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レポート:第2回とくしまプライドパレード&シンポジウム
11月11日、徳島市で昨年に続き、とくしまプライドパレード&シンポジウムが開催されました。レポートをお届けします。
昨年のレポートでもお伝えしましたが、「レインボーとくしまの会」の代表を務める長坂さんは2016年、当時30代だったゲイのお客さんが自死で亡くなるというつらい経験をしています。「結婚して子どもを持たなくては、と悩んでいた。孤独感を深めていたと思う」と長坂さんは語っています。男子中学生から「男の子が好きだけど、女性の気持ちを持っているわけではない」と電話相談を受けたこともあるそうです。「悩まなくていい。同じような人はたくさんいる」と答え、「自分の時と同じ。若い子も苦しんでいる。だからこそ、変えていきたい」との思いを強くしたそうです。2019年、お店に来られたアライのお客さんに背中を押され、市民団体「レインボーとくしまの会」を発足させました。12月に徳島市議会に同性パートナーシップ証明制度導入を求める陳情を提出し、採択され、翌年4月から制度がスタートしたほか、2020年には県内7市に陳情を提出しました。「声を上げなければ、性的少数者はいないものとされる。それが一番つらい。パートナーシップ制度は当事者が利用するかどうかではなく、制度として存在することが重要です」。長坂さんたちは、県内でまだ制度が導入されていない自治体がたくさんあり、住んでいる市町村で権利に差が出るのはおかしいとして県としての制度の導入が必要だとして、昨年、講演会とプライドパレードを開催したのでした。講演会では、登壇した勝野副知事が「今日のこの会がスタートだと思います。知事に(県としての制度導入を求める)このような要望があったということを伝えます」と語りました。
その後、「レインボーとくしまの会」は11月に制度の導入を求める請願を件に提出し、今年3月、県議会で採択されました。そして今年6月、後藤田知事が、来年4月の導入に向けて、今年度中に要綱を策定する意向を明らかにしました。
「レインボーとくしまの会」の活動が実を結んだこと、実際に動いてきた方々の姿を目の当たりにしていただけに、本当に喜ばしく、おめでとうございます!と申し上げたい気持ちになりました。
そして9月、今年もとくしまプライドパレード&シンポジウムが開催されるとのアナウンスがありました(また、長坂さんが来年2月、結婚式をあげるというお知らせもありました)ので、いろいろお祝いも兼ねて、徳島へ行くことにしました。
11月10日(金)、前の週とは打って変わって涼しい…というか肌寒い週末になりましたが、徳島は南国なので、そこまで厚着しなくても過ごせる感じでした(一応パーカーも持って行ったのですが、着なくてすみました)
飛行機が1時間くらい遅れて、徳島駅に到着したのが20時過ぎ。駅前のホテルにチェックインした後、長坂さんがマスターをつとめるバー「BITCH」に向かいました(去年来ているので道もなんとなく憶えてました)。今年は前夜祭のパーティなどはなかったのですが(10月末にハロウィンパーティを開催したそうです)、そのぶん、ゆっくりお話することができました。長坂さんが市議や県議など約200人の議員さんに一人ひとり会ってお話しして、初めは難色を示していた方も考えが変わり、制度実現につなげていったというお話などを聞き、本当に頭が下がる思いでした。一方で、ご自身もドラァグクイーン・スダチーナである長坂さんが、いつかはパレードと合わせてドラァグクイーンのイベントをやりたい、ともおっしゃっていて、「その時を楽しみにしています」ともお話しました。徳島は大きなクラブもなく、なかなか難しいようですが、なんとか実現できたらいいなと思います。
シンポジウム
11日(土)13時半、徳島駅前のショッピングセンター「amico」の中にあるシビックセンターホールで、シンポジウム「誰もがありのままで暮らしていける徳島県の実現に向けて」が開催されました。
会場の入り口には、いくつかの市町の首長さんから寄せられたメッセージが掲示されていました。レインボーカラーをアレンジした用紙だったり、LGBT理解増進法に触れる内容だったり、独自のカラーがうかがえました。
会場の後方には大きな手描きのレインボーフラッグが掲げられ、スクリーンでは、昨年出演してくださった東ちづるさんが率いる一般社団法人Get in touchが制作した啓発DVD『自分が自分らしく生きるために』が上映されていました(映画『私はワタシ over the rainbow』がベースになっていて、はるな愛さんはじめたくさんの当事者の方が出演しています。ラストは長谷川さんのポエトリーリーディングで締めくくられていて、ジーンときました)
ばんどうさんという方の司会でシンポジウムがスタート。初めに会の代表・長坂さんがご挨拶しました。13年前、パートナーと一緒に住むための部屋を借りれなかった、8年前、パートナーが入院したときは家族として面会することが認められなかった、今も住みにくさを感じている当事者は多く、自分自身も徳島から出ることも考えたが、徳島の仲間のために残ってお店を続けている、どうしたら社会を変えることができるのだろうかと考えているとき、SAG徳島の方たちが来られて、一緒に何かしようと言ってくれた、命と人権を守るための制度が必要だと思い、会を立ち上げた、日本では同性婚が認められておらず、パートナーシップ制度が唯一、これを徳島で実現するために、県内の自治体の議会に請願・陳情を行ない、訴えてきた、そうして7市2町で実現したが、まだ15市町が残っている、昨年、シンポジウムでを開催し、その時の議論のおかげで県知事がやると言ってくれた、全ての人が自分らしく生きられる社会の実現のために、LGBTQへの理解を深め、制度も広がっていくことを願う、という、5分とは思えない、実に的確にまとめられた(徳島弁も交えた)素晴らしいスピーチでした。
続けて、後藤田県知事の祝辞が述べられました。知事は来られなかったのですが、未来創世文化部の佐藤氏が祝辞を代読しました。「レインボーとくしまの会の皆さまにおかれましては、2019年以来、性的少数者が自分らしく安心に生活できるよう、熱心に活動されてきたこと、御礼申し上げます。本年、LGBT理解増進法が施行され、全ての国民が人権尊重の理念に基づき、性の多様性への理解を増進することが求められ、地方自治体も国と連携し、施策を進めます」「来年、県としてパートナーシップ制度の運用を始めます」「今後も性的指向・ジェンダーアイデンティティなどにかかわらず誰もが尊重されるよう、多様性への理解に取り組むとともに、レインボーとくしまの会のご発展とご健勝をお祈りします」といったメッセージでした。
それから、鳴門教育大の葛西真記子教授と堀井秀和弁護士(LGBT支援法律家ネットワークにも参加している方だそうです)によるパネルトークが行なわれました。初めに、今年成立したLGBT理解増進法について、堀井弁護士が法律の専門家として見解を述べました(法律自体はシンプルであり、国や自治体は手を抜くこともできるし頑張ることもできる、100年後も理解が進んでないと言い張れる、3年後に見直しを行なうという附則があるが、いい方向に変わるとは限らない、こういう啓発の法律は罰則はないので、きちんと取組みをチェックしないと後回しにされがち、などなど)。それから、県が来年4月から宣誓制度を導入する件や、先日の最高裁大法廷の特例法要件違憲判決のスゴさ(2019年は合憲と言ってたのにわずか数年でひっくり返したのはスゴい)について語られました。
鳴門教育大学・葛西真記子教授が代表を務める性的マイノリティ支援団体「SAG徳島」に参加するトランス女性のりょうさん・ぐっちさんと、レインボーとくしまのかおりさん・長坂さんが登壇し、パネルトークが行なわれました。当事者として徳島は住みやすいかどうか、困り事は何か、といったことが話し合われました。りょうさんは大阪から鳴門市に来て、ホルモン治療が受けられる病院がどこかわからなかったそうですが、グループカウンセリングで同じ当事者から教えてもらえた、と語りました。ぐっちさんは、神戸で受けた教員試験で男性の会場に割り当てられるという苦痛を体験し、それに比べて徳島は温かい、住みやすいと語っていたのが印象的でした。かおりさんは徳島が地元ですが、結婚しないの?子どもは?とあらゆる人に聞かれるのが悩ましい、結婚して一人前だと言うなら「半人前」のバッジをつけていたいと語っていました。長坂さんは、80年代までは病気扱いでテレビでも差別され、バレないように生きるしかなかったが、今はだいぶ変わって普通に接してくれるようになった、議員さん200人に会って、最初は「西日本でパートナーシップ制度なんてやってるところがない」と言われたが、「ないから作るんです」「住みたくなる街にしましょうよ」と説得した、教員に「LGBTなんて見たことない」と言われたが、「あなたが信用ないだけです。子どものほうが理解あるんです」と返した、来年結婚式を挙げる、いまだに同性結婚式を断るホテルもあるから、NHKの取材も入る予定なのでぜひ観てほしい、住みやすい社会になるまで声を上げ続ける、と語りました。
質疑応答では、阿南市在住の方が、周囲の人の差別的な言動がつらい、と語るなどしました。
最後に、SAG徳島に参加する学生の方たちが登場し、「徳島を住みやすい場所にしたい」など、一言ずつコメントしました。
パレード
シンポジウムが終わってすぐ、16時から駅前でパレードが行なわれました。
今年も「amico」の向かいの広場を出発し、ホテルクレメントの前を通って徳島駅に沿って右手へと回り、歩道橋の上から駅前の人々に向けてアピールした後、元の広場に戻るという距離にして200mくらいの(おそらく日本最短だと思われる)歩道を歩くかたちのパレードでしたが、パレード隊列と伴走する車のスピーカーから音楽や感動的なマイク・アナウンスが流れ、駅前にいた方はみなさん、パレードを見聞きしたと思います。地方都市は駅前をちょっと離れると人がほとんど歩いていないということも多いので、逆に駅前にとどまり、歩道橋の上から車や道行く人々に向かってアピールするほうが効果的だという「コペルニクス的転回」的な発想のパレードでした。
みなさん盛んにレインボーフラッグを振ったり、手を振ったり、「ハッピープライド!」と言ったりして、とても元気に、楽しそうに行進していました。120名を超える参加者のみなさんの曇りのない晴れやかな笑顔やポジティブな空気感は、きっと沿道の人にも好意的に受け止められたのではないかと思います。
当日はNHKや徳島新聞なども取材に来ていて、早速ニュースになっていました。
★第2回とくしまプライドパレード&シンポジウムのフォトアルバムはこちら
徳島へおいでんよ
ぜひ旅行も兼ねて地方の街のパレードへ!という趣旨で、パレードレポートに合わせて観光情報もお伝えしたいと思います。
徳島の駅前は、ヤシの木がたくさん並んでいて、それだけでも南国ムード満点で素敵なのですが、駅前から真っ直ぐ大きな通り(新町橋通り)が眉山という山に向かってドーンとあって、ここが阿波踊りのステージなわけですが、そのドンツキが「阿波おどり会館」で、ここで阿波おどりの実演を見たりすることもできますし、ロープウェイで眉山に登り、街の景色を楽しんだりもできます。
駅の反対側には徳島城跡の中央公園が広がっています。昔お城があった場所は鬱蒼とした森になっていて、そこをぐるりと囲むように、お城へと通じる石橋、石垣、門、徳島城を築城した蜂須賀家政公の銅像、徳島の歴史を知ることができる博物館や隣接する美しい庭園、SL、野外彫刻、バラ園、文学碑、貝塚の跡など様々なスポットが点在しています。のんびり散策するにはとてもよい所です。
駅前も飲食店などはあるのですが、バー「Bitch」のある秋田町の辺りが繁華街で、居酒屋などが多数、軒を連ねていて賑やかです。ゲイバーは「Bitch」のほかにもう1軒、「恋月夜」というお店もあります。
地下鉄や路面電車はないので、車がなければバスかレンタサイクルを利用しましょう。でも街がそんなに大きいわけでもないので、飲みに行って、駅前のホテルまで歩いて帰るとかも全然可能です。それかタクシーに乗っちゃうか、ですね。
今回、意外と寒かったですし、少し時間ができたので、「あらたえの湯」というスパ銭に行ってみました。駅前からバスで15分くらい、バス停を降りてすぐだったので、行きやすかったです。中はとてもきれいで、露天エリアに何種類もお風呂があり(寝湯とか)、ジャグジーもサウナもあり、別料金ですが岩盤浴もあって、なかなかよいお風呂でした。
徳島は食べ物も美味しいです。駅前から斜めにのびる一番町商店街の「さわらぎ」というレトロなごはん屋さんで阿波尾鶏をいただいたり、空港で徳島ラーメンを食べたりしました。お土産で「すだちゼリー」と「阿波ういろう」を買ったのですが(セブンイレブンでたくさんお土産を売ってて便利でした)、好評でした。
徳島市から(空港から)電車やバスで鳴門市に向かうと、鳴門のうず潮を見学できたりします。大塚国際美術館という素敵な美術館もあります。
また、大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)渓谷で知られる秘境・祖谷渓には「ホテル祖谷温泉」というずいぶん前からパレードに協賛したりしているLGBTフレンドリーホテルがあったりします。
もう1泊してこうした名所まで足をのばすと、かなり充実した旅になりそうです。
というわけで、いつかぜひ、徳島のパレードにおいでください。
INDEX
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- レポート:あったかゼンタイイベント「SK!N」
- レポート:GO 20’ Next!〜aktaのこれまで、これから展
- レポート:BUFF Fetish Fighters
- レポート:Midsumma Pride March @Melbourne
- 特集:レインボーイベント2024(上半期)
- 特集:2024年2月の映画・ドラマ
- 特集:2024年初春のクィア・アート展
- 2024年新春のオススメ演劇作品:『インヘリタンス-継承-』『こころ、心、ココロ』など
- レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2023」
- 特集:2024年1月の映画・ドラマ
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- 特集:クリスマス&年越しイベント 2023→2024
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