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レポート:レインボー・リール東京2023クロージング
7月17日(月祝)、レインボー・リール東京2023のスパイラルでの最終日の模様をレポートします。『幸運の犬』はファンの方が大勢詰めかけ、感動の嵐となりました。コンペもアバウトガールズさんの司会で大いに盛り上がりました。
7月15日(土)から始まった第31回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)@スパイラルホール。例年より1日短いこともあり、なんだかあっという間でしたが、17日(月祝)にスパイラルでの最終日を迎えました。この日も外は猛暑日でしたが、映画祭の会場には別の意味での「熱さ」が感じられました。
『ローンサム』『マット』の上映に続き、16:35からいよいよ、あのちくわフィルムの名作『幸運の犬』が上映されるということで、16時頃から大勢のゲイのファンの方たちが会場に来られました。おそらく映画祭に来るのは初めてではないかと見受けられる方も多かったです。ちくわフィルム出演者の方もちらほらホワイエ(ロビー)にいらしたので、さっそく、一緒に写真を撮ったりする光景も見られました。
作品の上映前に、今回の映画祭の作品紹介のダイジェスト映像が流れるのですが、『幸運の犬』の番になったときに会場から拍手が起こり、熱さを感じさせました。
いよいよあの大スクリーンでの上映が始まりました。みなさん真剣に、熱心にご覧になっていました。何度となくすすり泣きが漏れ聞こえました(私も、ストーリーを知ってるのに、やっぱり大泣きしました。あらためて名作だと思いました)
上映後、司会のアバウトガールズのお二人が登場し、「興奮の犬」とか「ハゲポン」とかマシンガンのようにボケをかましながら場をあたため、そして、監督&キャストのみなさんが登場しました。まちょ監督は、この『幸運の犬』は、ある方が語っていたお話をもとにした作品だと説明し、その方にオマージュを捧げる作品です、とおっしゃっていました。緊張ぎみだったTENさんは、子どもの頃演劇をやってたことがあると明かし、だからこそのあの演技なのね、と納得させました。そしてヒゲポンさんは、コロナの間に「自分の人生って何だったんだろう」と考えることがあり、それでちくわフィルムに応募した、なので、この映画は地でやってる部分が大きい、まさかこんな立派なスクリーンで上映される日が来るとは夢にも思っていなかった、感激です、と訥々と語り、温かな拍手が贈られました。その他、岳さん、大吉さん、千葉優人さん、ゲンキマン、星崎あゆさんといった出演者の方たちも登壇し、コメントしていました。
そしてお待ちかねのDICEさんが登場し(お顔はお見せできないのですが、素敵なヒゲの兄貴でした)、主題歌の『なきむし』の生歌を披露してくれました。スクリーンには、このライブのための映画のダイジェスト映像が流れ(最後のサビに入る前、映像でヒゲポンが「テン!」って叫ぶところだけ音声が生きて、その声が会場に流れるという素敵な演出も)、ライブの間にもすすり泣きが聞こえました。
イベント終了後、ロビーのフォトブースの前で、出演者のみなさんと一緒に写真を撮れるということで、大勢のファンの方たちが行列をつくり、最高の記念写真を撮っていました。推しの方と個別にお話したり握手したり写真を撮ったりする方も多く、熱気に満ちていました。
個人的には、コロナ禍の間に『すいか』『TIME』『クロスローズ』といった素敵なゲイ映画で僕らの心を癒してくれたちくわフィルムの作品が、今回、映画祭で日本作品の代表として選ばれ、あのオシャレな会場の大スクリーンで上映されたということだけでも感慨深かったですし、結果、大勢のゲイたちがホワイエを埋め尽くしたということにも感慨を覚えました(以前見られたような光景が再び見れました)
19:10からは、クロージングとしてレインボー・リール・コンペティションが行なわれました。公募の短編・中編作品の中から、観客の投票によってグランプリを決めるものです。
今年は浅沼さんや東海林さんなど当事者の監督さんが撮った作品が多く、また、同性婚のことなどLGBTQコミュニティの社会的課題をテーマにした作品や、ドラァグクイーンとの心の交流を描いた作品などもあり、とてもよかったです。今までになく、1票を選ぶのに迷ってしまうようなコンペだったのではないでしょうか。
主人公が『LGBTQ対応可』と言いながら同性愛者を差別しているフォトサロンに抗議しに行くことを通じてパートナーとの関係性にも変化が生まれていく様を描いた『Veils』、そのスピンオフで、お母さんが訪ねてくる日の朝のドタバタを描いた『カゾクノキョリ』、異性愛がマイノリティである逆転した世界を映像化することで、異性愛の観客に同性愛者が置かれた境遇のリアリティを感じてもらう(当事者の観客にとっては拍手モノの)『チェンジマイノリティ』、中高年の性的マイノリティによる持ち寄り食事会の様子を写し出し、今年のTRPでも上映されたドキュメンタリー『変わるまで、生きる』、世間の人たちがいかに異性愛主義や異性愛規範に強くとらわれているかということを、衝撃的に描いてみせた『フツー』、ベルリンを舞台に生きる女性カップルや、チャット・レディの仕事で生計を立てる女性の姿を描いた『GMT+9』、そしてドリアンさん出演のハートウォーミングな『ストレンジ』という、とても見応えのある、濃密な上映となりました。
何度かお伝えしているかもしれませんが、1997年の映画祭のコンペで審査委員長を務めたシモーヌ深雪さんが「映画としての出来よりも、当事者としての心意気を感じさせる作品が観たい」とおっしゃっていて、心に深く残っているのですが、今年のコンペでは、まさにそういう作品をたくさん観ることができた気がします。
再びアバウトガールズのお二人が登場し、投票の方法について説明、箱を持ったスタッフの方たちが会場を回りました(その間、お客さんに「どの作品がよかったですか?」と質問したり。秘密です、という方もいれば、『チェンジマイノリティ』がよかったです、という方もいました)
投票が終わると、上映作品の監督や出演者の方たちが登壇し、お一人ずつ映画についてコメントしました。
集計の結果、『GMT+9』がグランプリに輝き、(監督もほとんどの出演者の方もドイツにいるので)お母さん役の方が賞状と賞金を受け取りました。
最後に、映画祭の代表の宮沢さんが、「例年より短い期間で、あっという間でした。来週もあるのでぜひお越しください。最後までありがとうございました」とご挨拶しました。
こうして、3日間にわたるスパイラルでの映画祭が幕を閉じました(来週は渋谷ユーロライブでも上映されますので、ぜひ)
初日に宮沢さんが、「この映画祭で上映される映画が希望の種になることを祈っています」と語っていましたが、本当にそうで、今回の上映作品の一作一作が、LGBTQやHIVについてのまだ見たことのない光景を見せてくれたり、新鮮な感動や癒しを与えてくれました。「世の中捨てたもんじゃない」とか、「自分は独りじゃない」と思えるような、希望を感じられるような映画祭でした。
また、映画祭の醍醐味は、LGBTQのみなさんが同じ空間に集まり、一緒に映画を観て、同じところで笑ったり泣いたり、最後に拍手したりするアットホームな雰囲気にあると思うのですが、たぶん、今年初めて映画祭に参加したという方たちも、そういう素敵な空気感を感じてくださったと思います。また来年以降もそういう喜びや出会いが生まれるといいなと思います。
(取材・文:後藤純一)
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- 12.14SURF632
- 12.15PLUS+ -10th Anniversary-
- 12.15FOLSOM BLACK The Last of 2024