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レポート:RUSHCRUISE R.68 & 69 STAGE in 京都

この感動を一体なんと表現したらよいのか…。歴史的な事件。世紀の瞬間。美の極致。日本の伝統文化とゲイカルチャーの融合。大げさかもしれませんが、「生きててよかった」と思いました。京都・嵐山のお寺で開催された「RUSHCRUISE」をレポートします。

レポート:RUSHCRUISE R.68 & 69 STAGE in 京都

2022年10月29日(土)、二丁目がハロウィンで盛り上がり、台北ではパレードが開催されましたが、京都・嵐山のお寺では歴史的事件とも言うべきイベントが開催されました。これまで数々のゴージャスでファビュラスで素晴らしくも感動的なステージを届けてくれた、ageHaファイナルGAY NIGHTでのSpecial SHOWCASE "Jewels"の記憶も新しい「RUSHCRUISE」が、またしてもゲイシーンの歴史に新たな1ページを加えました。京都・嵐山の虚空蔵法輪寺を会場に、昼間は「RUSHCRUISE」×「UGLY」presents Daylight Ball【お寺ンウェイ】が、夜には法輪寺本堂にてSpecial Showcase【花鳥風月】が開催されたのです。かつて体験したことのないような種類の楽しさと素敵さと感動が詰まったイベントを、レポートします。
(取材・文:後藤純一)


「RUSHCRUISE」×「UGLY」presents Daylight Ball【お寺ンウェイ】

 10月29日はさわやかな秋晴れで、絶好のイベント日和となりました。嵐山公園から少し歩いたところの虚空蔵法輪寺への入り口には【花鳥風月】【お寺ンウェイ】と書かれたのぼりが掲げられていました。境内が見えないくらいの高さの石段をひーひー言いながら登ると、高台といいますか、山の中腹に虚空蔵法輪寺があります。市内を一望する絶好のロケーションに位置する素敵なお寺です。




 本堂の右手に日本酒屋台「傳播」が出店されていて、さらに右奥の展望台に、茶屋や雛飾りで使われる緋毛氈を彷彿させるレッドカーペットが敷かれたランウェイが用意されており、平安貴族のような装束のJ.R.さんがDJしていて、否が応でも期待が高まりました。14時、HOSSYさん、ベビーヴァギーさん、Legendary Koppi Mizrahiさん、Showta Oricciさん、Amazon ERIKAwildさん、MOTHER CHISE NINJAさんというVOGUE界の重鎮の方々、そしてPARTY OJISAN(大)(小)とクレジットされているARATAさん&MOSHINさんが審査員として登場し、(あの『POSE』や『パリ、夜は眠らない』の世界である)BALLが開催されました。Virgin Vogue(初心者向けのヴォーギングの種目)、Oldway vs Newway(力強いポージングが特徴的なOldwayと、身体の柔軟性を競うNewway)、Runway(モデルウォーキングで競う種目)、Best Dressed(衣装のセンスを競う種目)、Vogue Femme(フェミニンさを誇張したヴォーギング)という5つのカテゴリーで、出たい人が次々にランウェイに出てパフォーマンスを披露していき、審査員の投票で合格・不合格が判定されたのち、合格者でさらにパフォーマンスを競い、優勝者が決められ、トロフィーと賞品がもらえるというものです。みなさんとても個性的で、拍手を浴びたり、笑いをとったりしていました。MC(パフォーマンス中にマイクで盛り上げるラップのような独特のかけ声)が「walk, walk fashion baby」というレディ・ガガの「Bad romance」を思い出させるフレーズだったりして印象的でした。
 競技が終わると、Koppi Mizrahiさんが簡単なVogueのレクチャーをしてくれました。みんなで練習したあと自由にランウェイに出て踊ったり歩いたり。本当に楽しかったです。心も体も温まりました。

















 

Special Showcase【花鳥風月】

 メインイベント【花鳥風月】のスタートは17時半。キッチンカーがいろいろ出ていたので、京都のローストビーフ丼+スープセットと地ビールをいただき、友達としゃべったりしながら、開場を待ちました。日本酒の屋台も大人気でした(お酒がすべて売り切れたそうです)
 
 本堂の境内いっぱいに椅子が並べられ、【花鳥風月】の会場にお客さんが入りはじめました。あたりはすっかり暗くなっていて、本堂の後ろの山から今にも天狗か何かが降りてきそうな神秘的な雰囲気でした。18時過ぎ、AKIさんのアナウンスに続いて、いよいよ【花鳥風月】がスタート。静寂のなか、ライトに照らされた法輪寺の本堂に、お花の束を持ってドリアン・ロロブリジーダさんが登場しました。そのお花を、花結い師のTAKAYAさんがドリアンさんの髪に結っていきます。数百人の観衆が固唾を飲んで見守るなか、美しく花を結い終わったドリアンさんがリップシンクを始めると、【花鳥風月】に出演するドラァグクイーンやGOGO BOY、ダンサーの方たちが客席側から登場し、御本尊に手を合わせ、本堂に登り、並んでいきます。その光景の感動を、一体なんと表現したらよいのか…。私にはそれが、ただ美しいというだけでなく、これまでに思い半ばで逝ってしまった仲間たちへの供養であったり、様々な思いが去来するような、祈りであるように感じられました。
 それから次々とドラァグクイーンやGOGO BOY、ダンサーの方たちが登場し、パフォーマンスを繰り広げ、夢のような時間が過ぎていきました(ageHaのファイナルは東京のキャストの方たちが中心だったのですが、今回は京都や大阪、沖縄など全国からのキャストが出演していました)。第一幕[花鳥]が終わったあと、ブリアナ・ギガンテさんのアナウンスが入って30分ほど休憩がとられました。そしてJURIさんの和太鼓演奏で第二幕[風月]がスタート。再び、次々とパフォーマンスが繰り広げられ、大トリのHOSSYさんのショーのあと、出演者の方全員が登場してMISIAさんの「Into the light」でフィナーレを迎えました。
 歴史的な事件。世紀の瞬間。美の極致。日本の伝統文化とゲイカルチャーの融合。大げさかもしれませんが、あの場に居合わせることができて本当によかった、「生きててよかった」と思えました。

























AFTER PARTY
RCCR[RushCruise × Chambers Rave]

 22時からは木屋町の「Chambers」でアフターパーティが開催されました。【花鳥風月】にも出演していたたくさんのパフォーマーのみなさんがショーを繰り広げ、フロアも大盛り上がりでした。同じビルの1階の「American graffities」ではK-POPのパーティが行なわれ、大人気の「アラサーだって踊りたい。」のパフォーマンスにみなさん大興奮&拍手喝采!でした。





 
 
「RUSHCRUISE R.68 & 69 STAGE in 京都」を振り返って

 今まで誰もやったことのない、京都のお寺でのイベント。全国からたくさんのゲイの方たち(やドラァグクイーンのファンの方など)が来られていましたが、きっと一生の思い出になるような素晴らしい1日を過ごすことができたのではないかと思います。
 
 京都在住のARATAさん(かつてレインボーマーチ札幌で日本で初めてのDJフロートを出走させたり、MASH大阪の「switch」という日本で初めてHIV検査と様々なゲイイベントを組み合わせたイベントをプロデュースしたり、大竹海岸の海の家で「マンキービーチ」という楽しいパーティを開催したりしてきた方)や、RIOTOさんやAKIさんをはじめとする「RUSHCRUISE」のみなさんの尽力に敬意を表します。また、たくさんのスタッフの方々が裏方としてこのイベントを支えていました。素敵なイベントをやりたいという方たちの心意気のおかげで、この奇跡が実現しました。感謝しかありません。
 
 もしかしたら、お寺であんなことやるなんて不謹慎、罰当たりじゃない?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
 お寺というのは、駆け込み寺という言葉もあるように、昔から貧しい人や困っている人、「はみ出し者」を救済するアジール(避難所、無縁所)でもありました。そもそも中世の僧侶は稚児(女装した少年)を観世音菩薩の生まれ変わりとして崇め、寵愛してきた(男色が公然と行なわれていた)という歴史もあります。仏教の教義では同性愛や異性装を禁じていません。お寺が性的マイノリティを排除する理由がないのです。現在の全日本仏教会も(神道なんちゃらと違って)LGBTQフレンドリーです。黒石寺の蘇民祭なども見方によっては“猥褻”かもしれませんが、伝統に則って行なわれている神事ですし、お寺ではそうやって昔から様々な民衆のお祭りが開催されてきたわけで、今回のようなイベントが開催されることに何の不思議もありません。
 ちなみに京都の春光院というお寺では、10年以上前から仏前式の同性結婚式を執り行なっています。
 
 ARATAさんや「RUSHCRUISE」のみなさんは、きっとこれからも、あっと驚くような、「素敵!」と狂喜乱舞するようなイベントを実現してくれるのではないかと期待しています。しかし、イベントに参加するオーディエンスがいなければ、こうしたイベントを続けていくことはできなくなってしまいます。ぜひ応援していきましょう。 

 11月3日より、「Daylight Ball〜お寺ンウェイ」と「Special Showcase 花鳥風月」、そして「特典インタビュー」の映像が配信されています(霊験あらたかな御朱印帳がセットになったチケットもございます)。残念ながら京都に行けなかった、チケットが手に入らなかった、配信でショーを観てみたいという方、ぜひご覧ください。

https://rushcruise.zaiko.io/item/352224




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