第7回「東京プライドパレード」レポート第5弾(最終章)は、『RENT』のキャストの方たちや中西圭三さんといったアライ(支援者)の方たちが登場し、今年のパレードを象徴するような晴れやかさを現出したステージイベントについて、お伝えいたします。藤嶋隆樹さんがレポートしてくれました。

ブルボンヌさんの登場は素敵なサプライズ!
でした。朝早くからて会場に来て、暑さで
メイクが崩れることも覚悟のうえで…その
心意気に拍手を贈りたいと思います(編)
午前
11時、シーンで絶大な人気を誇るブルボンヌさんが司会として登場し、第
7回東京プライドパレードのステージイベントが華やかに幕を開けました。
続いて「
LIVING TOGETHERゼミナール」がスタートしました。昨年の東京プライドフェスティバルでも非常に大きな役割を果たしていた
LIVING TOGETHER計画。リーディングやミュージシャンによるライヴなどで構成される
LIVING TOGETHER LOUNGEのイメージが強いせいかもしれませんが、今回印象的だったのは、その「ゼミナール」という形態そのものでした。張由紀夫さん自らが前面に立ち、「
エイズ予防のための戦略研究」プロジェクトのデータに基づくレクチャーが行なわれました。
続いては、
FM-FUJIの番組『
GLAMOROUS LOVE』の公開収録。パーソナリティーは、
DJの神田亜紀さんと、日本初の女性向けアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」の代表でありライターでもある北原みのりさんのお二人。今回の収録では、前半部にレズビアンのカップルのかたが、後半部にはゲイのカップルのかたがゲストとして登場。同性婚をテーマにインタヴューが行なわれました。同性婚の話題は、いま世界で最も熱く論じられているタイムリーな話題の一つです。特に前半部に登場されたレズビアンのお二人はそれぞれがアメリカとブラジルの出身ということで、国や地域などによる同性婚事情の違いなどが語られるなど、大変興味深い内容でした。番組のエンディングには、
R&Bシンガーの
BOOさんがゲストで登場。1曲をパフォーマンスされました。
BOOさんは前回の東京プライドパレードでも、
LIVING TOGHTHERフロートでライヴを行なっており、かねてから
LIVING TOGHTHER計画に深く関わっておられるかたでもあります。
そして、ここ数年のプライドイベントではすっかりおなじみとなっている『
“みんな
”でブラス!』。今回も全国から集まったゲイの参加者のみなさんが、本番のステージ上で徐々に気持ちを一つに合わせていく過程を、音楽という形を通じて魅せてくれました。前回の『
“みんな
”でブラス!』に参加していた
40代の友人が、今回は観客席にいるのを見かけたので、その理由を訊ねてみたところ、
20代の若いかたの参加が増えてきたので、そうした後進のみなさんに活躍の場を譲ったのだそうです。このように『
“みんな
”でブラス!』は新たな世代へと受け継がれて、これからも東京のプライドイベントのステージの花形であり続けるだろうという、そんな気がしました。
さて、今回のプライドパレードのステージで最も大きな注目を事前に集めていたのは、やはり
ミュージカル『RENT』日本公演のキャストのみなさんと、中西圭三さんの出演でしょう。パレードの出発直前の時間帯には、『
RENT』日本公演のみなさんがステージに登場し、あの名曲「
Seasons of Love」を披露されました。コリンズ役の米倉利紀さんはソロでも1曲を熱唱。そして今回の日本公演でヒロインのミミ役を務めているのは、
NHK教育テレビ『ハートをつなごう』のパーソナリティーであり、昨年の東京プライドフェスティバルでの『ハートをつなごう』公開収録にももちろん出演されていた、ソニンさん。ソニンさんが今回のプライドパレードのステージで「
Seasons of Love」を歌うという話題は、パレード開催直前に芸能ニュースでも取り上げられていたほどでした(そのスポニチの記事は
こちら)

『RENT』キャストによるライブの後、
写真家のレスリー・キーが登場し(拍手!)、
みんなで記念撮影をしました
中西圭三さんはパレード帰着後のフィナーレのステージに登場。ブレイクのきっかけとなった代表曲「
Woman」や、ブラックビスケッツに提供してダブルミリオンを記録した「
Timing」、今日では
EXILEの代表曲としても有名な「
Choo Choo TRAIN」など、計
5曲+ア・カペラ
1曲をパフォーマンスされました。バラードは真摯に、そしてアップテンポのナンバーはひたすら明るく楽しく、アゲ要素満載。短時間ながらも非常にメリハリの利いた、シンプルかつ高密度な内容でした。「
Choo Choo TRAIN」では一人ぐるぐるダンスも披露するなど、ユーモラスな側面も。そして何より、デビュー
20周年を迎えるベテランでありながら、キーの高さがデビュー当時と全く変わっていないその歌声は、それが完全に生のものだからこそ驚異的に響きました。
この中西圭三さんや、『RENT』日本公演のみなさんの出演は、東京のプライドイベントの歴史において、非常に画期的な出来事でした。それは単に知名度がどうこうということではありません。J-POPの世界におけるLGBTアライの可視化のうねりがプライドパレードのステージという大きな場でついに形になったという、その点こそが画期的だったのです。
アライ(
Ally)については、今回の東京プライドパレードのレポートの
第2章で、既に後藤純一さんが詳しく語っておられますが、「支援者」「同盟」「味方」などを意味する用語です。今回のプライドパレードでは、従来からの協賛である「
LGBTによる
LGBTのための企業、あるいは非営利団体」だけでなく、
Googleや
SoftBank、
Bank of America といった大手企業からの協賛も加わり、それらの企業のブースが会場の代々木公園イベント広場に数多く並びました。そうしたアライ・パワーという新しいうねりの存在を、感動的な歌声で示してくれた
——それこそが、今回の第
7回東京プライドパレードのステージの、大きな意義であったと思います。特に中西さんは、以前にも東京プライドパレードに応援メッセージを寄せてくださっていたミュージシャンのかたです。今回のステージでも、ご自分がアライであることを
MCの中で明言されていました。中西さんのこの一言が、今回の東京プライドパレード全体のカラーを、より鮮明にしてくれていたように思います。
そして最後は、新虹(あらぬーじ)のみなさんによるエイサー演舞。『“みんな”でブラス!』と同様、東京のプライドイベントには今や欠かせない存在ですが、新虹さんは東京だけではなく全国規模のサークルであり、各地のコミュニティ・イベントで活躍されています。エイサーを通じて日本のゲイ・コミュニティ全体を盛り上げてくれている新虹さん。その存在感は、今後もますます大きくなっていくはずです。
そしてすべてのステージイベントが終了し、東京プライド代表の砂川秀樹さん以下、スタッフのみなさんがステージに上り、今回の東京プライドパレードはフィナーレを迎えました。10年という節目だけに、砂川さんの感慨はひとしおだったと思います。本当にお疲れ様でした!
(藤嶋隆樹)
☆ステージのフォトアルバムはこちら
藤嶋隆樹
1972年、神奈川県横浜市生まれ。学生時代、授業に提出する課題として執筆した小説が雑誌『小説 JUNE』に掲載され、小説家としての活動を始める。1999年には『さぶ』誌にも作品を発表。2001年には雑誌『G-men』の第8回ジーメン小説グランプリで優秀賞を受賞。以降は『G-men』誌で小説を発表。
ゲイ・ミュージックへの愛を『Queer Music Experience』というサイトに結晶させ、精力的に記事を書き続けているほか、GALEやRIGHTS OF DARKなどのアーティストのCDのライナー・ノーツ執筆、NAOYUKI、「夢」への詞提供、GOLDEN ROSEのロックオペラへの出演など、インディーズ・ミュージック・シーンにもコミットしてきた。