REVIEW
伝説のデザイナーのゲイライフに光を当てたドラマ『HALSTON/ホルストン』
米国の伝説のファッション・デザイナー、ホルストンの生涯をゲイ目線で捉え直したNetflixドラマです。ライアン・マーフィが製作総指揮を手がけています。
ドラマ開始からたったの5分でガタイのいい黒人の青年にケツを掘られる(あのユアン・マクレガーが!)という、たいへん刺激的なドラマです。ホルストンは、ジャクリーン・ケネディがかぶっていた帽子のデザイナーとして注目され、5番街の高級デパート「バーグドルフ・グッドマン」に採用され、ライザ・ミネリとの運命的な出会いがあり、パトロンや有能なスタッフをつかまえて自身のサロンを構え、ファッションショーを催し…という、アメリカ初の世界的デザイナーとして成功するまでの誰もが知っているストーリーを描いているのですが、私生活では、ゲイであり、魅力的な彼氏がいて、というホルストンの知られざるゲイとしての人生に光を当てているのが、この『HALSTON/ホルストン』です。
ストーンウォール以前のニューヨークで(つまり、ゲイであることが公になれば、社会的死を意味します)、ホルストンは(「ストーンウォール・イン」と並ぶニューヨークの老舗ゲイバーである)「ジュリアス」に行き、エドという黒人の青年に出会います。「ジュリアス」はスーツを着た白人でお金持ちのゲイしか来ないようなお店でしたが(有色人種やドラァグクイーンなどは「ストーンウォール・イン」に行っていました)、その中に堂々と座っているエドに惹かれたのです。二人の会話もウィットに富んでて面白いです。素敵な出会いだなぁと思います。
このドラマは『glee/グリー』『POSE/ポーズ』『ザ・プロム』のライアン・マーフィが製作総指揮手がけていて、『ハリウッド』で若き日のロック・ハドソンのセクシュアリティに光を当てたように、アメリカをテーマにMETガラが開催されたことで再び注目を集めたりもしている伝説的なファッション・デザイナー、ホルストンの生涯を、ゲイの観点から描き直そうとするものだと思います。そうすることで、おそらく晩年にはボロボロになったホルストンを世間の見方とは異なる観点で捉え直し、名誉回復を図るという意図もあるでしょうし、彼のゲイとしての感性がどのようにそのファッションやパーティライフに影響していたかということも描かれていると思います(まだ第1話しか観ていないのでわかりませんが、たぶん)
ちなみに監督を務めるダニエル・ミナハンもゲイの方です。
ユアン・マクレガーはこのホルストンの役で見事にエミー賞主演男優賞を獲得しました。
映画『フィリップ、きみを愛してる!』では、主人公スティーヴンが獄中で恋するオトメ系ゲイ、フィリップ・モリスを可憐に演じ、『トレイン・スポッティング』や『スターウォーズ』からは想像できない演技を見せたユアンが、今回はどのようなタイプのゲイを演じるのか、というのが一つの見所だと思います。
『HALSTON/ホルストン』全5話
2021年/米国/製作総指揮:ライアン・マーフィ/監督:ダニエル・ミナハン/出演:ユアン・マクレガー、クリスタ・ロドリゲス、レベッカ・ダヤン、ジャン・フランコ・ロドリゲスほか
Netflixで配信中
INDEX
- かけがえのない命、かけがえのない愛――映画『スーパーノヴァ』
- プライド月間にふさわしい観劇体験をぜひ――劇団フライングステージ『PINK ピンク』『お茶と同情』
- 同性と結婚するパパが許せない娘や息子の葛藤を描いた傑作ラブコメ映画『泣いたり笑ったり』
- 家族的な愛がホモフォビアの呪縛を解き放っていく様を描いたヒューマンドラマ: 映画『フランクおじさん』
- 古橋悌二さんがゲイであること、HIV+であることをOUTしながら全世界に届けた壮大な「LOVE SONG」のような作品:ダムタイプ『S/N』
- 恋愛・セックス・結婚についての先入観を取り払い、同性どうしの結婚を祝福するオンライン演劇「スーパーフラットライフ」
- 『ゴッズ・オウン・カントリー』の監督が手がけた女性どうしの愛の物語:映画『アンモナイトの目覚め』
- 笑いと感動と夢と魔法が詰まった奇跡のような本当の話『ホモ漫画家、ストリッパーになる』
- ラグビーの名門校でホモフォビアに立ち向かうゲイの姿を描いた感動作:映画『ぼくたちのチーム』
- 笑いあり涙ありのドラァグクイーン映画の名作が誕生! その名は『ステージ・マザー』
- 好きな人に好きって伝えてもいいんだ、この街で生きていってもいいんだ、と思える勇気をくれる珠玉の名作:野原くろ『キミのセナカ』
- 同性婚実現への思いをイタリアらしいラブコメにした映画『天空の結婚式』
- 女性にトランスした父親と息子の涙と歌:映画『ソレ・ミオ ~ 私の太陽』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 女性差別と果敢に闘ったおばあちゃんと、ホモフォビアと闘ったゲイの僕との交流の記録:映画『マダム』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 小さな村のドラァグクイーンvsノンケのラッパー:映画『ビューティー・ボーイズ』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 世界エイズデーシアター『Rights,Light ライツライト』
- 『逃げ恥』新春SPが素晴らしかった!
- 決して同性愛が許されなかった時代に、激しくひたむきに愛し合った高校生たちの愛しくも切ない恋−−台湾が世界に放つゲイ映画『君の心に刻んだ名前』
- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
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