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サム・スミスがアカデミー歌曲賞を受賞し、「この賞を世界のLGBTコミュニティに捧げる」とスピーチ

2016年03月02日

 2月28日(現地時間)に行われた第88回アカデミー授賞式で、サム・スミスが映画『007 スペクター』の主題歌「Writing's On The Wall」でアカデミー歌曲賞を受賞しました。昨年のグラミー4冠達成に続き、今度はオスカーも獲得し、名声をさらに高めることとなりました。
 サム・スミスは「イアン・マッケランが数ヵ月前にオープンリー・ゲイでオスカーを受賞した人はいないと言っている記事を読みました。もしそうでも、そうでなかったとしてもこの賞を世界のLGBTのコミュニティに捧げます。僕は今夜、ゲイの男性として誇りを持ってここに立っています。いつの日かみんな全員が、お互いに平等な立場で一緒に立てるといいと思います」とスピーチしました。

 弱冠23歳の青年がアカデミー授賞式でこんなスピーチをするなんて、とても立派なこと。受賞した自分のことよりも、LGBTコミュニティのために語っています。これを観ていた世界中の10代・20代のゲイたちは(その中には、学校でいじめられたり、家を追い出されたり、自殺未遂を図ったことのある子たちが本当にたくさんいます)、本当に勇気づけられたことでしょう。素晴らしいですよね。
 しかし、このスピーチは、多くの人やメディアから批判を受けることになりました。
 2009年に映画「ミルク」でアカデミー賞脚本賞を受賞したダスティン・ランス・ブラックはこのスピーチのあと、自身の受賞時のスピーチの動画をTwitterにアップし、「LGBTの歴史を知ることは大切」とコメントしました。これに対して、サムは「ゲイだということをオープンにしてオスカーを受賞した2番目か、3番目か…100番目かもしれない。でも大切なのはそこではないんだ」「僕が愛するLGBTコミュニティに光を当てたかったっていうのが重要なんだ」「混乱させてしまったことに謝罪します、ダスティン・ランス・ブラック。あなたの映画をチェックするようにします。遅くなりましたが、オスカーおめでとう」とリプライしました。ダスティンはサムへのコメントはジョークだよと、あとでフォローを入れています。また、この騒動に巻き込まれたかたちのイアン・マッケランは「オープンリー・ゲイの俳優がオスカーを獲得したことはないって言ったんだ。でも、だからってサム・スミスの功績が無くなることはないよ。彼とほかの人におめでとう!」とツイートしています。
 
 ちなみにこれまでオスカーを獲得したオープンリーLGBTとしては(以下の受賞者リストを正しく言える人なんてほとんどいないと思いますが)、ダスティン・ランス・ブラック(脚本賞)のほか、アラン・ボール(脚本賞)、ビル・コンドン(脚色賞)、ペドロ・アルモドバル(外国語映画賞)、スティーブン・ソンドハイム(歌曲賞)、メリッサ・エスリッジ(歌曲賞)、エルトン・ジョン(歌曲賞)らがいるそうです。

 実は、オープンリー・ゲイの俳優としても(英語で言うゲイはレズビアンを含めることが多いので、そういう意味では)、リンダ・ハントが1982年の『危険な年』でアカデミー助演女優賞を受賞しているそうです。受賞当時カミングアウトしていなかった人たちも含めると、ジョディ・フォスターが主演女優賞、ジョエル・グレイ、ジョン・ギールグッドが助演男優賞を受賞しています(詳しくはこちら
 

 一方、サム・スミスとともにアカデミー歌曲賞にノミネートされていたレディ・ガガは、自身のスタイリスト、ブランドン・マクスウェルが手がけたジャンプスーツとロングドレスが一体化したような白いドレスを纏い、婚約者のテイラー・キニーと共にレッドカーペットに登場。そして、授賞式では、アメリカの大学で起きたレイプ事件を題材にしたドキュメンタリー映画『ザ・ハンティング・グラウンド(原題)』のために書き下ろした曲「Til It Happens to You」をピアノの弾き語りで披露しました。パフォーマンスの最後には、過去にレイプの被害に遭った方たちがたくさん登場(腕に「SURVIVER」「IT HAPPENS TO ME」といったメッセージが書かれていました)、ガガは(自身も10代の頃にレイプ被害に遭ったと告白していますが)彼らと共に腕をあげて熱唱し、歌い終わると彼らにハグし、感動を誘いました。ケイト・ウィンスレットやレイチェル・マクアダムス、ブリー・ラーソン(主演女優賞を獲得)らが感極まって立ち上がり、惜しみない拍手を贈ったそうです。(ガガのパフォーマンス映像はこちら

 それから、サム・スミスやレディ・ガガとともに歌曲賞にノミネートされていたアントニー・ヘガティ(アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのアントニー・ヘガティによる新プロジェクト「アノーニ」名義)は、トランスジェンダーとしては1972年のアンジェラ・モーリー以来、2人目のノミネートとなりましたが、今回授賞式でのパフォーマンスに招かれなくなったため、授賞式への参加そのものを取りやめたと語っています(詳しくはこちら

 ほかに今回のアカデミー賞でLGBTに関する話題といえば、『リリーのすべて』のアリシア・ヴィカンダーが助演女優賞を受賞したことが挙げられます。女優賞を期待された『キャロル』のケイト・ブランシェットとルーニー・マーラは、オスカーを逃しました(たいへん残念です)
 それから、去年亡くなった映画人を追悼するコーナーでは、アンディ・ウォーホールのミューズであり、ドラァグクィーン女優のさきがけであるドラァグクィーンのホリー・ウッドローンが紹介されていました(しかし、他の俳優がすべてセリフ付きの映像で紹介されていたのに、インド人俳優のサイード・ジャフリーとトランスジェンダーのホリー・ウッドローンだけが静止画だったそうです)
 
 

サム・スミス、アカデミー賞でのスピーチを謝罪(ハリウッドニュース)
http://www.hollywood-news.jp/news/%E6%B5%B7%E5%A4%96%E3%82%B4%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97/%E3%82%B5%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%80%81%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%BC%E8%B3%9E%E5%8F%97%E8%B3%9E%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81%E3%82%92%E8%AC%9D.html
 
「あなたの責任じゃない」レディ・ガガ、アカデミー賞で感動のパフォーマンス(動画)(T-SITEニュース)
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/28/88-academy-lady-gaga_n_9345336.html

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