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ビデオ特集:Khalid(カリード)

ゲイであることをカムアウトしたKhalid(カリード)の楽曲のミュージックビデオをまとめてご紹介します

ビデオ特集:Khalid(カリード)

(「Satellite」のMVより)

 カリードは1998年、ジョージア州出まれ。テキサス州で育ち、弱冠18歳のとき(2016年)リリースしたデビューシングル「Location」がロングヒットを記録し、2017年にMTV Video Music Awardsで最優秀新人賞を受賞、2018年1月の第60回グラミー賞では最優秀新人賞を含む5部門にノミネートされました。2019年には『TIME』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれています。天才R&Bアーティストと称されています。そんなカリードのシングル曲やコラボ曲などを振り返りながら、ゲイとしてのテイストや優しさや人間性に迫ってみたいと思います。  
 
 まず、セカンドシングルで、アメリカン・ティーンへの讃歌として歌った「Young Dumb & Broke」(お金もなくてバカなことばかりしてる若者という意味)をご紹介。レイドバックで心地よいR&Bサウンドに乗せてハイスクールを舞台にいろんな高校生たちがふざけたり笑ったりしている様子を映し出したMVは実に9.9億回も再生されています。スクールカーストという言葉から最も遠い、人種的にも多様な、ちょっと『glee/グリー』を彷彿させるようなMVです。ちなみにこの「Young Dumb & Broke」をはじめとした大ヒット曲を収録したデビューアルバム『アメリカン・ティーン』を引っさげた初ツアーの際は、ファンの中からダンサーを公募し、若者たちにチャンスの場を与えたそうです。

 ロジックの「1-800-273-8255 ft. Alessia Cara, Khalid」は、アメリカの自殺防止ホットラインの電話番号をそのままタイトルにした曲で、親にゲイであることがバレてしまった黒人の高校生のストーリーを描いた短編映画のようなMVで話題を呼び、第60回グラミー賞授賞式で最優秀楽曲賞と最優秀ミュージックビデオ賞にノミネートされました。
 そのロジックのMTV Video and Music Awardsでのパフォーマンスは、自殺未遂を図ったことがある方や、自殺で家族や友人を失った方たちが、1-800-273-8255という自殺防止ホットラインの番号が書かれたTシャツを着て登場。カメラが背後に回ると、背中には「あなたはひとりじゃない」というメッセージが…。なかには、感極まって泣きじゃくる方などもいて…。カリードも途中から登場し、思いを込めて熱唱しています。最後にロジックは、思いのたけをぶつけるようなスペシャルなラップを披露します。「メンタルヘルス、不安、自殺、鬱とか、このアルバムで俺が語ったこと。それはレイシズム(人種差別)、排除、セクシズム(性差別)、DV、性的暴行なんかによるもの」「君が黒人でも白人でも何人でも、俺は構わない、クリスチャンでもムスリムでも、ゲイでもストレートでも。俺は君の平等のために闘う、だって生まれた時はみんな同じなのに扱われ方が違うから。俺たちは闘わなきゃならない、人種や宗教や肌の色や信条や性的指向にかかわらず、すべての人の平等のために」。号泣必至のパフォーマンスです。


 ショーン・メンデスとのコラボ曲「Youth ft. Khalid」は、やはりアメリカン・ティーンへの讃歌なのですが、MVは銃規制運動でスピーチする若者の映像から始まり(エマ・ゴンザレスの姿もあります)、ショーン・メンデスとカリードがNYの街で歌い、歌が終わった後も約3分にわたって銃撃事件のサバイバーや、障害を持ったレスラーや、プラスサイズのバレリーナや、ドラァグクイーンや、ジェンダー・フルイドのアーティストや、体操の世界チャンピオンやダンサーや俳優や活動家など、様々なティーンの姿を映し出すという、胸が打たれる映像になっています。不滅のクィア・アンセムであるクリスティーナ・アギレラの「Beautiful」と同じスピリットを感じさせます。パレードなどでもっとこの曲が使われたらいいんじゃないかな、と思います。



 カリードのカミングアウトに対して彼の「Satellite」のMVを引き合いに出し、「2022年に彼はLGBTQのアンセムを作ってくれたのに、みんなが寝ぼけてただけ」とコメントした方がいました。「Satellite」は「僕らは1本の線の上を歩いてる。それは僕を真っ直ぐに(ストレートに)君へと導く線」「彼らは君が何をやり過ごしてきたかなんて知らないよね」「僕は君が闇へと漂っていくのを見ている」といった歌詞のポップな曲で、男女のダンサー(男性はたぶんゲイだと思います)と一緒にカリードも軽快なダンスを披露する素敵なMVになっています。



「Skyline」のMVではカリードもダンサーもピンクと水色のスーツを着てダンスしているのですが(男性がピンクを着たり、女性が水色を着たり。カリードは半々です)、これはトランスジェンダーへのサポートの表明なのでは?と思うのは、うがった見方でしょうか。(ちなみに同時期の「Last Call」のMVでもピンクのニットベストを着ています)


「Present」のMVとかもファッション誌の広告なんじゃないかと思うくらいオシャレですが、カリードのファッションは一貫してセンスがよく、ショートパンツとか、ちょっとカワイイ感じだったり、明るめな色遣いだったり、振り返ってみるとゲイテイストだなぁと感じます。
 そして、フロントロウの「カリード、21歳のR&B男子が「歌声」と「人柄」でアメリカの心を溶かしている」を読むと、彼の人柄のよさや、年末にはプレゼントを買って地元の子どもたちに配って回ったり、教育支援団体を設立して奨学金を寄付したり、社会貢献をしていること、ラブソングの歌詞にも性別を特定する代名詞をあまり使っていないことなどがわかりますが、そうしたことのすべてが、ゲイらしさとして納得がいきます。
 一気に身近な人として感じられるようになったカリード。これからもウォッチしながら応援していきたいと思います。

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