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レポート:金沢プライドウィーク2023(2)プライドパレード

10月7日〜9日、金沢で3回目となる「金沢プライドウィーク」が開催されました。今年はパレード前夜チャリティ企画「YES!NIGHT」とプライドパレードのレポートをお届けします。圧倒的なセレブ感と祝福感、ポジティブオーラが素晴らしかったです

レポート:金沢プライドウィーク2023(2)プライドパレード

 今年の「金沢プライドウィーク」は10月7日(土)〜9日(月祝)の3日間、行なわれました。 
 金沢プライドウィーク2023(1)に続き、最終日・9日の金沢プライドパレードの模様をレポートいたします。
 
 
ステージイベント

 10月9日(月祝)、金沢プライドパレードの開催日ですが、あいにくの雨模様となってしまいました。
 会場のしいのき緑地には巨大なテントが設置され、その中にステージと観客席が設けられていました。


 朝10時、司会のブルボンヌさんと小島慶子さん、共同代表のダイアナさんと権さんがご挨拶し、ステージイベントが始まりました。
 トップバッターは、北陸で活動するBlue Area(ブルーエリア)のお二人。ボーカルのまさみさんにはトランス男性のパートナーがいるそうです。「ルールならひとつだけ 幸せになること」といった、元気をくれるようなメッセージソングが胸に沁みました。

 続いて八方不美人のみなさんが登場し、『罰をくらえ愛で』『地べたの天使たち』『そこどいて!』をパワフルに歌い上げ、朝早いのに最高のパフォーマンスで盛り上げてくれました。「転んだ傷とあざの数」という歌詞が沁みまくったと小島さんが絶賛していました。

 それから、レインボーフェスタ!に続き、天道清貴さんが登場し、ライブを披露。雨降りだとどうしてもテンションが下がったりしがちだと思うのですが、清貴さんは、雨にも負けず、いつもよりさらにポジティブなオーラを放ち、本当に晴れやかな笑顔で歌ってくれていて、素晴らしかったです。

 そして、ステージイベントの白眉とも言える、明日佳さんの箏の演奏と加賀友禅のコラボ・パフォーマンスが繰り広げられました。明日佳さんがプライドイベントにふさわしい「Over the Rainbow」を演奏してくださり、しばらくしてミス加賀友禅(現役・歴代)の三名の方たちが美しい着物姿で登場、そして、ちあきホイみさん、ドリアン・ロロブリジーダさん、エスムラルダさんという八方不美人の三人も加賀友禅の着物を着て登場し、喝采を浴びました。六名が横に並ぶとレインボーカラーになっていて、これまた拍手が起こったのですが、さらに、ふだんはスカートもはかないしお化粧もしない二丁目のレズビアンバー「GOLD FINGER」のチガさんが黒留袖を着て登場し、ドラァグクイーンを上回るようなインパクトを与えました。




 ここからはゲストの方々のスピーチです。
 ロバート キャンベルさんは「ルールを決める人がもっと柔らかくなってほしい」「カミングアウトは自分のタイミングで。計算しなくちゃいけないけど、そうすることで、点が線になっていく」「金沢の文化をLGBTQを通して知ることができたのは面白い。昨日も、レインボー茶会が開かれた。いろんな流派の人が一緒に茶会をするというお話が素敵でした」といったお話をしてくださいました。

 乙武さんは、東京以外のプライドへの参加は初めてだそうで「金沢に初めて捧げます」と語りました。それから、20年前に杉山文野さんに出会った時のお話をしたあと、「まだまだ慣れが足りていない」「いるという事実は変わらないので、慣れてほしい。当たり前になってほしい。パレードがそういう機会になるはず」という素敵なお話をしてくださいました。

 
 アンミカさんとテッドさんが登場すると、会場全体がにわかにパッと明るくなったような気がしました。アンミカさんはTRPオンラインにリモートで参加したことはあるものの、リアルにパレードに参加するのは初めてだそうです。「イベントで雨が降ったことがない」と言って参加者を喜ばせ、「身近にLGBTQの友人がいっぱいいる、レスリー・キーさんもそう」「人間は愛なしに育っていくことはできない。だから誰もが幸せになる権利がある」「垣根がない。私は外国人やいろんな方を含めて地球メイトと呼んでいます。種の違いも超えるよね」「今日はみんなが幸せでいられるように。ありのままの自分で、100%の笑顔で」「愛って焚き火と一緒。言葉をくべて。愛の表現を続けてください」といった素敵コメントを怒涛のように届け、最後に「ハッピー、ラッキー、ラブ、スマイル、ピース、ドリーム!」で締めてくれました。


 石川県の馳浩知事が登壇し、「北陸は同調圧力が強いと言われるが、淀んだ空気をなんとか変えていこう」「今日はNTTやコカコーラ、金沢大学なども参加しています」と語りました。


 金沢市の村山卓市長が登壇し、「今回はレインボー茶会なども開催され、取組みの輪が広がっている」「市の人権教育・啓発行動計画の中で、性的マイノリティへの理解について盛り込んだ」「世間でも関心が高まっている。さらに大きな規模で、お互いを理解する知的レベルの高い改革を金沢で進めて参りたい」と語りました。


 それから、金沢プライドパレードに参加するためにわざわざ本国から駆けつけてくださったという駐日ベルギー大使のアントワーヌ・エヴラーさんと、パートナーのギレルモ・セルバンテスさんが登壇し、「今日ここにいられることに感謝。夫と一緒に平等実現のためのイベントに参加できてうれしい」「ベルギーは2003年、世界で2番目に同性婚を実現した」「結婚だけがゴールじゃない。ホモフォビアとの闘いは続いていく」「一緒に手を取り合っていきましょう。ハッピープライド!」と語りました。


 羽咋市の岸博一市長が登壇し、市の「男女が共に輝くまちづくりプラン」の中で性的マイノリティについても触れている、なかなか当事者のリアリティが見えないなか、権さんが、お父さんが羽咋市出身ということで、来て話してくれた、表に出てこれない、声を上げづらい環境を変え、少数者の意見を社会に反映させていきたい、と語りました。


 白山市の横川祐志副市長が登壇し、「性の多様性への社会の意識も変わってきた。関係者の皆様の活動のおかげです」「白山市ではパートナーシップ宣誓制度を実現し、次へと歩んでいきます」「皆様の益々のご発展を」と語りました。

 
プライドパレード

 アンミカさんのおかげで? というより、集まったみなさんの願いが天に届いたのでしょう、朝から降り続いていた雨がやみました!
 13時半、DJやドラァグクイーンの方々を乗せたフロートが到着し、先頭の横断幕を持ったみなさんが歩きはじめ、パレードがスタートしました。
 
 先頭の、金沢レインボープライドの代表の方たち、ゲストの方たち、JPN(各地のプライド主催者の方たち)のみなさんなどが歩く隊列に続き、3つのDJフロートが参加者のみなさんを先導しました。第1フロートは、DJ MAYOさん、バビ江さん、阿武虎さん。80sやダンスクラシックのハッピーな曲で盛り上がりました。第2フロートはDJ Iga-chan、ブルボンヌさん、八方不美人のみなさん。内外のプライドアンセムを中心としたHOUSEで盛り上がりました。第3フロートはDJ SHOさん、肉襦袢ゲブ美さん、ブッチャー・エルナンデスさん、花華院姫子さん、スプラッシュ浣子さん。やはりクラブミュージックで盛り上がりました。キャストのみなさんの多様さも光る(今回は初めてレズビアンのIga-chan(プライドハウス東京などで活躍する五十嵐ゆりさん)がDJに加わりました)、素敵なフロートでした。










 パレードの一行は、しいのき緑地から兼六園と金沢城の間の道へと進みます。石川橋から手を振ってくださる方たちもいらっしゃいました。橋場町では「森八」の若女将やスタッフのみなさんがパレードを出迎え、ずっと手を振ってくださいました。金沢文芸館のところを左に曲がり、近江町市場へと進み、いよいよメインの百万石通りに入っていくと、地元のみなさんか観光客のみなさんかわかりませんが、道行く大勢の方たちが、「ちょっと見て、あれアンミカさんじゃない?」みたいにキャーキャー騒ぎ、盛んに写真を撮ったり手を振ったりしてました。DJさんもここぞとばかりに盛り上がる曲をガンガンかけて、香林坊の辺りの盛り上がりは最高潮でした(個人的には五十嵐さんがDavid Guetta Feat. Kelly Rowlandの「When Love Takes Over」をかけてくれたのがアガりました)。なかには、クラブミュージックの楽しさにつられて、ずっとダンスしながらフロートについてきた女性もいました(ゴールまでずっと一緒だったので、パレードの趣旨なども含めてお話しました)
 これまでパレードは見送る側だったスタッフの方が、今回は一緒に歩いていて、本当にうれしそうに笑顔で「ハッピープライド!」と叫んでいたのも、なんだかジーンときました。
 朝は土砂降りだったのに、パレードの間は雨がすっかりやんで、みなさん本当にハッピーに、笑顔でパレードを歩き、しいのき緑地に帰ってきました。








パレードを終えて

 ゴールした後、すぐにゲストやキャストのみなさんがステージに上がりました。
 バビ江さんは、「最初は怪訝そうに見てた人も、こっちが笑顔で手を振ると笑顔で振り返してくれた」と語っていました。
 アンミカさんは、「みなさんの笑顔が幸せにつながった」「これからもみんなの笑顔を未来につないでいきましょう」とご挨拶し、乙武さんは「松中権さんのご両親が先頭を歩いていて、ここまで来るのにどれだけの物語があったかと思うと、涙を禁じえなかった」と語り、キャンベルさんは「保守的な、伝統の街でこんな素晴らしいパレードができた。ここから変えていこう」と語りました。
 松中さんから参加人数が発表され、ステージが200人、ブースが50人、パレードは過去最多の700人となったそうです(拍手)

 最後に、ステージ上から集合写真を撮って、お開きとなりました。


★金沢プライドパレードのフォトアルバムはこちら


今年の金沢プライドウィークを振り返って

 3年連続金沢のパレードに参加して、というか、「旅音」という古民家ゲストハウスでコタツに入りながら、みなさんが初めて「金沢でもパレードできるかしら…」と話していた時から参加していただけに、金沢プライドウィークがどんどんスゴいことになっていくのを見て、本当に感慨深く感じています。
 初回はコロナ禍の関係で、スケジュールが狂い、前半と後半で分断されるようなかたちになってしまったのですが、それでも、素晴らしく充実した勉強会やトークイベントが開催され(ゲストも豪華でした)、パレードもちゃんとDJフロートが出て、しっかりしたプライドイベントになっていました。
 2年目はさらに、地元の伝統産業の方たちとコラボして、金沢の伝統文化を楽しむ体験・ツアーなども開催。キャンベルさんなども「400年の歴史ある和菓子屋や加賀友禅、金沢の人々のアイデンティティのコアのところ、一丁目一番地、お爺さんの世代からの空間で無理なく協働していた」と絶賛していたように、保守的と言われる金沢の、伝統文化という市民のみなさんが大切にし、誇りに感じてきたところを虹色に変えていくとことで社会にしっかりLGBTQフレンドリーを根づかせていく手腕。2年目にしてそんな離れ業のようなことをやったというのが、本当にスゴいです。
 そして今年、和菓子屋さんや加賀友禅とのコラボ、ハイアットさんの支援も引き続き行なわれましたが、私がとても印象に残ったのは、パレードを含め3日間にわたる金沢プライドウィークの開催って、イベントもたくさんあるし、結構大変なはずなのに、スタッフの方たちがとても生き生きと笑顔で動いていたこと、そして、3年目にしてダイアナさんのパートナーさんがカミングアウトした(高齢のお母様もイベントに呼んだり)という勇気ある前進があったことです。2月にコミュニティセンターの開設と同時にゲイナイトも開催し、その時もみなさんすごく楽しそうでしたが(今回もパレードのフロートの盛り上がりを見て幸せそうにしていましたが)、「YES!NIGHT」とかも金沢一の豪華な会場で豪華ゲストが来られていた訳で、そういうイベントに携わることでやりがいも感じられるし、語弊を恐れずに言えば「楽しい」と思うんですよね。リブ的な活動ってともすると義務感や苦しさが先に立ったり、考え方の違いで分裂したり、喧嘩したり、心を病んだり、命を落としたりという悲しいことも過去にはあったわけですが、「楽しい」と感じられることや「参加者のみなさんの笑顔」を糧にできるような活動は、きっと長続きすると思うんです。そういう「楽しい」を実現したり、豪華ゲストを呼べたりするのは松中権さんというスーパーマンの力が大きいのかもしれませんが、こちらで立ち上げの経緯をご紹介したように、松中さん一人では決して実現できなかったわけで、ダイアナさんや直海さん、永井さん、安江さん、「にじはぐ石川」の助産師さん、「ひだまりの会」の奥村さんなど、いろんな素敵な方たちがつながり、コミュニティ的な結束が生まれ、金沢レインボープライドへと結実したわけです。メンバーのみなさんも、きっと慣れないうちは、うまくいかないことや苦労もたくさんあったと思うのですが、一つずつ達成感や成功体験を積み上げてきたんじゃないかと。3回目の今年はある程度要領もわかってきて、楽しむ余裕も生まれたでしょうし。新たに活躍するスタッフさんも見受けられましたし、ボランティアスタッフが200名も集まったというのもスゴいことです(楽しそうにしているところに人は集まるんですよね)
 そうやって金沢レインボープライドのみなさんが少しずつ、毎年何か新しいこと、スゴいことを実現して、メディアからも世間からも注目され、社会が変わっていき、いろんな方が協力してくれてまた素敵なことが実現して、という好循環につながっていると思います。ダイアナさんのパートナーさんがカミングアウトしたというのも、金沢レインボープライドの仲間たちがいたからこそ、勇気を出して一歩前に踏み出せたのだと思います。生きやすい社会の実現を、という気持ちを同じくしながら、楽しさでつながる仲間たちと一緒に、心の底からハッピーと思えるプライドイベントを作り上げていく様が、本当に素晴らしいと感じます。
 結果、金沢レインボープライドは、リブ的な「意義」だけでなく、ドラァグクイーンやクラブ的な楽しさ、地元のゲイバーの方たちとのつながり、そして、地元の伝統文化ともコラボし、他に類を見ない、魅力的な、遠方からも「行きたい」と思わせるようなプライドイベントを実現してきたと思います。これからも、さらに新しい、もっと魅力的な展開がありえるのではないでしょうか? 無限の可能性を感じさせます。
 
(取材・文:後藤純一)

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