REVIEW
LGBTQ版「チャーリーズ・エンジェル」的な傑作アニメ『Qフォース』がNetflixで配信されました
NetflixがLGBTQ版「チャーリーズ・エンジェル」とも言うべき痛快コメディ・スパイアニメ作品『Qフォース』をリリースしました。本当に面白いのでぜひ観てください!

Netflixがまたまたスゴい作品をリリースしてくれました。LGBTQがメンバーのスパイ・チームが大活躍する(ある意味、「チャーリーズ・エンジェル」的な)傑作活劇アニメ『Qフォース』が9月2日、公開されたのです。『Qフォース』はドラマ『トランスペアレント』などでライターを務めたゲイブ・リードマン(ゲイの方です)がショーランナーを務め、『ウィル&グレイス』のショーン・ヘイズやコメディアンのワンダ・サイクスらLGBTQのキャストが声を担当しています(残念ながら日本語字幕がなく、吹替版になりますので、彼らの声で楽しむことはできないのですが…)。LGBTQによるLGBTQのLGBTQのためのコメディです。こんな作品を待ってました! 第1話〜第3話のレビューをお届けします。
<あらすじ>
スティーブは、AIA(諜報機関)の養成学校をトップの成績で卒業し、卒業式の晴れのスピーチで「私は米軍の「聞かざる言わざる」政策が撤廃されたとの同じ2011年にカミングアウトできることを光栄に思います。私はゲイです。私を支えてくれたセリーヌ・ディオンに感謝」と言って、局長から追い出され…はしないものの、LAのゲイタウン・ウェストハリウッドに「左遷」されます。スティーブは秘密を抱えたハッカーのスタット、ドラァグによる変装のプロであるトゥインク、有能な機械工であるレズビアンのデブら優秀なクィアを集め、いつでも世界を救えるよう待機しますが、10年間、干されたまま…しかし、局で唯一の女性幹部でありアライであるヴィーのおかげで、ついに仕事を与えられるようになる日がやってきました。ただし、監視役としてライバルのノンケ男・バックが派遣されてくることに…







<チーム紹介>
◆スティーブ
常に筋トレに励み、ルックスのキープに余念がない、自分大好き系のゲイで、Qフォースのリーダー。養成学校で2位の成績だったバックが、スティーブの名字のメアリーウェザーを略して「メアリー」と呼んだことから、AIAではずっと「メアリー」と呼ばれています。基本的にとても優秀なのですが、自分をよく見せようとして失敗することもあるのが玉に傷。
◆デブ
優秀な機械工でもある、レズビアンのデブ(Debという名前。決して太めであることを揶揄しているのではありません)は、スティーブの右腕的な存在。Qフォースのために空を飛べる車を開発したり、ジェット機を操縦したり、とても有能。パムという妻がいます。
◆トゥインク
ドラァグクイーンであり、どんな人物にも完璧に変装でき、体の柔らかさも特技の一つであるゲイのトゥインク(ちなみにTwinkは、若くてスリムでお肌ツルツルな男の子という映画のゲイ・スラング)。敵の目を欺いたり、周囲の人の気をそらしたりして活躍。素晴らしくクィアでCAMPなキャラクターです。
◆スタット
天才的なハッカーのスタット。たぶんZ世代の、ジャンクフード好きでオタクなクィアです。ノンバイナリーだったりアセクシュアルだったりするのかな…と思っていたのですが、第4話以降、セクシュアリティが明らかになります(予想の斜め上をいく展開です)
◆バック
AIA本部からQフォースを監視するために派遣されてきたノンケ男。スティーブのライバル。イカニモな「俺が俺が」ノリで、みんなを辟易、イライラさせます。ただ一つ(ゲイの視聴者にとって)いいところは、脱ぐシーンが多いということ。
いけ好かないノンケ男・バック(ただし見た目はゲイ受けバツグン)にイライラさせられながらも、任務に取り組みはじめる「Qフォース」。怪しいウラン鉱山に潜入調査するために初めてワイオミング州のバックエイクという田舎町(『ブロークバック・マウンテン』を意識したネーミングですね)に赴きます。スティーブとバックは、鉱山を仕切っているゲイのエニスに取り入ろうと「お色気」合戦を繰り広げます。「ゲイの欲望につけこもうとしてもすぐにバレる。プライドパレードの時の○○銀行みたいに」「セックスと仕事は両立しない。『アリー my Love』を観てないのか」といった名ゼリフに爆笑させられます。もちろんセックスのシーンは『ブロークバック・マウンテン』のパロディになっています。
ゲイ的にはトゥインクのキャラにも魅了されるハズ。ウェストハリウッドにある、セレブも訪れることで有名なゲイバー「アビー」に潜入捜査した際は、トゥインクがアリアナ・グランデに変装し、そこにいるゲイ客全員の気をそらしました。それと、突然、「シルク・ドゥ・ソレイユ」で団長に厳しくシゴかれる悲劇のサーカス団員としてのトラウマ(妄想?)に襲われたりするところもウケます。今後もいろんな展開を見せてくれそう。
ゲイだけじゃなく、レズビアンを楽しませる努力も怠りません。第2話では、デブと妻のパムが、自宅にレズビアンの友達を大勢招いてバーベキューを催すのですが、見事にいろんなタイプの(実在の人をモデルにしているのかな?と思わせるような)リアルなレズビアンの方たちが描かれています。そして、ヴィーガンネタだったり、「レズビアンあるある」がこれでもかと詰め込まれていて、たぶんレズビアンの方に相当ウケると思います。
このように、素晴らしくクィアで、揺るぎない当事者性に基づいた、それでいてめっちゃ面白い作品になっています。こういうのを待ってた!と思わず拍手したくなります。
そして、ここも重要なポイントなのですが、無駄に脱ぐシーンやラブ・シーンが盛り込まれているうえに、スティーブの恋人もライバルのバックもBear系です(スティーブがマッチョ、トゥインクがTwinkなので、Bear系をアレンジすることでバランスがとれてますね。配慮が行き届いていて素晴らしいです)。BL風味の"イケメン"に辟易してる方やGMPD好きな方はぜひサービス・ショットを楽しんでください。
いろんな人にとって、いろんな意味で楽しめる作品ですので、ぜひご覧ください!
【追記】
シーズン1全10話を観終わって、Qフォースに「ハマった」という言葉では言い足りない、Qフォースの世界を愛している自分がいることに気づきました。
ウェストハリウッドやパームスプリングスみたいなゲイタウン、ユーロビジョンのようなゲイが熱狂するイベント、プライドパレードなんかが舞台になってるということもあるし、登場人物のほとんどがクィアだし、この世界で暮らしたい!と思うくらい、ハマってしまいました。別にスパイになりたいわけじゃないし、命の危険に晒されるのはご免ですが…
最初は『チャーリーズ・エンジェル』みたいなスパイモノをゲイテイストにコメディタッチでお色気シーンもアリで見せてくれてる〜素敵〜!っていう感じで楽しんでたのですが、話が進むにつれて、次第に、それぞれのキャラクターが、恋をしたり、驚きの過去があったり、人間として立体的に肉付けされていき、いつの間にか、メンバーの一人ひとりを本当に愛おしく感じるようになっていました…その活躍を祈ってるし、幸せになってほしいとも願っているのです。そして、そういうキャラクターたちが互いに協力し合い、助け合いながら、危機を乗り越えたり(元Facebook社員のソフィー・チャンのように)カイシャがはたらいてる悪事を暴いたりして、絆を深めていく様にも魅了されていったのです。
『Qフォース』シーズン1を通して観ると、AIAという諜報機関が抱える根深いホモフォビアとの闘い(PRIDE)がテーマになっていたと思います。ワールドプライドのパレードのシーンが長々と登場するアニメっていうのも、珍しいです(もしかして初めて?)。気づけばゲイたちをバカにしてたバックもすっかりQフォースの味方(アライ)になったり、ちょいちょいLGBTQ的に「いい話」が盛り込まれてるのです。
シーズン2も楽しみです。

『Qフォース』全10話
Netflixで9/2から配信スタート
原作・制作:ゲイブ・リードマン
出演:ショーン・ヘイズ、ワンダ・サイクス、ローリー・メトカーフ
INDEX
- レポート:短編集「Meet Us Where We’re At」上映会
- レビュー:BSSTO「世界の・周りの・私のジェンダー」を見つめるショートフィルム特集
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
- クィアでメランコリックなスリラー映画『テレビの中に入りたい』
- それはいつかの僕らだったかもしれない――全力で応援し、抱きしめたくなる短編映画『サラバ、さらんへ、サラバ』
- 愛と知恵と勇気があればドラゴンとも共生できる――ゲイが作った名作映画『ヒックとドラゴン』
- アート展レポート:TORAJIRO 個展「NO DEAD END」
- ジャン=ポール・ゴルチエの自伝的ミュージカル『ファッションフリークショー』プレミア公演レポート
- 転落死から10年、あの痛ましい事件を風化させず、悲劇を繰り返さないために――との願いで編まれた本『一橋大学アウティング事件がつむいだ変化と希望 一〇年の軌跡」
- とんでもなくクィアで痛快でマッチョでハードなロマンス・スリラー映画『愛はステロイド』
- 日本で子育てをしていたり、子どもを授かりたいと望む4組の同性カップルのリアリティを映し出した感動のドキュメンタリー映画『ふたりのまま』
- 手に汗握る迫真のドキュメンタリー『ジャシー・スモレットの不可解な真実』
SCHEDULE
- 04.18いわてレインボーマーチ
- 04.18京都レインボープライド
- 04.18PROM -8beat-
- 04.18FEMALE RAPPER NIGHT/フィメールラッパーナイト
- 04.18PRISMIC -女装達のドラマシリーズ-







