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レポート:プライドクルーズ大阪2025
5月17日(土)、大阪で4回目を数える「プライドクルーズ大阪2025」が開催されました。雨も奇跡的に上がり、参加者のみなさんはたくさんのフラッグをたなびかせながら水上をパレードしました。景色もよく、川を渡る風も心地よく、開放感や高揚感を味わえる、とても楽しいパレードでした! 今年初めてエイサーの演舞も行なわれました

プライドクルーズ大阪とは
プライドクルーズ大阪は、2022年6月、西日本初の常設のLGBTQセンターとなるプライドセンター大阪のグランドオープン記念イベントとして初開催されました(詳細はこちら)。アムステルダムの運河パレードのように船に乗り、さまざまなセクシュアリティのフラッグを掲げ、中之島を一周する水上パレードで、対岸には翌日に「結婚の自由をすべての人に」訴訟の判決を控えた大阪地裁もあり、これまで頑張ってきた原告のみなさんへのエールの気持ち、そして勝訴を祈願する意味も込められたプライドパレードでした。
翌年は5月末の日曜に開催され、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告の坂田麻智さん&テレサさんカップルも参加し、同性婚実現への願いを込めてご挨拶していました(詳細はこちら)
このように、プライドクルーズは「プライドセンター大阪」が開設したことを広く知ってもらうことやLGBTQの可視化ということだけでなく、同性婚実現への思いをはじめLGBTQの社会的課題を世間の人々に訴えることを主眼として、水の都・大阪らしいスタイルのレインボーイベントとして開催されてきたのです。
例年5月は各地でプライドイベントがたくさん開催される時期で(今回の5月17日も秋田、名古屋のプライドと同じ日でした)、昨年はNLGR+とも重なっていましたし、大阪では10月にレインボーフェスタ!もありますし、なかなかプライドクルーズ大阪にお伺いする機会がなかったのですが、今年こそは参加したいと思い、(ANAの減額マイルキャンペーンを利用して)大阪に飛びました。(※名古屋レインボーパレードは岐阜のVENさんに取材をお願いしましたので、近く、レポートをお届けします。全国のプライドを熱心に取材している秋山理央さんは秋田に行っていて、よく顔を合わせる3人が3箇所に分かれて取材ということになりました)
プライドクルーズ大阪2025レポート
待望のプライドクルーズ大阪。船に乗っての水上パレードはさぞかし気持ちいいだろうなと期待していたのですが、天気予報をチェックするたびに雲行きがどんどん怪しくなっていき、前日には、17日土曜は一日中傘マークという最悪の予報になっていました。陸上のパレードなら傘をさしながら歩くこともできますが、船だとさすがに傘はさせませんし、雨合羽を着て乗るしかない、しかし、カメラを濡らすわけにはいかないので(過去に2回、雨でカメラを壊しているので、本当に気をつけないと…)、乗船をあきらめて川岸から撮影するか…などと悩み、頭を抱えていました。わざわざ大阪に来たのに、パレードの写真が思うように撮れないとなると、何のために来たのかわかりません…「絶望」という言葉が頭をよぎりました。
前夜の金曜日、予報よりも少し早く、21時頃から雨が降り始めました。
土曜の10時頃、ホテルを出た時はザーザー降りでした。ダイソーで雨合羽を買い、本当に憂鬱な気持ちで天満橋に向かいました。ところが、電車を降りて、天満橋の駅から外に出ると、なんと!雨がやんでいたのです!(みなさんの日頃の行ないのよさ。そして神様が味方してくれたんだと思います)
外に出ると八軒屋の船着場があり(江戸時代、淀川を京都まで行き来して栄えた船着場。『東海道中膝栗毛』の弥次さん・喜多さん(二人が交際していたと言われていたことが『真夜中の弥次さん喜多さん』の誕生につながります)が大阪上陸の第一歩を踏みしめた場所としても知られています)、少し川沿いに歩くと、今回の会場の「川の駅はちけんや」がありました。受付で乗船に必要なリストバンドを巻いていただき、中に入ると、いろんなブースが出ていたり、テーブルや椅子が並んだイベント会場になっていました。初めにブースをご紹介します。
それから、ブースではないのですが、ドキュメンタリー映画『Coming Out Story』でフィーチャーされ、2022年のトランスジェンダー国会にも登壇した土肥いつきさんが、ご自身が主催する「トランスジェンダー生徒交流会」の生徒さんたちと一緒に来られていました。交流会ではキャンプや合宿をして海で泳いだりもするのですが、それはトランスの生徒にとって着替えと水泳は鬼門なので、安心して泳ぎを体験してほしいという思いからだそう。生徒さんたちもとてもイキイキしてて素敵でした。(写真はないです。すみません)
11時の開会の挨拶に続き、12時からは村木さんと有田さんが登壇し、プライドセンター大阪に関するトークセッションが行なわれました。
コロナ禍でバーなどが閉まり、集まることができず、孤立することが多くなったLGBTQの居場所づくり、コミュニティ支援活動のためにセンターが必要だと強く感じた村木さんが、企業協賛を集め、QWRC(クオーク)の協力も得てセンターを立ち上げたという経緯を語りました。場所の選定に際し、癒しが大事だということで、緑豊かで川も近い天満橋の物件を選んだんだそう。プライドセンター大阪では「癒し」が重視されていて、レインボーカラーのうちのオレンジ(「癒し」という意味を担っています)をイメージカラーにしているのもそういう意味です。センターは「REMEDY FOR ALL」というフレーズを掲げて活動していますが、「救済のブーケ(Bouquet of remedies)」という言葉もあるように、「REMEDY」はとてもいい言葉なのでもっと浸透したらいいと思う、とも語っていました。
それから、今回のクルーズのロゴができたということで、説明がありました。このマークは何を意味してるでしょう?と会場の方に聞いて、高校生が「梅の花!」と答えたりして、ほのぼの、アットホームな雰囲気でした。
13時半からはMarriage For All Japanのトークセッションが行なわれました。このトークセッションを聴きにきましたという方たちもいらしたくらい、注目を集めていました。前の方に座っていた外国人の方なども熱心に聴いていました。
登壇した三輪弁護士は「結婚の自由をすべての人に」訴訟大阪弁護団の一員であるとともに、Marriage For All Japanの共同代表も務め、完全ボランティアでこの任務に当たってきました(最高裁で違憲判決が出て同性婚が実現したあかつきには、ヒーローとして讃えられるべきでしょう)
これまでの判決の説明、とても簡潔にわかりやすかったです。それから「どうなる最高裁?」という、みんなが気になっているお話。いつ判決が出るかは全くわからないそうです。それから、いまの最高裁の今崎長官は憲法記念日の談話で性別変更や同性婚など多様性をめぐる裁判について「そのような申立てをしている方と、逆にそれに反対している側の当事者が必ずいるわけであり、両方の声を公平にすくい取って公正な判断をするというのが我々の仕事です」と答えており、油断はならない、というお話もありました。最高裁判決のときには全国5箇所の原告・弁護団の方たちが集結するため交通費が相当かさむのですが、足りなくなる可能性が…よろしければ寄付をお願いします、とのことでした。
出航セレモニーとして新宿エイサー「新虹」関西支部のみなさんによる演舞が行なわれました。屋外の広いエリアにこそふさわしいパフォーマンス。道ゆく人たちもしげしげと見ていました。「新虹」のみなさんはレインボーフェスタなどいろんなプライドイベントに参加していますが、プライドクルーズは今回が初参加だそうです。(写真はないです。すみません)
この頃には日も差してきて、奇跡を感じましたし、キャップも日焼け止めもコインロッカーに置いてきたことを後悔するはめに…。
いよいよ、乗船の時間がやってきました。リストバンドがレインボーな5色になっていて、色ごとに5艘の船にわかれて乗船します。私は先頭の船に乗せていただきました。Marriage For All Japanの三輪さん・大畑さん、ReBitの薬師さん、TransgenderJapanの村田さん、プライドハウス東京の時枝さん、レインボーフェスタのゆいにゃん・サルヴァトーレ・忍者さん、神戸レインボーフェスタの新井さん&田辺さん、レインボーフェスタ和歌山の方、岸和田レインボーパレードの津田さん、エースホテル京都の池内さんなどが乗っていました。さまざまなセクシュアリティのフラッグや団体のフラッグをたなびかせ、マイクで「ハッピープライド」「同性婚ええんちゃう」などとアピールしながら土佐堀川をパレードしました(レインボーファミリーで育った小学生の子が「みんなで同性婚を求めよう」と言ってたのがかわいかったです)。中之島バラ園を散策していた方たちや橋の上にいた方なども手を振ってくれたりしました。
景色もよく、川を渡る風も心地よく、開放感や高揚感を味わえる、とても楽しいパレードでした。風が強くなってきたとき、ゆいにゃんさんが「つけまつげ飛びそう」と言ってて思わず笑ってしまいました(無事に飛ばずに済んだようです。強力なまつげのりでよかった。三善のドンピシャンかな?)
★水上パレードのフォトアルバムはこちら
通常のパレードだと何キロかのコースを歩くわけですが、この船に乗ってのパレードなら、脚が悪い方や車椅子の方などが置いていかれることなく楽に参加できそうですし、こんな遊覧船も出ているような景色のいい場所でクルーズを楽しめるなら毎年参加したいくらいだと思いました。みなさんも来年はぜひ!
トークセッションのなかで「今年は5艘です」「アムステルダムは80艘くらい船が出るのでいずれは大阪も」「毎年1艘ずつ増えたらいいんちゃう」「あと75年かかりますね」という漫談?がありましたが、年1艘といわず、もっとたくさんフロートが増えて、華やかに盛り上がって、観光客が来るくらいのパレードになったらいいなぁと思いました。
初参加のプライドクルーズ大阪でしたが、会場にはアットホームで和気藹々とした雰囲気が感じられ、(レインボーフェスタ!もそうですが)ちゃんとプライドイベントであると同時に、大阪らしい温かさや手作り感やコミュニティ感、みんなで楽しもう!という気持ちや心配りも感じられて、とてもよかったです。元気がもらえました。
プライドセンター再訪
オープン当初に取材したのですが、その後、移転したと聞いていたので、今回、再訪しました。
受付に英語対応スタッフと思しき方もいらっしゃって、新しいと思いました(万博もあるし、『ニューヨーク・タイムズ』でも紹介されたので、海外からの来場者が増えてるんでしょうね)。中の様子はそれほど大きくは変わってないように見えますが、本が750冊に増えたそうです。「なにたべ」とか漫画も充実してますし、Wi-Fiも使えます(実は予約していた20時の飛行機が「運航の見込みが立っていません」とのメールが入り、詳細を確認したり、慌てて新幹線の予約が取れそうかどうか調べたり、自分のiCloudの中の情報も見ないといけなくて、Wi-Fiがあって本当に助かりました)
クルーズ帰りの方もたくさんいらしてましたし、3歳くらいのお子さんから70代くらいの方まで、実に幅広い、いろんな方が来られてました。友達としゃべったり、一人で静かに過ごしたり、みなさん自由に思い思いに過ごしていました。
一度行ってみて、アットホームな雰囲気を感じたり、スタッフの方に何か相談したりすると、きっとセンターの良さや魅力が実感できるんじゃないでしょうか。リピート率も高いそうです。
堂山にはお馴染みの「dista」もありますが、例えば職場で差別に遭ったとか、プライドセンターのほうが相談しやすい話もあると思います。まだの方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。夜行くとレインボーにライトアップされた噴水ショーが見れたりするそうです。
プライドセンター大阪
開館時間:月木金土(祝日・臨時休館日を除く)15:00-20:00
住所:大阪府大阪市北区天満2-1-6 天満橋MSビル2F(Osaka Metro谷町線、京阪本線「天満橋駅」から徒歩5分)
(取材・文・写真:後藤純一)
INDEX
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