REVIEW
『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをした感動のドラァグ・リアリティ・ショー『WE'RE HERE~クイーンが街にやって来る!~』
『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをしたような番組。ドラァグクイーンが田舎町の人々と出会って生まれる奇跡に感涙。掛け値なしに名作です。

有名な映画批評サイト『ロッテントマト』で100点(批評家票)を獲得したドラァグ・リアリティ・ショー。ドラァグというゲイカルチャーが田舎町の人々と出会った時に生まれる奇跡的なケミストリーに思わず涙を誘われる、本当に素晴らしい作品です。第1話のレビューをお届けします。


シャンジェラ・ラキファ・ワドリー、ボブ・ザ・ドラァグクイーン、ユリーカ・オハラという『ルポールのドラァグ・レース』出身のスターが、アメリカの田舎町に赴き、町の人々を変えていくという番組です。『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをしてるんだなぁと、だいたいの検討はついていたのですが、実際に観て、グワングワン感情を揺さぶられたし、泣いたし、素晴らしいショーだと思い知りました。
まず、3人が移動するバスが素晴らしいです。大きな唇とリボンがついた真っ赤な車、真っ黄色なハンドバッグの形の車、シルバーでギンギラギンな象さんの車。『プリシラ』のトレーラーを超えるハデさでした。
3人が最初に訪れたのは、南北戦争の激戦地であり、リンカーン大統領が「人民の、人民による、人民のための政治」と演説した町として知られるゲティスバーグ(ペンシルベニア州)。今は人口7600人の田舎町で、白人のおじさんたちがハーレーみたいなバイク乗ってたり、クイーンたちが買い物してると「こんな化け物が来る店にはもう二度と来ない」と吐き捨てる人がいたり、絵に描いたようなコンサバな町です。
3人は、化粧品売場で働くゲイのハンター、町の人種多様性センターで働く黒人のダリル、カムアウトした娘を追い出してしまった母親のエリカという3人の町民に声をかけ、悩みを聞きながら、ドラァグ・ショーへの出演の手助けをしていきます。
ハンターは、理解者の少ないこの町で「いつも重荷を抱えたような」気持ちで過ごしています。お父さんはプロレスラーのような見た目で、国旗がプリントされたTシャツを着てバイクに乗って、軍用機の写真や趣味の狩猟で狩った鹿の頭の剥製を家に飾ってるような人(若い頃に細くて髪が長めで「かわいい」とか言われたのがすごく嫌だったと語っていました)。なかなか親子は気持ちを通わせることができないのですが、シャンジェラのおかげで、ハンターはショーで自分自身の強さを表現し(曲は『I will survive』でスタート)、そしてお父さんが…。
ダリルは、ふだん町民に人種的マイノリティについて理解を深めてもうようなセンターで働いているのですが、「自分がヒールを履いてみなければ、性的マイノリティの気持ちなんてわかるはずがない」との思いで、ドラァグに挑戦します。ヒールもダンスも身のこなしも何もかも初体験でしたが、本番では、堂々とショーをやりきり、同僚の方にも喝采を受けてました。
そしてエリカです。彼女はバイセクシュアルだとカムアウトした娘のヘイリーにひどいことを言ってしまい、ヘイリーが家を出た後で本当に後悔し(号泣しながら「謝りたい」と言っていました)、LGBTQのサポートをする会に入り、フリーハグの活動を始めました。ユリーカは、なんとかヘイリーにコンタクトをとり、当日、会場に来てもらうようお願いしたのですが、彼女は「許さない」と突っぱねるのです。そうして迎えた本番。エリカはアギレラの『Beautiful』のリップシンクでステージに登場します…。


何が素晴らしいって、LGBTQへの偏見ゆえに、わかりあえず、歩み寄れずにいた人々の心が、ドラァグクイーンのショーを通じて劇的に変わっていくというところです。
ショー自体も本当に素晴らしいのですが、ショーに至るまでの過程に「人生」とか「生き様」が刻み込まれてるし、ショーを観た人たちも感動するし、この番組を観た町の人はさらに影響されるだろうし、本当にドラマチックに、人々をLGBTフレンドリー(アライ)に変えていくのです。夢のように、魔法のように。
ハンターの興奮っぷりを見てると、「ああ、ドラァグってこんなに楽しくて、素晴らしいものだったんだよなあ」と、とうに忘れてしまっていた新鮮な気持ちが甦ってくるような気がしました(『覇王別姫』で、辛くて稽古場を飛び出した小豆子が、街中で京劇をやってるのを見て、「京劇って素晴らしい」とボロボロ泣いたシーンを思い出しました)。ドラァグというゲイカルチャーが、保守的な町の人たちにさえも絶賛されるという普遍性を持つことを実証したところも、本当に素晴らしく、感慨深いものがありました。
アメリカでも日本でも(足立区議のように)ホモフォビアやトランスフォビアを抱える人はたくさんいるわけですが、もしかしたらドラァグこそが、偏見や恐怖心をなくしていくための鍵なのではないかとさえ、思えます。
掛け値なしに名作です。最高に素晴らしいです。ぜひご覧ください。
『WE'RE HERE~クイーンが街にやって来る!~』(全6話、字幕版)
配信:Amazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」
(Amazon Prime会員とは別にスターチャンネルEX会員に登録する必要があります。7日間は無料!です)
INDEX
- 映画『日常対話』の監督が綴った自らの家族の真実――『筆録 日常対話 私と同性を愛する母と』
- "LGBT"以前の時代に愛し合い、生き延びてきた女性たち――映画『日常対話』
- 映画『世紀の終わり』(レインボー・リール東京2021)
- 映画『叔・叔(スク・スク)』(レインボー・リール東京2021)
- 映画『シカダ』(レインボー・リール東京2021)
- 映画『ノー・オーディナリー・マン』(レインボー・リール東京2021)
- 映画『恋人はアンバー』(レインボー・リール東京2021)
- 台湾から届いた感動のヒューマン・ミステリー映画『親愛なる君へ』
- 日本で初めて、公募で選ばれたトランス女性がトランス女性の役を演じた記念碑的な映画『片袖の魚』
- 愛と自由とパーティこそが人生! 映画『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』レビュー
- 苛烈なホモフォビアに直面しながらも必死に愛し合おうとするけなげな二人…しかし後半は全く趣旨が変わる不思議な映画『デュー あの時の君とボク』
- かけがえのない命、かけがえのない愛――映画『スーパーノヴァ』
- プライド月間にふさわしい観劇体験をぜひ――劇団フライングステージ『PINK ピンク』『お茶と同情』
- 同性と結婚するパパが許せない娘や息子の葛藤を描いた傑作ラブコメ映画『泣いたり笑ったり』
- 家族的な愛がホモフォビアの呪縛を解き放っていく様を描いたヒューマンドラマ: 映画『フランクおじさん』
- 古橋悌二さんがゲイであること、HIV+であることをOUTしながら全世界に届けた壮大な「LOVE SONG」のような作品:ダムタイプ『S/N』
- 恋愛・セックス・結婚についての先入観を取り払い、同性どうしの結婚を祝福するオンライン演劇「スーパーフラットライフ」
- 『ゴッズ・オウン・カントリー』の監督が手がけた女性どうしの愛の物語:映画『アンモナイトの目覚め』
- 笑いと感動と夢と魔法が詰まった奇跡のような本当の話『ホモ漫画家、ストリッパーになる』
- ラグビーの名門校でホモフォビアに立ち向かうゲイの姿を描いた感動作:映画『ぼくたちのチーム』
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- 02.15米津玄師ナイト -エイトエイト- #02







