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ゲイ旅コラム:WORLD PRIDE NYC(8)ニューヨークの旅を振り返って
街中がレインボーカラーに彩られ、世界中から集まった400万人がストーンウォール50周年を祝った2019年のWORLD PRIDE in ニューヨークを体験する旅。最後に、1週間のニューヨーク滞在を振り返って、ワールドプライドの体験から感じたことや学んだことを、お伝えしたいと思います。
ストーンウォール50周年を記念して初めてワールド・プライド(世界的なLGBTの祭典)として開催されたニューヨーク・プライド。この機会を逃すときっと後悔する、行くなら今だ!という思いで、半年以上前から準備をして、約1週間ほどニューヨークに行って来ました。最後に、1週間のニューヨーク滞在を振り返って、ワールドプライドの体験から感じたことや学んだこと、それから、ゲイシーンについてのまとめ、ニューヨークの街について、など、お伝えしたいと思います。(後藤純一)
憧れのプレミアムエコノミーで帰国
朝8時に起きて、ホテルをチェックアウトし、地下鉄Eラインに乗って、エアトレイン(空港行き専用の高架鉄道)に乗り換えてJFK空港に向かおうと思ってたのですが、乗り換え駅であるサットフィン・ブールバード-アーチャー・アベニュー駅を過ぎて終点のジャマイカセンター駅まで行ってしまい、引き返すという、凡ミスをしてしまいました…。その後は乗り換えもスムーズにできました(この乗り換えの煩わしさや、地下鉄の駅で荷物を持って階段を登り降りする手間はありますが、たったの8ドルで1時間もかからずに着くので、渋滞するマンハッタンからヘタにタクシーに乗るより、このルートのほうが断然イイと思いました)
エアトレインは、JFK空港内に入るとターミナル1から8までをループするようになっているのですが、JALはターミナル1にあるので、すぐ着いてラッキーでした。
さっそくJALの搭乗カウンターに向かうと、なんと、プレミアムエコノミーに無料でアップグレードしてもらえるというではありませんか! しかも、非常口横の、前に人がいない席です。ぱあああっと花が咲いたような、天にも昇るような気持ちでした。それもこれも僕の日頃の行いが良いからですね(ちがう)。たぶんプレミアムエコノミーは空いてる一方、通常のエコノミーはキャンセル待ちになっていて、マイルの特典航空券で乗る人にプレミアムをあげちゃって空いたエコノミーにキャンセル待ちの人を乗せたほうがいい、という判断だったのでしょう(非常口前の席になったのは、他の人より体格がよく見えたからでしょうか…? よくわかりませんが)。それにしてもラッキーでした。
ターミナル1は、上の階にフードコートがあって、タコスとか3ドルくらいで食べれて、いい感じでした。
手荷物検査と出国審査はとてもスムーズで(アメリカは、入る時は厳しくチェックしますが、出る時はゆるいです)、さっさと搭乗ゲートに行けました。
いざ搭乗。憧れのプレミアムエコノミー。スリッパのほか、アイマスク、歯ブラシ、耳栓、モイスチャーマスクが入った特製バッグがプレゼントされます。ちょっと丸みを帯びてゆったりしたシート。しかも、前に人がいない、足がいくらでも伸ばせる、この上なく楽な場所です。そして、担当のCAの方が挨拶に来てくれました。せっかくなので、エコノミーにはない、シャンパンのサービスを受けることに(シャンパンあまり得意じゃないけど)。リッチな気分。
機内食はエコノミーと同じメニューですが、十分美味しかったですし、ハーゲンダッツのアイスもサービスしてくれましたし、ホントよかったです。
帰りは『ダンボ』とか『ヒックとドラゴン3』(ついに完結。ちょっと『ナウシカ』を彷彿させる部分がありました。とてもよかったです)とか『翔んで埼玉』とか4本ほど映画を観ました。
ふとした瞬間に、1週間のニューヨーク滞在のいろいろを思い出し(特に、前夜の『プロム』の余韻が新鮮に残っていて)、しみじみと「よかったなぁ」と思い、感傷的な気持ちになりました(うっかり涙が…)
14時間のフライトもそんなに苦痛ではありませんでした。
ストーンウォール50周年のワールドプライドを体験して
こんなに街中レインボーになることってある?というのが、まず驚きでした。
世界的に有名なニューヨークのシンボルともなっている場所(エンパイアステートビルだのマジソンスクエアガーデンだの)がこぞってレインボーカラーに輝いたり、レインボーフラッグを掲げたりしています。道を歩けば、銀行だろうがカフェだろうが、いたるところレインボーフラッグだらけです(祝日に日章旗を掲げるような感じで)。東京では考えられないことです。
どこまでが例年通りのニューヨーク・プライドでどこまでがストーンウォール50周年スペシャルなのかはよくわかりませんが、おそらく、WORLD PRIDE NYCのバナーがたくさん街頭に掲げられていたり、タクシーの中で流してる動画でWORLD PRIDEを宣伝してたり(プロモーションがスゴい)というのは、今年ならではだったのでしょう。それでなくても、プライド月間というものが(オバマさんが祝辞を述べるくらい)半ば国民的行事になっているんだろうな、と思わせました。
ここまで来るには、それこそストーンウォール暴動から始まって、50年の闘いの積み重ねがあったんですよね。それでもまだトランスジェンダーへの暴力はひどいし、LGBT差別禁止法(連邦法)はまだ成立してないし、家を追い出されてホームレス化するユース、移民、高齢者のLGBTなど、いろんな課題があって(オープニングセレモニーでウーピー・ゴールドバーグがそういう話をしてました)、闘いはまだ終わっていないけど、今年は50周年だからみんなでお祝いしよう!っていう、そういう祝福ムードやお祭り感は、街を歩いていても、ビシバシ感じました。
7番街でパレードを観ていてちょっと驚いたのは、政治家(もちろん民主党)とかLGBT団体とかに対する沿道の人たちのすさまじい応援っぷりです。沿道の人たち自身も、下手したらパレードを歩いてる人とかよりもよっぽどレインボーな格好だったりするのですが、そういう人たちが、LGBTのために頑張ってる人たちに惜しみない拍手を贈り、熱狂的に声援を送る様に、日本との温度差を強く感じました。「プライド」パレードってこういうことか!と、肌身で感じた気がしました。
日本ではプライドが根づいていないという声を耳にすることがありますが、それがどういうことを言ってるのか、感覚としてわかった気がしました。
ストーンウォールへのリスペクトもスゴいと思いました。「ストーンウォール・イン」にはマドンナもレディ・ガガもテイラー・スウィフトもサプライズで登場しています。オープニングセレモニーや公式ライブイベントなどにあれだけの豪華キャストが出演し、パレードにもヴァネッサ・ウィリアムズやいろんな方たちが参加していて、そうやって盛り上げてくれた方々のおかげもあって、世界中から予想を超える400万人もの人たちがニューヨークに駆けつけて(五輪や万博だってそんなにたくさん集まらないですよね)、LGBTもアライも一緒に、盛大にストーンウォール50周年をお祝いしてたわけです。LGBTの歴史の中でもスゴいこと、未曾有のイベントだったんじゃないかと思います。
この時期に「CAMP展」という素晴らしい展示を企画してくれたメトロポリタン美術館にも拍手!でしたし、ブロードウェイで『プロム』という素晴らしいミュージカルをプレゼントしてくれた方たちも最高!でしたし、カーネギーホールでのゲイメンズコーラスのコンサートでオネエ全開で演技してた方たちにも「愛してる」って言いたいです。すべてが素敵で、セレブレーションに満ちていて、一生に一度のかけがえのない体験でした。
ニューヨークのゲイシーン
ゲイシーンは今回、あまりたくさんは見れていなくて、実体験としてレポートできる部分はあまりないのですが、今後ニューヨークに行ってみたいと思う方のために、一般的な情報をお伝えします。
ゲイバーやクラブは、昔はクリストファー・ストリートをメインストリートとするグリニッジ・ビレッジ(ビレッジ・ピープルの由来)が中心だったのですが、その後、チェルシーにお店がたくさんでき、現在は、こちらのマップを見るとよくわかるのですが、ヘルズキッチンが最もたくさんのバー&クラブが密集する地域になっています。ミッドタウンやイーストビレッジ、ブルックリンやクイーンズにもあります。バーのタイプも本当にいろいろあって、「ストーンウォール・イン」のような「メッカ」と化したお店、ダイニングバー、クラブとして楽しめるお店、ドラァグクィーンのショーが楽しめるお店、ライブバー、スポーツバー、クルージングバーなど、多種多様です。
クラブパーティも、もちろんニューヨークは本場なので(ゲイクラブパーティの発祥の地ですし、伝説の「54」や「Paradise Garage」があったわけですから)、いわゆるサーキット系のメガパーティもあれば、もっと小さなハコでのいろんなパーティ、フェティッシュ系やハッテン系のパーティ、(ドラマ『POSE』のように)ヴォーグやファッションを競うドラァグ・ボールなど、実に多彩なパーティが盛り上がりを見せています。
ゲイショップもいろいろあります。「THE LEATHER MAN」「NASTY PIG」辺りが有名です。アメリカのショップでしか買えないアイテムも結構あるので、実際に手に取って見て選べるのは、いいと思います。
ちょっと毛色は違いますが、ゲイの方が始めたアイスクリーム屋として知られる「Big Gay Ice Cream」のお店も、とても美味しいと評判です。「ストーンウォール・イン」のすぐ近くにありますので、もし行かれた際はぜひ。
ゲイ向けの男性ストリップもあるそうです(場所が変わるので、サイトでチェックしてくださいとのことです)
一方で、残念な部分もあって、それは、あれだけ大きな街で、あれだけゲイシーンが巨大なのに、ハッテンできる場所が少ないという問題です。70年代は、ベット・ミドラーが「コンチネンタル・バス」というゲイサウナでライブデビューした(その時ピアノ伴奏をしていたのがバリー・マニロウ)という話が語り草になっているほど活気があったのに、80年代のエイズの流行に伴い、ニューヨーク市当局が強制的にゲイサウナを閉鎖してしまいました(なんたる愚策…)。そのため、最近ようやくゲイサウナが2軒復活したのですが、あまり盛り上がっていないようです。では、ニューヨーカーはどこでハッテンするかというと、「THE COCK」のようなクルージング・バーに行くか、どこかの場所を借りて開催される会員制のクローズドなハッテンイベントに参加するというのが主流なんだそうです(こちらやこちらの記事をご参照ください。どちらのサイトも、クルージングスポットやイベントの情報も掲載されています)。なお、複数の方(ニューヨーク在住の方や行ったことがある方)が話していたので事実だと思いますが、クルージングもできるレザー・バーとして知られる「EAGLE NYC」は現在、ハッテン禁止となっていて(店員に怒られるそうです)、真のレザー愛好家にも評判が悪い上に、アジア人に優しくないという話もあり、いろいろダメみたいです…。
なお、これはアメリカ全体に言えることですが、ゲイのモテ筋のタイプとしては、「FIT」と呼ばれるジムで鍛えて体が締まってる筋肉質なイケメンたちが断然メインストリーム、歴然と格上です。日本だとガチムチ系やクマ系はモテ筋のジャンルの1つですが、アメリカではお腹が出てるような人(私のことですね)は非常に肩身の狭い思いをします(だからこそ「ベア・プライド」があるのです)
ニューヨークの街の魅力
最後に、ゲイのこととは切り離して、ニューヨークの街の魅力についてお話したいと思います。
「メトロポリス」と呼ばれるくらいの大都会なので、現代的な建物が並ぶ街かと思ったら、まるでヨーロッパのようにクラシックな建物が多く、今まで行ったアメリカの他のどの都市(シカゴやロサンゼルス、サンディエゴ)よりも美しく、素敵でした。それでいて、地下鉄が発達してるので(しかも24時間運行)、移動するのも楽で、観光しやすかったです。
メトロポリタン美術館で感じたのは「ここには世界の富(宝)が集まっている」ということでした(同時に、ホイットニー美術館では、若手のアーティストを大切にしてるんだなぁと、日本よりも全然アートがリスペクトされてるし、表現が自由だと感じました)。映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』のレビューにも書きましたが、アッパーイーストサイドに住んで、セントラルパークにジョギングしに行ったり、五番街で買い物したり、メトロポリタン歌劇場やカーネギーホールやブロードウェイでオペラやコンサートやミュージカルを楽しみ、たまには『カフェ・カーライル』でジャズを聴いたり…という暮らしほど贅沢なものはないでしょうね。お金さえあれば、こんなに楽しく、豊かに過ごせる街はないだろう、芸術・文化を愛する方にとってニューヨークほど魅力的な街はないだろうと確信します(そこまでリッチでなくても、アッパーイーストサイドでなくても、ニューヨークに暮らせるだけでも素敵なことです。ロングアイランドでもニュージャージーでもいいから1年くらい住んでみたいです)
一方で、こういうことも感じました。ニューヨークは「人種のるつぼ」とか「サラダボウル」だと言われますが、まだまだ東洋人の影が薄い(存在感がない)ということです(街を歩いてても、バーでもどこでも、ほとんど見かけないです)。夜中に14thストリート近くの地元系のレストランに入ったとき、お客さんに珍しそうにジロジロ見られたのは、なんだかなぁという感じでした。日本人に優しい人もたまにいますが、特に歓迎されない、空気のような存在だと思ったほうがよいと思います。
海外から日本に帰ってきて毎回思うのは、日本はトイレもたくさんあるし(しかもウォシュレットだし)、便利さや快適さという点では本当に進んでるし、ご飯も安くて美味しいし、夢のような国だということです(逆に言うと、ニューヨークはとにかくトイレに不自由するし、目玉が飛び出るほど物価が高いし、お金がないと苦労します)
でも、それでも、ニューヨークにはまたいつか、行ってみたいです。PRIDEシーズンでもいいし、そうでない時でもいいし。MOMAも、メトロポリタン歌劇場にもまだ行っていませんし、ミュージカルももっとたくさん観たいし、ゲイリゾートのファイア・アイランドにも、FOLSOM STREET EAST(レザー&フェティッシュイベント)にも、クラブイベントにもいろいろ行ってみたいです。グラウンドゼロ「メモリアルプラザ」にも参拝したかったです(ワンワールドトレードセンターは遠くから見えました)
次があるかどうか、わかりませんが、きっとその日が来ると信じます。
謝辞
本当の最後に、(はたして全部読んでくださってる方がいらっしゃるのだろうか…と不安になりつつ)こんなに長々とした旅行記を読んでくださったみなさんにお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。
それから、元パートナーをはじめ、ニューヨークについていろいろ教えてくださったみなさんにも感謝申し上げます。ありがとうございました。
INDEX
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- ゲイ旅コラム:知られざるゲイの聖地・シカゴ(2)遊ぶにも住むにも最適なゲイタウン
- ゲイ旅コラム:知られざるゲイの聖地・シカゴ(1)ビッグなストリート・フェス
- ゲイ旅コラム:「世界最高峰のゲイリゾート」バルセロナ(3)シッチェス
- ゲイ旅コラム:「世界最高峰のゲイリゾート」バルセロナ(2)街の魅力
- ゲイ旅コラム:「世界最高峰のゲイリゾート」バルセロナ(1)バルセロナプライド
- 夏を先取り! ジャルパックで行く沖縄ビーチパーティ
- ゲイ旅コラム:「住みたくなる街No.1」メルボルンの魅力
- ゲイ旅コラム:「天国にいちばん近い国」トルコ
- トロントプライドツアーで一生の思い出となるスペシャルな体験を!
- 東北初のゲイスキーツアー開催! GRANDECO GAY SKI&SNORBOARD EVENT/TOUR
- レポート:TAIWAN LGBT Parade Tour
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- 「至高のゲイ体験」Atlantisクルーズ(7)涙と感動のラストダンス
- 「至高のゲイ体験」Atlantisクルーズ(6)ベリンダ・カーライルと美しいフィナーレ
- 「至高のゲイ体験」Atlantisクルーズ(5)クルーズのクライマックスとも言うべき濃厚な1日
- 「至高のゲイ体験」Atlantisクルーズ(4)泣けるほどハッピーなパーティと「ゲイのワンダーランド」
- 「至高のゲイ体験」Atlantisクルーズ(3)天国のようなビーチとキラキラな夜
- 「至高のゲイ体験」Atlantisクルーズ(2)青空の下のパーティとフィギュア
- 「至高のゲイ体験」Atlantisクルーズ(1)いざ、洋上の豪華ホテルへ!
SCHEDULE
- 09.20PINKHOUSE X vol.157 -25th ANNIVERSARY PARTY-
- 09.21DAYDREAM
- 09.21ジューシィー!
- 09.21デブも専ナイト -15th Anniversary-
- 09.21前髪系ナイト in OSAKA