COLUMN
サル痘(mpox)が感染拡大しています。予防に努め、みんなで力を合わせて感染拡大を防いでいきましょう
今年に入ってポツリポツリと感染報告が増えてきました。いよいよ国内でサル痘(M痘、mpox)の感染拡大が始まっていると見られています。感染症の専門家の方々のお話をお聞きしましたので、簡潔にまとめてお伝えします。

2月9日、国立感染症研究所感染症危機管理研究センター等の専門家からゲイメディア向けの説明会がありました。国立感染症研究所感染症危機管理研究センターの齋藤智也センター長、国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター第四室室長(実地疫学研究センター併任)の山岸拓也先生(国で性感染症のデータを扱ってきた方)、国立国際医療研究センター病院国際感染症センターの石金正裕先生(臨床医で感染症の専門医)の3名からお話があり、質疑応答も行われました。以下、なるべく簡潔に、わかったこと、今言えることを整理してお伝えいたします。
サル痘(M痘、mpox)は、サル痘ウイルスによって引き起こされる病気で、密接な接触により、人種や年齢、性別、性的指向、性自認などを問わず、誰でも感染する可能性があります。
現在、関東(首都圏)を中心にサル痘(M痘)が感染拡大していると見られています。
2月9日までに19例が確認されていて、すべて男性です。最も多いのは30代で、ほぼ20代〜40代の方です(1名だけ60代の方)。重症化したり死亡したりしたケースはありません。
今のところ19例ですが、実際はもっとたくさん(桁が違うくらい)感染が広がっている可能性があるかもしれません。
症状
これまで報告された患者さんは全員、発疹が現れています(水ぶくれを伴う発疹が、特に性器や肛門周り、口の周りや口中に現れます)
発熱が見られた方は10例で、必ずしも熱が出るわけではありません。以前から見られた発熱、だるさ、リンパ節の腫れなどのほか、喉の痛み、筋肉痛、背中の痛み、肛門や直腸の痛みという症状を訴える方もいるそうです。症状が軽い人や、なかには無症状でも感染がわかった方もいます(レアケースです)
潜伏期間
通常は6日〜13日です(短いときは5日、長いと21日というケースも)
感染経路
以下のような密接な接触により、感染します。(◎は主要な項目)
◎感染している人の発疹、水ぶくれ、かさぶたに触れる
・感染している人が使用した物、布地(衣服、寝具、タオル)、ドアノブやデスクなどに触れる
・感染している人の咳やくしゃみを浴び、唾液がかかる
例えばセックスにおいては、以下のようなパターンが考えられます。(◎は主要な項目)
◎感染している人の性器や肛門に触る、感染している人の精液や唾液と自分自身の粘膜が触れる
・感染している人との濃厚な皮膚接触やキス、至近距離での会話
・感染している人が使用した布団やタオル、下着、セックスに使用したグッズなどに触る
※ウイルスは、水ぶくれやかさぶたの液や膿などに多く含まれています。精液にも含まれるとの研究結果が海外で発表されています。
※空気感染する可能性はとても低いと言われています。
予防
・発疹、水ぶくれ、かさぶたに触らない
・コンドームの使用はとても有効です
※今は性的接触が感染の主要な機会になっていると考えられているため、多くの人と(無防備な)性的接触があればあるほど感染の確率も高くなります。暗くて相手の体に発疹があるかどうかわからないような場所は避けたほうがよいかもしれません。
※無症状の感染者から他の人に感染するかというと、明確な答えが世界でもほとんどありません。診断された時に無症状でも時間が経つと症状が出ることもありますし、本当に無症状だったのかを学術的に証明するのは難しい、とのこと。今のところ無症状の感染者からの感染はレアケースと考えてよさそうです。
治療
もし感染している方と濃厚な接触があったと思われる時から1週間くらい経った後、上記のような発疹や発熱などの症状が現れた場合は、かかりつけ医でもいいですし、可能であれば性について話しやすそうなところ(感染症の専門医やクリニック)を受診しましょう。
厚生労働省から自治体・保健所に通知が出ていて、情報は行き届いているはずですし、全ての都道府県に指定医療機関が設置されており、受診や検査や治療が受けられるようになっています。医療機関も行政も保健所もプライバシーに最大限配慮しています。
「サル痘だということになったら、自分がゲイだとバレるのではないか」などと心配する方もいらっしゃるかと思いますが、誰もが感染する可能性がある病気ですし、病院や保健所などもそのような偏見を持たないように周知されていますので、(追跡調査のために、感染経路について聞かれることがあるかと思いますが)そこは信頼してください。
感染がわかった場合、痒くても発疹を引っ掻いたりしないようにしましょう。(詳しくはこちらをご覧ください)
すべての発疹が治るまでの間は隔離(自宅療養や入院など)が推奨されます。(詳しくはこちらをご覧ください)
接触者に知らせましょう
もし感染がわかった場合、直近で性的な接触や、発疹との接触、キスやハグ、長時間のスキンシップ、寝具やタオルや食器などのシェアをした方がいれば、知らせるようにしましょう。過去14日以内に接触した方で無症状の方は、研究に参加するかたちでワクチン接種を受けることができます。(詳しくはこちらをご覧ください)
ワクチン
アメリカではゲイ・バイセクシュアル男性向けに大規模なワクチン供給を行ない、感染拡大を抑えましたが、日本ではそのような大規模ワクチン供給の話は出ていません…ので、今はみなさん一人ひとりの予防行動が頼りです。(ただし、上記のような濃厚接触者で無症状の方はワクチンを受けられる可能性があります)
50代以上の人は子どもの頃に天然痘ワクチンを打っているから大丈夫だと思われているかもしれませんが、昨年9月に60代の方の感染が報告されていますので、完全に予防できるというわけではありません。全く打ってない人よりは抗体価が高いだろうということは言えます。
HIV検査を受けましょう
海外で重症化したり亡くなったりしている方のほとんどは、HIVに感染していながら治療をしておらず免疫力が下がっているなど、免疫不全を起こしていた方でした。コロナ禍の間、HIV検査を受けずにきた方もいらっしゃるかと思いますが、これを機に、検査を受けるようにしましょう。
(現在、梅毒やクラミジアなども増えていますので、併せて検査を受けるとよいでしょう。例えば東京都新宿東口検査・相談室では、梅毒も同時に検査しています)
陽性者への偏見を持たないようにしましょう
HIVもそうですが、たった1回のセックスで感染する方もいれば、1000人以上とセックスしてきても感染していない人もいます。サル痘に感染した人=インランな人、などといった偏見を持つのはやめましょう。コミュニティや社会の偏見やスティグマ(烙印、汚名)が強くなればなるほど、受診をためらう人が出てきたり、感染がわかっても接触した人に伝えなかったりといったことにもつながります。
少し古くなった情報も含まれますが、以前上げたコラムに、さまざまな詳しい情報を載せていますので、お時間あるときに読んでみてください。
INDEX
- 『バディ』誌、25年の輝かしい歴史に幕 〜休刊に寄せて〜
- 杉田議員問題(5)TOKYO LOVE PARADE
- トークイベント「RUSHをめぐる最前線」で浮き彫りになった厳罰主義施策の理不尽さ
- 杉田議員問題(4)『新潮45』10月号のこと
- 杉田議員問題(3)この1ヶ月余の動きを振り返って
- 杉田議員問題(2)「日本のストーンウォール」となった抗議集会
- 杉田議員問題について
- レポート:第2回レインボー国会
- レポート:シンポジウム「同性国際カップルの在留資格をめぐって」
- LGBTと企業(2) 2017年、企業のアライ化はどのように進んだか
- チェチェンでゲイが強制収容所に送り込まれ、拷問を受け、命を奪われています
- LGBTと企業(1) 企業がLGBTフレンドリー(アライ)化していく意味
- オーランドのゲイクラブ銃撃事件−−「なぜ犯人はゲイクラブを狙ったのか?」に迫る
- オーランドのゲイクラブ銃撃事件のこと
- アメリカのLGBTムーブメントを視察した方たちが見る「日米の違い」
- 「LGBTインバウンド・セミナー」レポート2 〜知られざるLGBTフレンドリー・タウン、別府〜
- 「LGBTインバウンド セミナー」レポート ~海外とつながり、日本を変える試み~
- 「akta」を訪問したピーター・ピオット博士、コミュニティセンターの重要性を強調
- コミュニティセンター「akta」が無くなる!?
- 脅かされる性の自由(3)性解放なくしてゲイ解放なし
SCHEDULE
- 03.25BRAVE
- 03.25巨根伝説
- 03.25SURF632
- 03.26SAPPORO GAY NIGHT
- 03.26エモロック -New Emortional Rock Party-