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レポート:東京都新宿東口検査・相談室で検査を受けました

東京都在住の方たちにとってのHIV検査の中心的な施設「東京都新宿東口検査・相談室」。こちらで実際に検査を受けてみた時の体験をレポートします。

レポート:東京都新宿東口検査・相談室で検査を受けました

昨年、長きにわたって東京都のゲイ・バイセクシュアル男性に利用されてきた東京都南新宿検査・相談室が移転し、東京都新宿東口検査・相談室として新たにオープンしました(館内の様子をこちらでレポートしています)。個人的に今年1月、実際に新宿東口検査・相談室で検査を受けたので、そのときの体験を再現レポートいたします。ゲイにとっての「HIV検査を受けること」のリアリティを感じていただきながら、みなさんにもぜひ定期的に検査を受けてほしいと願うものです。
(文・後藤純一)

※特別に許可を得て撮影しています。

協力:ぷれいす東京


HIV検査を受けたことがない方へ

 僕は1992年か93年の12月に南新宿検査・相談室で初めてHIV検査を受けました。もしかしたら…と思う出来事があったからです。敬愛するフレディ・マーキュリーの衝撃的な死のことも脳裏から離れず、結果が出るまでの2週間、生きた心地がしませんでした。もし感染していたら自分は死ぬのだという絶望感と、世間からどんな差別を受けるかわからないという恐怖がないまぜになった感情でした(幸い、結果は陰性でしたが、もし陽性だったらどうなっていたことか…)
 
 でも今は違います。まず、1996年〜97年頃にカクテル療法という三種類の抗HIV薬を同時に飲む方法によって治療が劇的に改善され、エイズは死に至る病ではなくなりました。たとえHIV陽性であったとしても、ずっと生きていけるという希望が持てるようになったのです。
 そして僕には今、身近にたくさんのHIV陽性者がいて、みんな治療を受けて元気に暮らしています。元気すぎて、もはやHIV陽性ということを忘れて接してしまっている人も結構います。今はU=U(HIVが検出限界以下にまで抑えられていれば人に感染させることがない)ということもわかっています。服薬も1日1回でよくなったり、副作用が少なくなったり、ずいぶん楽になったと聞いています。
 もしあなたがHIVを持っているのだとしても、HIV検査を受けて早めにわかって、治療をしていけば、(毎日薬を飲むという手間や、世間の偏見や差別ゆえにカミングアウトできないといったしんどさはあると思いますが)ずっと元気に、長く生きていけます。恋愛やセックスをあきらめる必要もありません。そうしたことを、二丁目コミュニティの「Living Together」のイベントや、たくさんのHIV陽性者の友人たちが教えてくれたおかげで、希望を感じることができ、検査を受ける怖さが次第に薄れていきました。
 正直、今でも怖さが全くないわけではありません。いつも結果を聞くときはドキドキします。神様に祈るような気持ちになります。でも、僕にはたくさんの仲間がいると思えば、乗り越えられます。
 
 これを読んでいるみなさんのなかにも、まだ一度も検査を受けたことがないという方、結果を聞くのが怖いという方などもいらっしゃるかと思います。でも、もしあなたがHIVを持っていることがわかったとしても、それ相応にショックを受けるかもしれませんが、絶望することはありません。僕らのコミュニティにはたくさんのHIV陽性者の仲間たちがいて、共に生きています。決してひとりではありません。支援団体も活動していますし、そういう団体につながることで、きっと同じような境遇の方と友達になれたりもすると思います。ですから、検査を怖がって受けずにいて、エイズを発症してしまうという深刻な状況に陥るよりも、勇気を出して、検査を受けてみましょう。
 


新宿東口検査・相談室で検査を受けました

 そうして僕は、年に一度は受けようと決めているHIV検査を、新宿東口検査・相談室で受けました。
 本当は去年の12月、世界エイズデーの頃の、通常のHIVと梅毒にプラスしてクラミジア・淋菌の検査もしてくれるというお得なキャンペーンを受けようと思ったのですが、申し込むのが遅くてすでに予約がいっぱいになっていたので、今年の1月に受けました。
 今回のレポートは、そのときの体験をもとに再構成しています。もちろん、本当に検査を受けている時は施設内の様子は撮影できませんので、写真はあとで撮ったものです。季節感が全く異なってしまっていますが、ご了承ください。


  
◎採血の日
 
 1月某日、あらかじめ携帯で予約をした際の予約番号を持って、新宿東口検査・相談室に向かいました。実は新宿駅よりも大久保駅からのほうが近いということがわかったので、総武線の大久保駅を降りて、住宅街を通り、職安通りを渡って、徒歩5分くらいで到着しました。
 エレベーターで2階に上がり、手指消毒をして、受付で検温します(手首でOKです)。用紙に予約番号を記入し、次回の結果を聞く日時を決めて(デフォルトは1週間後の同じ日時ですが、都合が悪ければ、違う日を相談して決めることができます)、用紙と整理番号を持って、床に描かれたグリーンのラインに沿って進んでいき、待合スペースに行きます。
 待合スペースは、それぞれの椅子がパーテーションで仕切られていて、隣の人と接しないように工夫されています。といっても、自分以外にはもう1人しかいなくて、ちょっと離れて座ったので、左右前後、誰も人がいない状態でした。ここで、これまでに検査を受けたことがあるかなど、簡単なアンケートに答えます。

 「ピンポン。○番の方、お入りください」というアナウンスが流れました。ガイダンスのお部屋に入ります。用紙とアンケートはここでお渡しします。初めての方は、HIV検査についての詳しい説明があるのですが、以前にも受けたことがある場合は省略していただけます。
 待合スペースに戻ります。すぐに番号を呼ばれ、採血のお部屋に入ります。注射も苦手ですし、血を見ることも本当に苦手で、「気分が悪くなったことはありませんか」と聞かれると、つい「失神しそうになります」と言いそうになるのですが、グッとこらえ、「大丈夫です」と言いながら、視線をそらして見ないようにします。一瞬チクっとして、数十秒後、止血用のパッチを貼って、「はい終わりです」。割とスムーズに終わりました。(僕と同様、採血の場面が苦手な方もいらっしゃると思いますので、採血の写真はナシにしますね)
 再び待合スペースで、しばらく、血が止まるのを待ちます。南新宿検査・相談室の頃から何年も流れている啓発動画を観ながら(ぷれいす東京の生島さんが若々しくて素敵だなぁと思いながら)過ごし、時間が来たら帰っていいです、という流れでした。
 全部で10分〜15分くらいだったと思います。あっという間でした。

 
◎結果を聞く日 

 1週間後、再び新宿東口検査・相談室へ。
 冒頭でお伝えしたように、結果を聞くのは、今でもちょっと緊張します。
 採血の日にもらった予約番号が書いてある紙を提出し(匿名なので、この番号での本人確認となります。番号を書いた紙がないと結果を聞くことができませんので、無くさないようにご注意ください)、受付を済ませると、今回はピンクのラインに沿って進んでいき、ピンク色の待合スペースで待機します。やはりほとんど人がいなくて、僕以外にはもう1人だけでした。完璧なソーシャルディスタンス。

 「○番の方、お入りください」と整理番号を呼ばれ、隣のお部屋に入ります。アクリル板で仕切られたデスクで(もちろん、マスクもしているのですが、飛沫が飛ばないようにという万全な配慮です)お医者さんから結果を聞きます。検査結果はリストになっているのですが、専用の1行分しか見えないようなシートを用いて、自分の結果だけを番号と照合するかたちで見せていただき、結果を知ることができるようになっています。
(結果については、あえてお伝えしないことにします。陰性だった!よかった!と喜んでみせることで、もしかしたら傷つく方もいらっしゃるかもしれない…と思うからです)
 そのあと、さらに隣のお部屋で、別の先生(城所先生ではありませんでした。たくさんのお医者さんが、ボランティアで携わってくださっています)とお話ししました。何か気がかりなことはありませんか?と優しく聞いていただいて、せっかくだから何か聞いてみようかなと思う気持ちもあったのですが、思い浮かばず、特にないです、と答えました。
 帰りがけに、アンケートに記入します。アンケートを記入するブースに、先に終わったもう1人の方(たぶんゲイの方)がいて、ちょっとタイプだったのですが、まさかそんなところで話しかけたりジロジロ見たりするわけにもいかず、平静を装いながら、ちょっと離れた場所に座りました。僕がアンケートを書いている間に、その方は先に帰ってしまったので、一抹の名残惜しさが…。

 そんな感じで、結果を聞くのも割とあっという間に終わりました。
 もしこれを機に聞いてみたいことがあるという方は、たとえばPrEPのこととか、サル痘のことでもいいので、相談してみるとよいと思います。
 


 こちらに室長の城所(きどころ)先生へのインタビューを掲載していますので、ぜひご一読ください。サル痘という新たな感染症が流行しはじめた2022年の今、ぜひ検査を受けたほうがいいということを実感していただけると思います。
 


東京都新宿東口検査・相談室
住所:東京都新宿区歌舞伎町2-46-3 SIL新宿ビル2階
電話:03-6273-8512
検査受付時間:
平日 15時30分~19時30分
土日 13時~16時30分 ※祝日、振替休日、年末年始を除く
検査の予約:こちらの携帯サイトからどうぞ

<ご参考:HIV/エイズに関する電話相談>
東京都HIV/エイズ電話相談(東京都委託事業)
03-3227-3335
月曜~金曜 12:00-21:00(冬期休業を除く)
土曜・日曜・祝日 14:00-17:00(冬期休業を除く)

<ご参考:HIV検査に関するお役立ち情報>
東京都HIV検査情報Web 
HIVマップ 
HIV検査相談マップ 

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