REVIEW
『逃げ恥』新春SPが素晴らしかった!
1月2日に放送された『逃げ恥』新春SP、LGBTQのことが随所に盛り込まれていて素晴らしかったです。TVerで配信されているので見逃した方はぜひ。
2021年1月2日、「『逃げるは恥だが役に立つ』ガンバレ人類!新春スペシャル!!」(TBS系)が放送され、視聴率が15%を超え、番組関連ワードがTwitterトレンド入りを果たすなどして大きな注目を集めました(きっとご覧になった方も多いことでしょう)。マタハラや育休の現状、男の生きづらさなど様々なジェンダー問題に迫る内容で、随所にLGBTQに関するシーンも盛り込まれていました(後半は、コロナ禍に翻弄される平匡&みくり&赤ちゃんの姿が描かれ、感動を呼びました)。新年早々、元気をもらえるような、素晴らしいドラマでした。
『逃げるは恥だが役に立つ』は2016年下期に放送され、社会現象にもなったドラマです(「恋ダンス」はゲイシーンでも人気でした)。その最終回では、主人公みくり(新垣結衣さん)ととても仲が良い伯母の百合(石田ゆり子さん)が勤める会社の部下・梅原(成田凌さん)がゲイであることをカミングアウトし、ゲイアプリでとても気の合う人がいるんだけど、正体を明かしてくれない、と言って、その相手が実は主人公の平匡(星野源さん)の同僚である沼田(古田新太さん)だったとわかり、二人はめでたくカップルに…という素敵なハッピーエンドを迎え、反響を呼びました。
今回の新春SPでは、梅原と沼田が一緒に、幸せそうに暮らしている様子も描かれ、二人を応援するファンを喜ばせました。
ほかにも、百合と梅原の会話で、百合が「独り身にも優しい社会にならないかな」「梅ちゃんは沼ちゃんがいるからいいよね」と言うと、梅原が「でもいろいろ悩みはありますよ。老後のこととか」「同性のパートナーは家族と認められずに、死に目に会えないこともある。家族なんていろいろなんですけどね」と答え、「早く100年くらい経たないかなぁ」と二人でため息をつく、というシーンがありました。
それから、がんであることがわかって辛い思いをしていた百合を支えていた高校時代の友人・伊吹(西田尚美さん)が、「実は高校時代に百合のことが好きだったんだ」と告白すし、その後、百合は「ありがとう」と言い、伊吹は「こんなこと言ったらもう会えないかと思ってた」と胸をなでおろす、というシーンがありました。伊吹は現在は、同性のパートナーと暮らしている、という話もありました。男女間の「実は昔好きだった」という告白とは異なり、レズビアンやゲイの多くは、セクシュアリティゆえに好きな人に拒絶されるかもしれないという恐怖と闘いながら、一大決心で、ものすごい勇気で告白するわけですが、あまり重苦しくなく、それでいて、カミングアウトの重みや、当事者の気持ちに寄り添うような描かれ方だったように感じました。
また、平匡の元同僚で百合に愛を告白していた涼太(大谷亮平)が、平匡との会話の中で「恋人といっても同性かもしれない」とさらりと言うシーンもありました。
そして、平匡&みくりが子どもの名前をどうするかで話し合っていた際、「男でも女でも通用する名前にしては?」「生きていく中で性別が変わる場合もありますよね」という会話がありました。明らかにトランスジェンダーやインターセックスのことを想定したセリフで、素晴らしいと感じました。
このように、2時間のドラマの中で、しかも世間的にものすごく注目を集めたメジャーな作品の中で、同性カップルの幸せな姿や直面しがちな困難、周囲のアライの友人たち、子どもがそうかもしれないと考える(そうだとしても受け容れる)親の姿などが描かれていたことは画期的で、世間に与える影響の大きさは計り知れないものがあると言えます。
余談かもしれませんが、平匡とみくりが、育休制度があるにもかかわらずそれを取らせまいとする上司(や職場の雰囲気)に立ち向かおうと一致団結して話し合う場面や、沼田たちが助け舟を出す痛快なシーンがとてもよかったです。育休問題に限らずLGBTQのことでも同じでしょうが、頭の固い、旧態依然とした(セクハラ体質だったりする)上司や職場を変えていくにはどうしたらいいか、の一つの理想的なカタチだなぁと、こんなドラマが観たかった、と感じさせるものがありました。
『逃げるは恥だが役に立つ』公式サイト
https://www.tbs.co.jp/NIGEHAJI_tbs/
『逃げるは恥だが役に立つ』ガンバレ人類!新春スペシャル!! 見逃し配信(TVer)
https://tver.jp/feature/f0064788
INDEX
- かけがえのない命、かけがえのない愛――映画『スーパーノヴァ』
- プライド月間にふさわしい観劇体験をぜひ――劇団フライングステージ『PINK ピンク』『お茶と同情』
- 同性と結婚するパパが許せない娘や息子の葛藤を描いた傑作ラブコメ映画『泣いたり笑ったり』
- 家族的な愛がホモフォビアの呪縛を解き放っていく様を描いたヒューマンドラマ: 映画『フランクおじさん』
- 古橋悌二さんがゲイであること、HIV+であることをOUTしながら全世界に届けた壮大な「LOVE SONG」のような作品:ダムタイプ『S/N』
- 恋愛・セックス・結婚についての先入観を取り払い、同性どうしの結婚を祝福するオンライン演劇「スーパーフラットライフ」
- 『ゴッズ・オウン・カントリー』の監督が手がけた女性どうしの愛の物語:映画『アンモナイトの目覚め』
- 笑いと感動と夢と魔法が詰まった奇跡のような本当の話『ホモ漫画家、ストリッパーになる』
- ラグビーの名門校でホモフォビアに立ち向かうゲイの姿を描いた感動作:映画『ぼくたちのチーム』
- 笑いあり涙ありのドラァグクイーン映画の名作が誕生! その名は『ステージ・マザー』
- 好きな人に好きって伝えてもいいんだ、この街で生きていってもいいんだ、と思える勇気をくれる珠玉の名作:野原くろ『キミのセナカ』
- 同性婚実現への思いをイタリアらしいラブコメにした映画『天空の結婚式』
- 女性にトランスした父親と息子の涙と歌:映画『ソレ・ミオ ~ 私の太陽』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 女性差別と果敢に闘ったおばあちゃんと、ホモフォビアと闘ったゲイの僕との交流の記録:映画『マダム』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 小さな村のドラァグクイーンvsノンケのラッパー:映画『ビューティー・ボーイズ』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 世界エイズデーシアター『Rights,Light ライツライト』
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- 決して同性愛が許されなかった時代に、激しくひたむきに愛し合った高校生たちの愛しくも切ない恋−−台湾が世界に放つゲイ映画『君の心に刻んだ名前』
- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
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