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レポート:Taka Nomura個展『公然で猥褻でない唯そこに或る私』

二丁目のALAMAS CAFEでTaka Nomuraさんの個展『公然で猥褻でない唯そこに或る私』が始まりました。レポートをお届けします。

レポート:Taka Nomura個展『公然で猥褻でない唯そこに或る私』

 11月3日(祝)、Living Together「オンラインLIVEショー」@AiSOTOPE LOUNGEの取材の前に、ALAMAS CAFEで始まったTaka Nomuraさんの個展を観に行ってきました。レポートをお届けします。(後藤純一)
 

 aktaで初めてその作品を拝見した時は、コロナ禍の時期でもあり、ほかに人がいなくて、とても静かでした。二丁目でHIVについて情報発信したりコミュニティセンターとしていろんなイベントやミーティングも開催されてきたaktaという場所で、怒りが立ち上ってくるような、GAY PRIDEを感じさせるような展示が行なわれていたことに独り感動し、打ち震えました。
 今回の個展の会場は、仲通りに面し、道行く人がふらりと立ち寄ったり、お店の前で飲んでたりする、(この日はDJさんはいませんでしたが)店内で楽しい音楽がかかっている賑やかなお店、ALAMAS CAFEです。夕方17時台でしたが、ほぼ満席となっていた店内で(ゲイの方も、トランスジェンダーかな?と思われる方も、いろんな方がいらっしゃいました)、私もビールを飲みながら、しばらく過ごし、作品を拝見して、同じ方の作品でありながらも、aktaの時とはまた違った印象を受けました。(先週末に二丁目でもレザー系のイベントが開催されたばかりですが)覆面をかぶったレザーとかラバーのフェティッシュな装いを思わせる絵は、まぎれもなく「二丁目という街でゲイカルチャーに生きる僕らの姿だ」と思えるようなものでしたし、それでいて二丁目のバーの「風景」や「装飾」と化すものでは決してなく、観た人に何らかのインパクトを与え、何らかの感情を喚び起こすようなアート作品として確かに存在していると感じました(たとえその感情があまりポジティブじゃないものであったとしても、Taka Nomuraさんの作品には二丁目への「愛」が込められていることは間違いありません)
 Taka Nomuraさんは今回の個展の開催にあたって「セクシュアルマイノリティというだけで性行為や性的嗜好を真っ先に連想する人々が未だいる中で、公然で猥褻でない私が恐怖心を持たずに唯私でいられる場所、新宿二丁目。この街が消えないようにそれぞれの方法で明かりを灯し続けた人々」と綴っていて、世間の偏見の目に対するプロテストの意思を感じさせましたが、私が今回の展示作品から受けた印象は、覆面とかレザーの(BDSMとのつながりも深い)kinky※なゲイカルチャーを堂々と打ち出すスタンス(すなわちGAY PRDIE)でした。「公然で猥褻でない私」とは、私が私らしくセクシャルであること、性の自由を追求することに対して世間(お上)から”猥褻”と断罪される筋合いはないはずだという異議申し立て的な意味なのではないかと(私はレインボー祭りの路上で「チンコ大好き」とラップしたり、公開フィストショーをやったり、「"猥褻"で何が悪い」「セックスとはなんと奥が深く、人間らしく、素晴らしい営みであろうか」と表現してきた人間なので、そう思うのかもしれません)。世間が何と言おうと、二丁目という街は、そうしたゲイのkinkコミュニティをも包摂する(インクルーシブな)安心して自分らしい性のありようを追求できる街だし、そんな二丁目を誇りに思い、大切にしていこうという思いの表れなのではないかと。
 
※kinky:クィアがもともとの("オカマ"とか"変態"という)侮蔑的な意味を逆手にとって異性愛規範への批判で連帯するLGBTQの総称へと転化されていったとの似て、kinkyももともとは"変態"という侮蔑的な意味だった言葉ですが、コミュニティが肯定的に自称として用いるようになっています。海外のゲイの間でもレザーやレバーなどを好んで着る人や、BDSMなどのkinkyなプレイに対する偏見や侮蔑があって、だからこそレザープライドが生まれ、kinkコミュニティとして結束した歴史があります(二丁目でも昔は褌好きな人やハードなプレイへの偏見があったと思います)。こちらの記事でも述べられているように、海外でも一部、LGBTQのパレードにkinkyな格好の人たちは参加すべきじゃないという声もあり、それに対して「ストーンウォールの時から一貫してプライドに参加してきたkinkコミュニティをLGBTQコミュニティから排除するなんて言語道断」だと批判されています。この話は日本のプライドにおいても言えることではないでしょうか(90年代から札幌や東京のパレードにはレザーや褌姿の参加者がいらっしゃいましたが、どんどん減って、今はすっかりなりを潜めています…台湾のパレードとは対照的に)




 文化の日の二丁目にとてもふさわしい、絵画鑑賞体験となりました。
(もちろん、観る方によって、抱く印象や感想は異なるでしょうし、その解釈の幅の広さこそが優れた芸術作品の証なのだと思います。なので、私の感想は「そういう見方もあるんだな」くらいに留めておいてください)
 ALAMAS CAFEの方が、店内の作品の写真を撮ってもいいですかと尋ねたらわざわざお客さんにお声かけをして説明してくださったりして、とても親切に対応してくださったことも申し添えておきたいと思います。ありがとうございます。
 
 今回、ALAMAS CAFEでこのように無料でアーティストさんに展示の機会を与えてくれるようになったことは、本当に意義深い、素晴らしいことだと思います。以前からバー「タックスノット」や「CoCoLo Cafe」などがゲイのアーティストの方たちの個展の会場になっていましたが、これから「ALAMAS CAFE」もそういう貴重な場所として発展していくことを期待します。
 コロナ禍で、二丁目も「CoCoLo Cafe」のような大切な場所を少なからず失ってしまいました…が、ALAMAS CAFEの二丁目のカルチャーを守っていこうとする思いは、希望を感じさせるものでした。最初の個展がTaka Nomuraさんの個展でよかったな、とも思いました。





Taka Nomura個展『公然で猥褻でない唯そこに或る私』
会期:2021年11月2日(火・祝前)〜2022年11月14日(日)
会場:ALAMAS CAFE (東京都新宿区新宿2-12-1 ガーネットビル1F)
営業時間:
 水木 18:00 - 2:00
 金土祝前 18:00 - 5:00
 日祝 16:00 - 24:00
(ハッピーアワー
 水~土 OPEN~21:00
 日曜 OPEN~19:00)
定休日:月・火 ※11/8(月), 11/9(火)は定休日
[注意事項]
・作品にはお手を触れないでください
・ご入店の際にバーカウンターにて、1オーダーをお願いいたします

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