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Madonna "Dark Ballet"

マドンナの新曲「ダーク・バレエ」のMVが発表されました。HIV陽性のクィア・アーティスト、ミッキー・ブランコを主演に起用し、火あぶりにされたジャンヌ・ダルクの物語をモチーフにした、この現代において凄まじくアクチュアルな意義をもつ、掛け値無しに素晴らしい傑作です。

Madonna

 5月にはストーンウォール50周年にオマージュを捧げる新曲「I Rise」を発表したマドンナですが、6月7日、ニュー・アルバム『マダムX』からの最後の先行トラックとなる「ダーク・バレエ」をリリースすると同時にスゴいMVを公開しました。
 
 ミルウェイズがプロデュースを手がけた「ダーク・バレエ」は、ジャンヌ・ダルクのストーリーにインスパイアされた楽曲です。マドンナは次のように語っています。
「イギリス人と戦って勝利したにもかかわらず、フランス人は喜んではいなかった。彼らはそれでも彼女(ジャンヌ・ダルク)を批判した。彼らは彼女のことを男だと言い、レズビアンだと言い張り、魔女だとも言い、そして最後には火刑に処した。それでも彼女は何も恐れなかった。すごいことだと思う」

 そしてこのジャンヌ・ダルクをMVで演じているのが、女性の俳優ではなく、HIV陽性のクィア・ラッパー(ゲイともドラァグクィーンともトランスジェンダーとも称される)、ミッキー・ブランコです。教会の中で閉じ込められ、もがいたり、祈ったり、司祭に毒づいたり命乞いしたりするシーンと、火あぶりにされるシーン、それを黙って見ている黒ずくめの人々などが映し出されます。「私は男の子のような服を着ることもできる。女の子のような服を着ることもできる。あなたの美しい言葉を失わないで。私には関係のないことだから」といった歌詞も、深いです。『くるみ割り人形』の「葦笛の踊り」が引用された幻覚のようなシーンにも、ハッとさせられます。

 MVは、ミッキー・ブランコによる次のようなメッセージで締めくくられます。
「私はブラック、クィア、HIV陽性者として、この地球を歩いてきた。でも、私に襲いかかったどんな無法よりも、自分の中にある希望ほど力強いものはない」

 単にジャンヌ・ダルクのことを表現しているのではなく、いまこの世界で行われている不条理な「魔女狩り」や「火あぶり」、ある特定の人々を社会の周縁に追いやり、蹂躙するようなすべての暴力に対する告発であるように感じられます。この現代において凄まじくアクチュアルな意義をもつ、掛け値無しに素晴らしい作品だと感じました(シビれました)。60を過ぎてなお、このような傑作を世に送り出すマドンナには尊敬の念を禁じえません…。

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