REVIEW
これは傑作! ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』
2023年手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作をドラマ化、絶妙にして最高のキャスティングで、本当に面白いドラマに仕上がっています。美青年と出会って恋に落ちるイケオジが登場します。

『ゆりあ先生の赤い糸』は、2023年手塚治虫文化賞で、頂点の「マンガ大賞」に輝いた入江喜和氏の「ゆりあ先生の赤い糸」(講談社)を原作として、テレ朝がドラマ化したものです。
第1話・第2話ダイジェストの放送を観て、これは傑作だ!と思いましたので、レビューをお届けします。
<あらすじ>
ゆりあの夫・伊沢吾良(ごろう)は小説家で、一発当てた後は鳴かず飛ばずだったが、優しさは天下一品。常に穏やかで平和な空気を漂わせるが、その裏には長年連れ添ったゆりあですら、まったく想像の及ばなかった別の顔があった…。吾良が突然ホテルで昏倒し、意識不明の要介護状態に。その傍らには、泣きながら恋人だと名乗る美青年・稟久(りく)がいた…。




ひさびさに、これは傑作だ!と思いました。ストーリーがまずめちゃくちゃ面白いですし、キャスティングがこれ以上ないと思うくらい、絶妙です。
渋谷のホテルで突然、倒れ、病院に運ばれて、ゆりあが病院に駆けつけると、付き添っていたという若い男がいて。とにかくゆりあは気が動転していたので、挨拶もそこそこに。クモ膜下出血とのことで緊急手術となり、無事に手術が終わったあと、その青年と話し、恋人だと言われ。でも夫に「愛人」がいたということよりも、その相手が男性であることが不可解で。
家族会議の後、ごろうの妹のせいで施設ではなく家で「みんな」で面倒を見ることになって、でも具合が悪くなった義母を病院に連れて行くからと言い出しっぺのごろうの妹に連絡すると、彼氏にフラれたと言って断られ、頼るつてがなくなったゆりあは仕方なく、りくに電話して「今から来い」と呼び出すのです。
これだけでもスゴいのですが、バタバタしている時に「ごろうパパ」を訪ねて2人の女の子が家に来て、女性の愛人がいたことも発覚。さらに、子どもの実の父親も家に乗り込んできて大騒動に…という、泥沼の展開です。
人間関係のドロドロが好きな方にとっては狂喜乱舞なドラマです。
ゆりあは、りくとごろうがどうやって出会ったのか、聞きます。
バー(ゲイバーではなく、一般の、文化系の人が集まるような雰囲気のお店です)で飲んでいた時に、ごろうが「トルーマン・カポーティの映画に主演した俳優、名前なんだっけ?」とマスターに聞き、ちょっと離れた席に座っていたりくが「フィリップ・シーモア・ホフマンですよね」と答え、「そうそう! 君、映画好きなの? ちょっと話そう」とごろうが隣に座って(ちょっと素敵ですね)
りくはもともとゲイだと思うのですが、ごろうもりくに恋をしていることに気づき、迷いは少しあったものの、両思いに。40〜50という歳で初めて、男性にも惹かれるようになったというのは、結構あることですし、違和感はありませんでした。ゆりあの反応にもホモフォビアは感じられず、あっさり受け入れていました(ただ、だからこそ、恋人であるお前にも介護を要求する、という態度になるのです)
そうしてゆりあは、りくと、女性の愛人・みちるを交えて話し合い、オドロキの決断をします。
ただの泥沼では終わらない、とても新しい、ある意味「chosen family」というか、まったく新しい、奇妙な共同生活が始まるのでした。
このドラマをとても面白くしているのは、キャスティングの妙です。
「とてつもない底力を秘めた令和の新ヒロインが、鮮烈な新風を吹き込む」作品と謳われていますが、ゆりあという、一見地味だけど力強い、行動力や決断力がものすごい主婦を菅野美穂さん(『イグアナの娘』『曲げられない女』)が演じています。すごい迫力です。菅野さん以外には考えられません。
ゆりあの夫で、多情的というか人たらしというか、外でいろんな人と関係を持ってしまっている吾良(ごろう)を、今をときめくイケオジ(と勝手に思っている)田中哲司さんが演じています。この人だったらいろんな人に優しくしちゃうし、いろんな人に好かれちゃうよなぁっていう説得力。そりゃあ俺だってこの人と恋したいよ、と思う方、多いはず。
そのごろうを魅了する、小悪魔的と言ってもよいかもしれない、ちょっとビッチな美青年・稟久(りく)を演じているのが鈴鹿央士さん、そして、ごろうの母を演じているのが三田佳子さん(三田佳子さんが出ているというだけで目が釘付けになります)、その他のキャラクターも、役者が揃っているというか、見事にハマっている感があります。ちなみにゆりあの回想シーンに登場する父親は、チョコプラの長田さんが演じています。
本当に面白いので、騙されたと思ってぜひ、ご覧ください。
TVerで全話ご覧いただけます。
ゆりあ先生の赤い糸
テレ朝
毎週木曜21時〜 放送
10月19日(木)スタート
TVerで配信中
INDEX
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
- 絶望の淵に立たされた同性愛者たちを何とか救おうと奮闘する支援者たちの姿に胸が熱くなる映画『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』
- スピルバーグ監督が世紀の名作をリメイク、新たにトランスジェンダーのキャラクターも加わったミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』
- 同性愛者を含む4人の女性たちの恋愛やセックスを描いたドラマ『30までにとうるさくて』
- イケメンアメフト選手のゲイライフを応援する番組『コルトン・アンダーウッドのカミングアウト』
- 結婚もできない、子どももできないなかで、それでも愛を貫こうとする二人の姿を描いたクィアムービー『フタリノセカイ』
- 家族のあたたかさのおかげで過去に引き裂かれた二人が国境を越えて再会し、再生する様を描いた叙情的な作品――映画『ユンヒへ』
- 70年代のゲイクラブ放火事件に基づき、イマの若いゲイと過去のゲイたちとの愛や友情を描いた名作ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』
- 何食べにオマージュを捧げつつ、よりゲイのリアルを追求した素敵な漫画『ふたりでおかしな休日を』
- ゲイの青年がベトナムに帰郷し、多様な人々と出会いながら自身のルーツを探るロードムービー『MONSOON モンスーン』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』
- ホモソーシャルとホモセクシュアル、同性愛嫌悪、女性嫌悪が複雑に絡み合った衝撃的な映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 世紀の傑作『RENT』を生んだジョナサン・ラーソンへの愛と喝采――映画『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
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- 人種や性の多様性への配慮が際立つSATC続編『AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章』
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