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サル痘への偏見や感染者への差別を克服しながら予防に努めましょう

サル痘は“ゲイの病気”だなどという偏見はとても危険ですし、僕らもまた、感染した方を差別したりすることがないよう気をつけながら、正しい知識を持って予防に努めていくことが大切かと思います。

サル痘への偏見や感染者への差別を克服しながら予防に努めましょう

欧米ではMSMを中心に大規模に感染が拡大し、WHOが緊急事態宣言を発した「サル痘」。日本でも現在までに2名、感染者が確認されました(が、いずれも接触者に症状はなく、感染が広がる可能性は低いと見られています)。なぜMSMの間で感染が広がっているのかはよくわかっていないものの、今後日本でも感染が広がる可能性はあると思われ、厚労省もaktaなどのHIV予防啓発団体の意見を聞きながら薬やワクチンなどを整備している最中です。世間の“ゲイの病気”などという偏見やバッシングに抗しながら、僕らもエイズ禍の時のような恐怖心や差別心にからめとられないよう気をつけながら、正しい知識を持って予防に努めていくことが大切ではないでしょうか。
とても早いペースで新たな情報が出てきて状況が変化していってますので、最新情報のまとめページのような感じで、コラムを設けました。新たな情報がわかり次第、更新していきますので、お役立てください。
(最終更新日:2022年8月10日)
 

【関連記事】
「サル痘」の感染に性的指向は関係ありませんし、性感染症でもありません
https://gladxx.jp/news/2022/05/7817.html
ぷれいす東京が「サル痘」についてのオンライン学習会を緊急開催&サル痘に関する続報
https://gladxx.jp/news/2022/05/7853.html
ぷれいす東京学習会『知っておこう「サル痘」』
https://gladxx.jp/video/2022/7912.html
【akta大学 第20限目】サル痘についての解説動画
https://gladxx.jp/video/2022/7997.html
WHOが「サル痘」緊急事態宣言、厚労省が薬やワクチンなどを整備中
https://gladxx.jp/news/2022/07/7990.html
米国が「サル痘」で緊急事態宣言を発しました
https://gladxx.jp/news/2022/08/8013.html


 

エイズ禍の教訓 〜決して“ゲイの病気”などではないということ

 80年代、未知の奇病であり死に至る病であるエイズが流行しはじめた時は、“ゲイの癌”などと言われてバッシングが強まり、聖職者のなかにも「同性愛に対する天罰だ」と言う人がいました。そのような偏見が社会に広く浸透した結果、レーガン政権も何年も対策を取らずにいて、1987年に最初のエイズ諮問委員会を設置するまでの6年間におよそ5万人がエイズと診断され、その半数以上が亡くなったと言われています。ゲイ差別で初動が遅れたことが感染拡大の大きな要因になったのです(ぷれいす東京の生島さんへのインタビューでも語られています。ご覧ください)
 日本でも85年に感染者が発表されて以降、メディアが狂騒する「エイズパニック」が起こり、風俗で働く女性やゲイ、外国人などをターゲットとしたバッシングが起こり、予防に支障をきたしました(感染症対策の基本は検査と隔離ですが、世間に差別が蔓延すると、もし感染が発覚したらどんな目に遭うか…と恐れ、人々が検査を受けなくなったり、感染の事実を隠蔽したりするようになります。コロナ禍でそのことを実感した方も多いはず)。ゲイ・バイセクシュアル男性の人たちも世間のエイズに対するネガティブなイメージ(付与されたスティグマ)や恐怖心からなかなか逃れられず、コミュニティ内でもHIV陽性者に対する差別が根強く、Living Togetherという陽性者への共感を示しながら予防啓発にもつなげる手法が生み出されることになりました。
 コロナ禍に際して、日本でHIVのことに携わってきた方たちが共同で「いわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすこと」や「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応すること」の実現と徹底を求める提言を発しています(素晴らしいです。詳細はこちら

 サル痘のパンデミック(サル痘禍?)に際しては、これがMSMの間から流行がはじまったという意味でエイズ禍とよく似た状況であるということもあり、WHOのテドロス事務局長も「差別や偏見はウイルスと同じくらい危険だ」と釘を刺しているのをはじめ、メディアの報道も決して“ゲイの病気”などではないと強調するような配慮が感じられます。それでもネット上では(ゲイの方ですらも)あたかもゲイの性行動が原因であるかのような偏見に基づく差別的なコメントが上がっていますし、今後ゲイバッシングが起こるのではないかという懸念もあります。
(Twitterで若い方がお母さんに「サル痘心配だね」と言ったところ「ゲイの病気だから心配要らないわよ」と言われ、「カミングアウトできないと思った」という投稿がありました。“ゲイの病気”という偏見は、いろんな意味でゲイの人たちを苦しめてしまうのです…)
 エイズ禍のときの教訓に学び、僕ら自身がこの病気に対する偏見や恐怖心から自由になること、正しい知識を共有しながら、予防に努めていくことが大切だと思います。
 サル痘の感染に性別や性的指向は関係なく、そもそも性感染症でもないということを、いま一度確認しましょう。

 

たとえセックスで感染したとしても責められるいわれはありません

 テドロス事務局長も「サル痘が広がった新たな感染経路については、ほとんどわかっていない」と述べているように(BBC「WHO、サル痘で「緊急事態」を宣言 欧州などで感染拡大」より)、以前アフリカの風土病であったサル痘と異なり、現在のサル痘の「ヒトヒト感染」がなぜこのようにアウトブレイクしたのか、なぜMSMが中心になったのかということは、よくわかっていません(たぶんちゃんと解明されるのはだいぶ先だと思います。HIVも何年もかかってますから)。いつの間にか感染してしまい、高熱を出したり、痛みに苦しめられたりした気の毒な方たちが、「ゲイは性的に“乱れてる”からだ」などと責められるのは不条理でしかありません。たとえセックスという濃厚接触による感染だったにせよ、誰にも責められるいわれはありません。
 
 サル痘は、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスと同様、セックス(接触感染)でもキス(飛沫感染)でも感染する可能性がありますが、新型コロナウイルスと異なり、無症状の人から感染するということはなさそうですので、「高熱やリンパの腫れ、発疹などの症状が現れた方は速やかに病院で診ていただくようにしましょう。外出、イベント、セックスは控えましょう」といった呼びかけが徹底されることで、感染拡大を防ぐことができるはずです。
 また、サル痘は、ほとんどの場合、1ヵ月以内に回復し、発疹が完全に消えてしまえば、誰かに感染させることはありません(免疫不全の方など、まれに重症化する方もいらっしゃいます)
 そういう意味では、この病気を過度に恐れる必要はありません。
 
 今後、日本でどれくらい感染が広がるのか、広がらないのか、まだわかりませんが、サル痘に感染した人に対して、“性的に乱れてる人”などといった偏見を持たないよう、僕ら自身も気をつけましょう。世間の一部の人たちの“ゲイの病気”という偏見と同様、予防の妨げになってしまいます(エイズ禍の時のように、差別を恐れて受診や検査をためらう方も出てきて、予防の妨げにもなりえます。何もいいことがありません)
 
 ゲイ・バイセクシュアル男性の間でも、“性的に奔放であること”に対する偏見や差別が見られるのは事実だと思います。HIVについても、たった1回の(コンドームが破けるなどの)失敗や不運で感染する方がいる一方、何百・何千もの人とセックスしていても陰性である方もいて、“感染した人はヤリまくってた人”などということは言えないのに(逆もまた真なりです)、そのような色眼鏡で見る方がいらっしゃいます。
 サル痘はそもそも性感染症ではありませんので(家族と同じ布団で寝たり、同僚や友達とマスクなしで長時間しゃべってても感染します)、HIV以上に“感染した人はヤリまくってた人”という偏見は的外れなものと言えます。
 
 ですから、まだ日本で感染が拡大していない状況で(2名の感染者が確認されましたが、いずれも接触者に症状はなく、感染が広がる可能性は低いと東京都も述べています)、これまでと特に生活を変える必要もないにもかかわらず「セックスを控えるべき」という声が上がっているのは…ちょっと心配です。今後、ゲイコミュニティ内で感染する方も出てくるかもしれませんが、「セックスしたお前が悪い」と責められる状況になってしまってはいけないと思います。スティグマや恐怖心が強化され、検査や受診をためらったり、感染がわかっても、バレないようにするため、仕事を休むなどの行動が取れなくなったり、予防を妨げるようなことにつながります。
 性的に奔放な人たちを叩き、陽性者を差別したところで、予防にはつながりません。それに、もしご自身が感染したとき、その差別の刃は自分自身に向き、苦しむことになります。
 
 「禁欲主義は予防の効果がない」という点について、いくつか事例をご紹介します。
 米テキサス州のラボックという町で、福音派の牧師が(日本における統一教会のように)子どもに「純潔の誓い」(結婚するまでセックスは禁止)を強要し、公立学校で性教育を一切行なわず、結果、ラボックは全米で最も妊娠率と性感染症罹患率が高い町になりました。(映画『シェルビーの性教育~避妊を学校で教えて!』)
 また、2000年代に米国の若者に対して行なった研究調査で、HIV予防に関して性的禁欲教育のみを実施し、コンドームの使用などセーファーセックスの奨励は行なわない場合、予防の効果がないことが明らかになっています。(ケアネット「性的禁欲だけで、高所得層のHIV感染を予防できるか」)
 世界的に見ても、劇的にHIV感染を減らすことに成功したのはPrEPであり(PrEPには事前の検査・相談、定期的なクリニックの受診が含まれるため、性感染症予防啓発の機会にもなります)、決して禁欲主義ではありませんでした。
 サル痘に関しても同様で、やみくもに禁欲主義を振りかざしても、予防にはつながりません。
 僕ら自身が、セックスを“穢れ”だと思わないようにすること、セックスフォビアを乗り越えることも大切なのではないでしょうか。

 性愛に関することほど、生まれ育った環境によって見方が異なるものはないと思います。人はしばしば、価値観の違いから、”正しい性愛”のありようについて他者にあれこれ言ってしまいがちですが、それを認めてしまうと、同性愛を”変態”だと罵る行為も正当化されてしまいます。(強制わいせつ罪や児童福祉法に抵触しない限り)大人どうしが合意のうえでどのようなセックスをするのも自由であるという前提を共有することが大事です。たとえ同性どうしであっても、たとえ1対1じゃないとしても、たとえ金銭が介入するセックスであったとしても、どんなkinkyなプレイであったとしても、当事者どうしが合意のうえで行なうセックスは自由であり、尊重されるべきです。性愛は人間の「尊厳」にも関わることです。




 とはいえ、現に、感染拡大が懸念されている状況で、理由はよくわからないにせよゲイ・バイセクシュアル男性の間で感染が広がっているのは事実ですので、最新の情報に触れながら、正しく恐れ、予防に努めましょう。
 やみくもに“禁欲”する必要はありませんが、発熱やリンパの腫れ、陰部や肛門、口などの発疹が見られる場合はすぐに病院に行き、外出は控えましょう、ということだと思います。
 以下に、現在流行中のサル痘についての情報をまとめていますので、ご確認ください。
(何か間違いがあれば、ご指摘いただければと思います)


サル痘の基本情報(現在流行中のサル痘)
 
 現在流行中のサル痘は、以前アフリカの風土病であったサル痘とは症状などが異なるようです(以前のウイルスとは変異しているようです。さらなる研究が待たれます)
 ざっと見たところでは、NHK「サル痘 国内初確認 症状 ワクチン 治療薬は? WHOは緊急事態宣言」と、日経メディカル「わかりやすいサル痘レクチャー」、そしてBuzzFeed「これさえ知っておけば怖くない! 気になる症状、治療、予防、サル痘の基礎知識」が最もサル痘についての総合的な情報を詳しく伝えてくれています。厚労省の「サル痘について」というページにも情報がまとめられています。
 そうしたまとめサイト的な記事を参考に、現在欧米を中心に流行しているタイプのサル痘についての情報をお伝えします。(新たな情報が入り次第、更新します)
 
◎潜伏期間
 5~21日(7~14日目に症状が現れることが多いようです)

◎症状
 これまでのサル痘は、発熱、倦怠感、関節痛、リンパ節の腫れなどの急性症状ののちに顔や四肢を中心に発疹を起こす、発疹は丘疹(皮膚から扁平状に隆起した発疹)で始まり、水疱(水ぶくれ)化し、やがて瘡蓋(かさぶた)になって、ポロポロ落ちていく、という症状でした。
 しかし、現在流行しているサル痘は、発熱など全身症状の先行がなく、最初から発疹が出たと病院を受診するケースがあります。また、発疹部位も、肛門周囲や性器などに出現し、さまざまなステージの発疹が見られることがあるそうです。 

 WHOが約6600人の症状を分析したところ、体のどこかに発疹ができた方が88%と最も多く、全身の発疹(70%)、発熱(44%)、陰部の発疹(33%)、リンパ節の腫れ(27%)、局所的なリンパ節の腫れと倦怠感、頭痛が19~21%程度でした。重症な直腸炎や尿道炎など、これまでサル痘で知られていなかった症状も報告されています。(日経新聞「サル痘変異か、症状など変化 体の一部だけ発疹も」)

 英「Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust」のAatish Patel氏らがロンドンの重大感染症(HCID)センターで最初に確認されたサル痘患者197例のデータを集積し、特徴を検討した結果によると、皮膚粘膜病変は全197例で認められたものの、27例(13.7%)は受診時に全身症状が認められませんでした。また、64例(38.5%)は皮膚粘膜病変の後に全身症状が発現しています。全身症状は発熱が61.9%と最も多く、次いでリンパ節腫脹が57.9%、筋肉痛が31.5%に認められました。また、従来の流行と異なり、直腸痛(36.0%)と咽頭痛(16.8%)、陰茎浮腫(15.7%)が高頻度に認められました。197例中20例(10.2%)が症状管理のために入院しましたが、最も多かった入院理由は陰茎浮腫と直腸痛でした。直腸痛を呈した患者のうち、5例でMRIにより直腸炎が確認されました。直腸穿孔、肛門周囲膿瘍が各1例認められました。皮膚粘膜病変の発生部位は性器(56.3%)、肛門周囲(41.6%)に偏向しており、さらに27例(13.7%)が口腔咽頭症状を呈しました。うち9例で扁桃紅斑、膿疱、浮腫、膿瘍が見られました。ほかにも従来の流行と異なり他疾患と誤認されやすい臨床像として、孤立性病変(22例、11.2%)、ステージが異なる(polymorphic)皮膚病変の並存(70例、35.5%)、紅斑性丘疹(27例、13.7%)などが挙げられています。(Medical Tribune=時事通信「サル痘、従来と異なる臨床的特徴も」より)

 ニューヨーク在住のSebastian Köhnさんは、直腸にできた発疹が「穴の開いた傷」に変わり、トイレに行くたび、痛みのあまり「泣き叫んだ」と語っています(PinkNews「Monkeypox: Gay man recalls ‘total nightmare’ of contracting ‘agonising’ virus at Pride」より)

◎予後
 2~4週間の経過で自然治癒していきます。(すべての皮疹が無くなって新しい正常な皮膚に覆われるまで感染予防が必要です)
 重症化や死亡例はほとんどなく、抵抗力のない子どもや、免疫不全を起こしている方などはごく稀に重症化する場合もあります。(重症化すると、視力の低下、意識の低下、昏睡、痙攣、呼吸不全、出血、尿量の減少、敗血症、敗血症性ショックなどの危険な合併症を引き起こす可能性があります)
 
 
感染経路
 
 7月23日に緊急事態宣言を発したWHOのテドロス事務局長は、「サル痘が広がった新たな感染経路については、ほとんどわかっていない」と述べています。(BBC「WHO、サル痘で「緊急事態」を宣言 欧州などで感染拡大」より)
 以前アフリカの風土病であったサル痘は感染した動物から人への感染が主な伝播様式でしたが、サル痘の「ヒトヒト感染」がこのようにアウトブレイクしたのは初めてで、なぜ感染拡大したのか、なぜMSMが中心になったのかということは、よくわかっていないのです。
 
 ただ、これまでの知見から、サル痘の感染経路は以下であると見られています(厚労省「サル痘について」より)
・感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む、いわゆる濃厚接触による接触感染)
・患者との接近した対面での飛沫への長時間の曝露(飛沫感染)
・患者が使用した寝具等との接触等
※皮疹の痂皮をエアロゾル化することで空気感染させた動物実験の報告があるものの、実際に空気感染を起こした事例は確認されていません

 aktaの岩橋さんが性的接触のことも含めて、もう少しわかりやすく説明してくださっています(【akta大学 第20限目】サル痘についての解説動画より)
・発疹やかさぶたに直接触れる
・飛沫を長時間浴びる
・(いわゆる性感染症ではないが)オーラルやアナル、ペニスなどの性器との接触

 日テレ「WHO「サル痘」78か国で1万8000人以上の感染確認 多くは性的な接触が原因も…」では、WHOが「ハグやキスといった接触でも感染することもある」としていると報じられています。飛沫感染するということは、唾液にウイルスが含まれているということですから、キスによって感染する可能性はあるでしょう(新型コロナウイルスと同様です)

 米国で最も長い歴史を誇るHIV団体「ゲイ・メンズ・ヘルス・クライシス(GMHC)」のジェイソン・シアンチオット副代表は、米公共ラジオ局「NPR」の取材に対し、「以前のサル痘と違うのは、人と人との親密な接触によって広がることです。ですが、必ずしも性的である必要はありません…抱擁、マッサージ、膿疱に接触した寝具やタオルの共有。例え完全に服を着ていても、ダンスフロアや誰かの近くで踊っていれば、感染の可能性はあります」と語っています。(エスクワイア『サル痘の流行で米国に迫るワクチン不足ともうひとつの脅威。急がれる正しい知識の普及』より)
 


他の性感染症との関係

 『The New England Journal of Medicine』誌に掲載された論文「Monkeypox Virus Infection in Humans across 16 Countries ― April-June 2022」は、2022年4月27日〜6月24日に16ヵ国43施設で診断された528人のサル痘感染症例についてまとめたものですが、これによると、検査を受けた377人中109人(29%)に他の性感染症の合併が見つかったそうです。また、感染者の41%(218例)がHIV陽性者で、そのうち96%は抗HIV治療が行なわれ、95%がHIVの量が50コピー/mL未満に抑えられていました。一方、残り59%のHIV陰性者(またはわからない人)のうち57%は、サル痘発症前月にPrEPを行なっていました。
 この研究を実施したQueen Mary University of LondonのJohn P.Thornhill氏は、「単一の性器の皮膚病変や、感染者の1割に認められた手掌および足蹠の病変は、梅毒や他の性感染症と誤診されやすいが、(診療に当たる医療機関は)既存の性感染症の症状を呈する高リスク者ではサル痘を考慮することが勧められる」と語っています。
(日経メディカル「サル痘患者528人の症例シリーズ研究が話題に」)
(メディカルトリビューン「国内でも確認のサル痘、世界528例の臨床的特徴」)
 
 これをもって「HIVや梅毒に感染している方はサル痘にかかりやすい」と言えるかどうかはわかりませんが、梅毒に感染しているとHIVにかかりやすいということは明らかですし、サル痘に関しても同じことが言えるのではないかと思います。HIVに関しては、きちんと治療してU=Uになっている方と治療がまだ進んでいない方とでは状況が異なりますので、一概には言えないはずです。ただ、ブラジルでもともと免疫不全だった方が亡くなっている事例がありますので(日テレ「NY州「サル痘」で非常事態宣言 ワクチン接種など対策強化へ」より)、ずっと検査を受けずにいてエイズを発症してわかった方などは十分気をつけたほうがよいでしょう(そういう意味では、定期的にHIVや梅毒の検査を受けることが大切だと言えるでしょう)


 
治療

 高熱が出た、リンパが腫れている、という症状は、風邪や新型コロナと似ているため、区別が難しいと思いますが、病院に行きましょう。そして、もし、発疹が現れたらすぐに病院で診てもらうようにしましょう(上記のように旧来のサル痘とは症状が異なっているため、病院の医師もそれを踏まえて診ていただきたいですね…)
 
 東京都では、こちらのように都内保健所、医療機関と連携しながら、迅速な検査・入院治療体制を整えています。
 
 治療薬については国内で承認されている薬がないため、サル痘と症状が似た天然痘の治療薬、「テコビリマット」という飲み薬を研究目的として投与できる仕組みを作っています。投与を受けられるのは現時点で、東京の国立国際医療研究センターと大阪のりんくう総合医療センター、愛知の藤田医科大学病院、それに沖縄の琉球大学病院の4ヵ所です。
 


ワクチン

 厚労省は、天然痘ワクチンとして製造・販売が承認されているKMバイオロジクスのワクチンを、サル痘に対しても使えるよう承認しました。ウイルスへの感染後、4日以内の接種で発症予防効果が、14日以内の接種で重症化予防効果があるとされています。
 サル痘はコロナウイルスのように加速度的に感染が広がることは想定されていないため、今のところは、国民全体に広くワクチン接種を進める必要はないと考えられており、国内では臨床試験として、発症予防を目的に接種できるのは、医療従事者および濃厚接触でウイルスの曝露があったと考えられる方に限られます。現在、国立国際医療研究センターにおいてサル痘患者の接触者に対しワクチンを曝露後投与する臨床研究体制に加え、同センターの医療従事者に対して、曝露前接種を行う臨床研究を実施しています。(日経メディカル「サル痘予防に天然痘ワクチンの使用を了承」)

 報道にあるように、8月1日に開催された厚生科学審議会感染症部会で、感染者との接触リスクが高く、接種を希望する医療従事者に広く曝露前予防としてワクチンを接種することが承認されました。今後、検査に関わる担当者や保健所の職員などにもワクチン接種を拡大するかどうか議論されるそうです。
 
 天然痘ワクチンには強めの副反応が出ることもあるそうです(m3.com「サル痘の曝露前予防「どこまでやるべきか」、感染症部会」)。今回承認されたワクチンは安全性が確認されているとのことですが、副反応がないと言えるかどうかはわかりません。厚労省が今回、承認したことにより、ワクチンの副作用が救済制度の対象になります。
 
 なお、岡山理科大の森川茂教授(ウイルス学)は、「天然痘ワクチンはサル痘にも効きます。1962年以前の生まれで3回接種した人、62~68年生まれで2回接種した人はほぼ感染しないか、感染しても非常に軽症でしょう。69~75年生まれで1回接種の人も免疫がある可能性があります」と述べています。
 国立感染症研究所感染症危機管理研究センターの齋藤智也センター長は、「接種している世代は、感染せずに済んだり、発症した時に軽く済んだり、無症状になったりする可能性は高い。ただそれがどれぐらいの割合かは分かりません」と述べています。
 40代後半以上の方は、天然痘のワクチン接種を受けているはずです(右腕に跡があるはず。稀に跡が見えない方もいるそうですが、皮膚科の先生に診てもらうとわかったりするそうです)
 

 
予防について言えそうなこと

 どのように感染するのかということもよくわかっていない(次第に明らかになりつつはあります)のですが、今のところ、コロナウイルスに対する感染予防対策がサル痘ウイルスに対しても有効だとされています。たとえば、マスクの装着、頻繁な手洗い、手指消毒などです。
 感染者の体液、発疹に触れないようにすることも重要です(コンドームの使用など、性感染症予防に有効な対策がサル痘にも当てはまりそうです)
 ワクチンについては、上記の通り、新型コロナのように国民全員が接種できるようにはならないものの、国立国際医療研究センターにおいて濃厚接触者に接種する臨床研究が行なわれる体制ができています。
 

検査

 新型コロナのようなモニタリング検査が今後、実施されるかというと…わかりません。
 現在、医療機関は、感染が疑われる方に対して検査を実施します(厚労省が医師に対して検査や、感染がわかった場合の届出を義務付けています→こちら

【追記】
 タカラバイオが8月4日、サル痘ウイルスを検出するPCR検査試薬をリリースしました。市販のPCR検査装置を使って1時間以内に検出できるそうです。4日に開いた決算記者会見で掛見卓也執行役員は「サル痘向けで大きな売上げがあるとは思っていないが疫学調査に役立ててほしい」と語りました。その心意気に感謝!です。(日経新聞「タカラバイオ、サル痘ウイルス検出のPCR試薬発売」)

 

感染がわかった方が自宅療養する場合

 先行して感染が拡大した英国では、政府のガイドラインによって、感染が確認された場合や医師から勧められた場合は、自己隔離を行うことが推奨されています。同居人との接触も避けるとしており、寝室を分けたり、別々のタオルを使う、同室にいる場合は1メートルの距離を空け、医療用マスクを着用することなどが推奨されています。外出は緊急の診療などに限定し、外出する場合は発疹が完全に隠れるような服を着るほか、医療用マスクの着用を勧めています(新型コロナウイルスよりも感染力が弱いので、医療用マスクがない場合、不織布マスクでよいのではないかと思われます)
(JETRO「サル痘感染者は増加、感染時は自己隔離を推奨」)
 

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