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LGBTと企業(3) 着実に企業のLGBT施策が進んだ2018年

「企業×LGBT」について、「work with Pride 2018」のレポートをお届けしながら、2018年はどのような年だったのかを振り返ります。

LGBTと企業(3) 着実に企業のLGBT施策が進んだ2018年

LGBTと企業(1) 企業がLGBTフレンドリー(アライ)化していく意味」では、2016年に開催されたいくつかのLGBT関連のセミナーや講演会をレポートしながら、多くの企業がLGBTフレンドリー(アライ)な方向へ舵を切っている、そのリアリティについてお伝えしました。昨年の「LGBTと企業(2) 2017年、企業のアライ化はどのように進んだか」では、五輪組織委員会や経団連など各方面から次々に企業に対して「お達し」が出た、企業にとってLGBT施策は必須というムードになったことをお伝えしました。2018年はどうだったのか、今年の「work with Pride セミナー」のレポートと合わせて、書いてみたいと思います。

 


「work with Pride 2018」レポート


 今年もカミングアウト・デー※にあたる10月11日、「work with Pride 2018」がミッドタウン日比谷で開催されました。企業の人事・CSR・ダイバーシティ関連の部署の方々などが多数、参加していました。
 
※National Coming Out Day:1987年10月11日にワシントンD.C.でゲイ&レズビアンのワシントンマーチが行われ、多くの団体が生まれたことを記念し、1988年にアメリカの心理学者やLGBT活動家らによって制定されました。以降、世界各地のLGBTコミュニティで祝典などが行われています。
 最初に、『東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例』の成立を見た東京都の小池知事からのメッセージが読み上げられました。
 そして、今年の「時の人」であるロバート・キャンベルさんからのビデオメッセージが上映されました。「セクシュアルマイノリティの人々は、一言では言えない、それぞれの個性がありますが、子どもの頃から世間の厳しい抑圧に直面し、耐えたり、順応したりしてきました。そうしたなかで、ひとくくりでは言えませんが、機敏に、空気を読むことに長けてコミュニケーション能力が高い方もいます。企業から見れば、有望な人材でしょうが、そうした人材が流出しないようにする、リテンションですね、快く働ける環境をつくることが大事なのではないでしょうか。組織の風土づくり、人材を豊かに育て、一人ひとりが100%力を発揮できるようにしていくことで、日本社会の経済に貢献し、花が咲けるようになると思います」といった、素敵なメッセージでした。
 続いて、もう一人、今年カミングアウトして話題になった勝間和代さんご本人が登壇し、ご挨拶してくださいました。「最初にBuzzfeedで、ちょっと話題になれば、と思ってお話したのですが、全メディア、全てのワイドショーで取り上げられました。こんなにもカムアウトする人が少ないのか、と思いました。偏見がある人というのは、誰もLGBTの知り合いがいないとか、自分たちとは違うグループの人だよね、とか、自分たちの方が優越してるよね、という態度がある、そういう特徴があると思います。LGBTの中には、実は私もそうでした、とメールをくれた人もいましたが、なかなか公にできない、そっとしておいてほしいという人も多い。これは一種の学習性無力感のようなものではないかと思います。私は10代から自分のセクシュアリティに気づいていましたが、打ち明けてもいい思いをしませんでした。周囲の配慮があるとわかっていれば、もっと言えるようになります。誰もがマイノリティ性を抱えていますよね、高齢だったり、病気や障害の可能性もある、そういうことを開示して、パフォーマンスを発揮できるようになり、強い職場にしていくこと。私はもともと女性差別に対する研究や職場での対応をしてきましたが、正しく女性活躍を推進できた企業は、全世界的に見ても業績がいいし、さまざまな多様性にも対応できています。誰もがマイノリティ性を持っていますが、それを公開した瞬間に攻撃されてしまうと、マジョリティの偽装をするようになってしまう、さらにみんなが言えなくなって、マジョリティの偽装をするという悪循環が生まれます。これを断ち切って、偽装しなくてもいい職場をみなさまと一緒に作り上げていきたいと思います」

 続いて、経営者によるパネル・ディスカッションが行われました。シスコシステムズ、NTT、野村ホールディングス、それから東京2020組織委員会の方が登壇し、2020年に向けて、企業としてどのように施策を進めていくべきなのか、それぞれの方のこれまでの取組みなども紹介しながら、話し合われました。

 当事者が参加するパネル・ディスカッションでは、EY、電通イースリー(『総務部長はトランスジェンダー』の著者の岡部さん)、早稲田大学GSセンター、パナソニック、SONYにお勤めの当事者の方々が登壇し、「様々なギャップを越えて」というテーマで話し合われました。

 最後に、「PRIDE指標」の表彰式が行われました。今年は153の企業・団体から応募があり、130社がゴールドを受賞。シルバーやブロンズも合わせ、たぶん150社近い企業の方々がステージに上がり…きれないくらいでしたが、表彰を受けていました。「PRIDE指標」を運営するグッド・エイジング・エールズの代表、松中権さんがご挨拶し、「例えば長年、一緒に暮らしているゲイカップルがいて、カミングアウトできない状況だと、転勤があれば、離れ離れになってしまうということも起きています。みなさんの、LGBTのことへの取組みは、職場にいるLGBTの方の人生に大きく関わるということなのです。東京都は2020東京大会に向けて、LGBT差別禁止を盛り込んだ人権尊重条例を成立させました。PRIDE指標も2020年に向けて、前向きにバージョンアップしていきますので、みなさん、ぜひご協力をお願いします」と語りました。

 30分のブレイクを挟み、「組織内の風土づくり(アライ、当事者ネットワーク)」「全国・地方への取り組み展開」「同性パートナーシップ制度」「トランスジェンダーへの配慮」という4つのサブセッションも行われました。


 

着実に進んでいる社内LGBT施策


 2018年の「PRIDE指標」は、申し込み数も満点を獲得した企業も過去最高になりました。初めて策定・実施された2016年からの推移を見てみると、
2016年:初回にして80社以上の企業・団体から応募があり、53社が最高点のゴールドを受賞
2017年:109社から応募があり、84社がゴールドを受賞
2018年:153社から応募があり、130社がゴールドを受賞
となります。初回の2016年から2017年にかけて30社ほど増えていますが、昨年から今年にかけては、46社増えています。

 また、東洋経済「CSR調査」の中の「LGBTに対する基本方針(権利の尊重や差別の禁止など)の有無」という項目について、「あり」(LGBTの権利を尊重している、LGBT差別を禁止している)と回答した企業の数を見てみると、2014年版(初回。2013年末に発表)114社→2015年版146社→2016年版173社→2017年版207社→2018年版285社→2019年版(今年)330社というふうに増えていて、一昨年から昨年が78社増、昨年から今年が45社増と急激に増えていることがわかります。

 もうLGBT施策をやれそうな企業は全部やり尽くした、と頭打ち状態になるのではなく、新たに取り組むようになった企業が右肩上がりに増えているということです。
「LGBTブームは終わった」などと言われることもありますが、これは一過性のブームなどではなく、企業の方々が「なぜLGBTを支援しなければいけないのか」をきちんと理解し、行動してくださった(アライ企業になってくださった)ことの表れだと言えるでしょう。昨年、五輪組織委員会や経団連など各方面から次々に企業に対して「お達し」が出たことも後押ししていると思います。

 ここで、今年LGBT施策でニュースになった企業をピックアップしてお届けします。
 
三井住友信託銀行が、同性カップルも共同で住宅ローンを利用できるように商品内容を改定

NTTが同性も配偶者として認める制度を大幅に拡充、扶養手当や単身赴任手当、育児休暇、介護休暇なども

AIGジャパンがオールブラックス出演のスペシャルムービーでLGBTを支援
 
SUUMOが同性カップルの家探しの実状に迫る調査結果を公表、家探しに苦労したという回答が4割に

今年のTRPに参加したアダストリアが社内LGBT施策を大幅に推進

同性愛を描いた資生堂のWeb動画が国際広告賞のグランプリを受賞

ユニクロが社員の同性パートナーにも結婚休暇や慶弔見舞金の支払い、社宅への入居などを認めます

 もちろん、ここで紹介しなかった(特にニュースとして取り上げられなかった)企業でも、地道に施策を進めてきたところがたくさんありました。東京レインボープライドへも本当にたくさん参加してくださいました(協賛したり、パレードを歩いたり)。東京だけでなく、例えば、チェリオ、AIGジャパン、資生堂などは大阪や福岡のパレードにも協賛(ブース出展)していました。こうした地方のパレードでは企業協賛が少ないので、1社1社の協賛のありがたみが大きいと思います。

 それから、個人的に今年、OUT JAPAN(BtoBのLGBTツーリズムや観光産業向けLGBTコンサルの会社)の方で、パレードだけでなく二丁目コミュニティと企業のつながりも作りたいとかねてから思っていたことを実行に移すことができました。GWにはAiSOTOPE LOUNGEで企業向けのクラブイベントを開催し(エスムラルダさん、バビ江さん、レイチェルさんのショー、振興会会長のToshiさん、aktaのジャンジさんのスピーチなど)、企業のみなさまにレインボー祭りのことをご紹介したり(社名は公表してはいないのですが、某有名音響メーカー様が協賛してくださいました。本当にありがとうございます)という試みも行いました。来年以降も続けてまいりたいと思います。


東京都の条例の意義


 今年、地味かもしれませんが非常に大きな意義を持つトピックとして、東京都でLGBT差別禁止条例が成立したということがありました。都内の企業にお勤めの方は、東京都で人権尊重条例ができたことを踏まえ、もしも職場でSOGIハラに遭ったり(ゲイだからという理由でいやがらせや差別を受けたり)、会社にいづらくなったり(あからさまに窓際な部署に異動させられたり)、クビになったりということがあった場合、訴えたら絶対に勝てますので、泣き寝入りせず、弁護士さんにぜひ、ご相談ください。
 
 東京はそのように一歩前進しましたが(大阪でも同様の条例を制定する動きになっています)、全国にはほかにも何万と企業があります。そのすべてが急に生まれ変わったようにLGBTフレンドリー化したりすることはないでしょう。未だに旧態依然とした男尊女卑で差別的な職場が大多数かもしれません。しかし、少なくとも330社がLGBTの権利を尊重しますと宣言し、大企業がこぞってPRIDE指標の認定を受けようと努めている状況で、その影響はきっと地方にも波及していくはずです(すでに波及が始まっています。PRIDE指標ゴールド受賞企業の中にも地方の企業があります)

 もしかしたら、上っ面だけいいこと言ってるけど、職場での差別的な言動は全然変わってない、という実感をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、社員の誰かがそういう差別的な言動をしたときに、すかさず上司がたしなめたり、会社としてきちんと対応しなければという空気になっている、といった話も伝わってきています。少しずつ、じわじわと浸透し、着実に変わってきていると思うのです。ですから、くさらず、あきらめず、希望を捨てず、もう少し、見守っていきましょう。機会があれば社内ネットワークに参加したり、そういうものがなければ人事部に提案をしたり、といった形で、施策に参画してみましょう。きっと、喜びの多い体験になるはずです。

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