王道で素敵なやり方で教育現場を生き生きと活性化させ、本来の教育というものを取り戻し、生徒や先生たちにも熱い支持を受けるようになり、というところです。何か大きなもの(不条理な規則だとか、世間の規範だとか、退屈な日常だとか)と戦って、小さな勝利を得て、やりたいことノートにマルをつけていく(不可能を可能にしていく)物語なのです。
LGBTも、ストレートの人たちも、ストレートだけど別のところでマイノリティな人たちも、(ヅラが飛んだりという、ゲイならではのギャグで)みんな楽しく観ることができるし、LGBTにも共感できる。そういう意味では、素晴らしいドラマですよね。
最終回も楽しみです。
『俺のスカート、どこ行った?』
日本テレビ系 土曜22:00-22:54
脚本:加藤拓也
演出:狩山俊輔、水野格
出演:古田新太、松下奈緒、永瀬廉(King & Prince)、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、長尾謙杜
(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)ほか
INDEX
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- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
- 絶望の淵に立たされた同性愛者たちを何とか救おうと奮闘する支援者たちの姿に胸が熱くなる映画『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』
- スピルバーグ監督が世紀の名作をリメイク、新たにトランスジェンダーのキャラクターも加わったミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』
- 同性愛者を含む4人の女性たちの恋愛やセックスを描いたドラマ『30までにとうるさくて』
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- 家族のあたたかさのおかげで過去に引き裂かれた二人が国境を越えて再会し、再生する様を描いた叙情的な作品――映画『ユンヒへ』
- 70年代のゲイクラブ放火事件に基づき、イマの若いゲイと過去のゲイたちとの愛や友情を描いた名作ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』
- 何食べにオマージュを捧げつつ、よりゲイのリアルを追求した素敵な漫画『ふたりでおかしな休日を』
- ゲイの青年がベトナムに帰郷し、多様な人々と出会いながら自身のルーツを探るロードムービー『MONSOON モンスーン』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』
- ホモソーシャルとホモセクシュアル、同性愛嫌悪、女性嫌悪が複雑に絡み合った衝撃的な映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 世紀の傑作『RENT』を生んだジョナサン・ラーソンへの愛と喝采――映画『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
- 空を虹色に塗ろう――トランスジェンダーの監督が世界に贈ったメッセージとは? 映画『マトリックス レザレクションズ』
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