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特集:2026年10月上映のクィア映画
2026年10月に上映されるLGBTQ関連の映画の情報をお伝えします。今月は、70年代にドイツのゲイ解放運動を牽引した伝説のローザ・フォン・プラウンハイムの特集上映として貴重な作品が日本初公開されるほか、テディ賞を受賞したアニメ作品『レズビアン・スペース・プリンセス』なども上映されます

(『歪んでいるのは同性愛者ではなく、彼らが生きる社会のほうだ』より)
気がつけば、はや10月です。芸術の秋。お出かけもしやすい季節。というわけで、この10月に上映されるLGBTQ(クィア)関連の映画やドラマをご紹介します。今月は、70年代にドイツのゲイ解放運動を牽引した伝説のローザ・フォン・プラウンハイムの特集上映として貴重な作品が日本初公開されるほか、テディ賞を受賞したアニメ作品『レズビアン・スペース・プリンセス』なども上映されます。また新しい情報も入ってくると思いますので、わかり次第、追加・更新していきます。
ちなみに10月1日は「ファーストデー」。多くの映画館で1100円〜1300円で映画を観ることができます(特別上映等を除く)。『3670』『沼影市民プール』なども絶賛上映中です。
(最終更新日:2025年9月29日)
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<今月のトピック>
★スーパー・ガチムチマンがゲイをノンケ化するウイルスの拡散を止めるために立ち上がるアクション・アニメ『ジム・クイーン』
パリのゲイ・シーンを象徴する超バルクマッチョなジムが突然、ゲイを異性愛者(ヘテロセクシュアル)に買えてしまうウイルス「エテローゼ(ヘテローズ)」に感染してしまい、ゲイたちが大騒ぎ。周囲から孤立したジムは、最後のフォロワーであり初代の崇拝者でもあるリュシアンとともに、ウイルスの拡散を止められる手立てを探す旅に出ます。『ジム・クイーン』は規範の転覆を軸に、異性愛規範、ゲイカルチャーのコード、そしてコミュニティ内の排除メカニズムを問うことを試みるようなエンターテインメント作品。監督のマルコ・グエンはパリのLGBTQコミュニティの経験、とりわけクィアなパーティや社交場での体験に基づき、それらの場面と登場人物に深みを与えています。カンヌ映画祭2026のミッドナイトセレクションでプレミア上映されて評判を呼んだ本作は、さっそく欧米のいろんな国で配給され、台湾でも10月からの上映が決まっています(さすがはLGBTQ先進国)。日本でも早く上映されますように!
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上映中
3670
脱北者であり、ゲイであるという「二重のマイノリティ」性を抱える青年チョルジュンを主人公に、彼がおずおずと鍾路(チョンノ)のゲイコミュニティへ足を踏み入れていく様や、友情、純愛、「二丁目的なもの」のリアルを描いた映画『3670』(レビューはこちら)。今年2月のアジアンクィア映画祭(AQFF)で上映され、会場が満員になるほど熱い注目を集めた作品が、めでたく劇場公開されることになりました。配給はAQFFを主催するレズビアンの方が立ち上げたショートレッグフィルム(『3670』が初の配給作品となります。このあと『宵闇の火花』の配給も決まっています)。そういう意味でも素晴らしい作品ですので、ぜひご覧ください。
<あらすじ>
北朝鮮から脱北したゲイの青年チョルジュンは、脱北者同士の強い絆に支えられながらも、自身がゲイであることを隠したまま深い孤独を抱えていた。韓国社会にも脱北者コミュニティにも完全には居場所を見出せずにいた彼は、やがてソウルの活気あるゲイコミュニティに足を踏み入れ、人懐っこい青年ヨンジュンと出会う。ヨンジュンとの関係をきっかけに、初めての仲間、初めてのつながりを得ながら、少しずつ世界を広げていくチョルジュンだったが……。
3670
2025年/韓国/124分/カラー/監督・脚本・編集:パク・ジュンホ/出演:チョ・ユヒョン、キム・ヒョンモクほか/配給:ショートレッグフィルム
2026年9月25日(金)渋谷ホワイトシネクイント、10月9日(金)アップリンク京都、ほか順次拡大公開
上映中
沼影市民プール
海のない街のプールとして50年超にわたって愛されてきたさいたま市の沼影市民プールが、ある日突然、取り壊しを宣言され、市民から反対運動が巻き起こり…という顛末を追ったドキュメンタリー映画『沼影市民プール』が9月に公開されます。沼影市民プールは「沼プー」の愛称で(神宮プールなきあと)芝プーやリバプー、元プーなどとともにゲイの間で人気を博したプールだったと思いますが、スゴいのは、この映画の中で、沼プーの常連だったおじさんがプールサイドで巨漢の男性(荒岡龍星さんが演じています)と出会い、カップルになり、それだけでなく、親御さんにも恋人を紹介し、というフィクションパートが盛り込まれているところです(予告編にもそのシーンが入っています)。監督の太田信吾さんは、「このプールが日本のゲイコミュニティにおいて非常に有名な交流の場(クルージングスポット)であったことを知り、その側面を作品に反映させるべきだと考えた」と語っています。出演者のToshi Douglasさんが実際のプール利用者で、家族にカミングアウトしていない状況だったことに触れて「『演技』という行為には、現実の自分と距離を置き、自身の人生の可能性を探索する力がある。プライバシーを保護しつつ、彼が自分自身を客観的に見つめるための手段として、ドラマの要素を取り入れた」とも(映画ナタリー「モナキのサカイJr.や荻野由佳ら推薦、太田信吾の監督作「沼影市民プール」に22名コメント」より)。6月の台北映画祭にも出品され、チケットが売り切れるほどの人気を博したという注目作です。(レビューはこちら)(こちらのニュースもご覧ください)
沼影市民プール
2025年/日本/80分/監督:太田信吾
9月5日よりシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開
上映中
ナギダイアリー
今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されて話題になった作品です。深田晃司監督が岸田國士戯曲賞を受賞した平田オリザさんの代表作『東京ノート』に着想を得て脚本を執筆し、岡山県奈義町をモデルにした「ナギ」を舞台に新たな物語を描き、企画の立ち上げから9年の歳月をかけて完成させました。松たか子さんが、癒えない喪失を抱えながら彫刻制作に没頭する寄子という複雑なキャラクターを演じています(クィアの役です)。『Esquire』の「深田晃司監督作品『ナギダイアリー』量産型BLを吹き飛ばす衝撃作【カンヌ国際映画祭2026】」によると、今作は「“共感”とは何かを観客に問いかける、稀有なクィア映画」であり、量産されるBLを吹き飛ばすような「マイノリティ消費を徹底的に避け、社会と接続したクィア映画」です。松たか子さん演じつ寄子が、ストレートであろう義理の妹・友梨との対話の中で、過去に経験した残酷なことをぽつりぽつりと話し、それは真っ白なシャツでトマトソースのスパゲティを食べているときに点々とつくシミのような感じで、昨今目立つ量産型BLは、この「シミ」を漂白している、まるで社会的問題などないかのようにクィアの背景がきれいに「なかったこと」にされている、エンタメとして消費できるほど当事者が体感する恋愛の痛みはスイートではない、本作はそんな消費型クィア作品へ向けた、深田監督のアンチテーゼなのではないかと思うほど、ごまかさずに地方に生きるクィアのリアルを訴えてくる、と綴られています。「地方と都会。日本とアメリカ。女性と男性。大人と子ども。マイノリティとマジョリティ――。あらゆる非対称性に気づくのはいつも「ではない方」の側。自分のマイノリティ性に気づいたいっぽう、マジョリティ性には鈍感でいる都会人でストレートとして生きてきた友梨の視点を通じ、本当に“共感”するとはどういうことなのかを観る側は掘り下げざるを得なくなる」。この記事を読んだだけで、「絶対に観なくては」と思えます。
<あらすじ>
自然豊かな町・ナギで、ひとり創作に打ち込む彫刻家の寄子。ある日、東京と台湾で建築家として活躍する友梨が数日間の休暇をとり、別れた夫の姉である寄子のもとを訪れる。若くして妻を亡くした寄子の幼なじみ・好浩、息子の春樹とその親友・圭太など、人々との出会いは穏やかな日常に小さな揺らぎをもたらしていく。友梨は寄子の彫刻のモデルを毎晩つとめるなかで彼女の知られざる喪失に触れ、友梨自身にも変化が起こりはじめる。
ナギダイアリー
2026年/日本・フランス・シンガポール・フィリピン合作/110分/G/監督:深田晃司/出演:松たか子、松山ケンイチ、石橋静河ほか
放送中
付き合ってあげてもいいかな
国内で累計閲覧数1億view超えを突破し、アメリカ・タイ・ドイツ・韓国・台湾で翻訳版が発売、その後国内外で合計約100万部超えを記録し、8年連載のロングランヒットを経て、2025年に完結を迎えたGLコミックスの金字塔、たみふる氏の漫画「付き合ってあげてもいいかな」が、元モーニング娘。の鞘師里保さんと小西桜子さんのW主演でドラマ化されます。スゴいのは、山田佳奈さん(1〜3・6・8話)とともに監督をつとめるのが、自身もレズビアンである洪先恵(ホン・ソネ)さん(4・5・7話)だということです。洪先恵さんは韓国から日本に来て日本映画大学脚本コースを卒業後、テレビマンユニオンに入社し、ドキュメンタリーやスポーツ番組などのADとして働き、社内の企画に応募した脚本が見事に採用され、短編映画『サラバ、さらんへ、サラバ』を製作しました。茨城の⽥舎町に住む⼥⼦⾼⽣カップルの⽇常と別れを描いたこの短編は、海外の映画祭にも多数出品され、仁川のディアスポラ映画祭で観客賞を受賞し、ソウルのアーバン・フィルム・フェスティバルで作品賞を受賞するなどしました。これまでの日本のLGBTQ(クィア)を描くTVドラマは(LGBTQ監修などは入ったりするものの)スタッフにも役者にも当事者がほとんどいない状況で制作されてきており、リプレゼンテーションの点でダメダメでした。しかしここにきてようやく、当事者の方が監督することになりました。本当に画期的で素晴らしいことです。ぜひ4・5・7話にご注目ください。
<あらすじ>
大学生の犬塚みわ(小西)は、恋愛に強い憧れを抱きながらも、これまで一度も「うまくいった恋」を経験したことがなかった。好きになっても踏み出せず、踏み出しても気持ちを伝えきれない。そんな自分にどこか諦めを感じながら、大学生活をスタートさせる。そんな中、明るく社交的で、人との距離を取るのがうまい猿渡冴子(鞘師)と軽音サークルで出会う。性格も考え方も正反対の2人だが、ある日、お互いに「女性が好き」という共通点を知る。その確率の貴重さから、冴子の「付き合ってみない?」というなにげない一言をきっかけに、交際を始めることとなる。勢いから始まった関係は、最初こそ楽しく、新鮮で、軽やかだった。しかし、少しずつ深まる関係が、互いの価値観や不安、欲望を浮き彫りにしていく。「恋人」とは何なのか。「好き」という気持ちは、どこからきて、どこまで求めていいのか。話し合えば解決すると思っていたことが、話し合うほど複雑になっていく現実に、二人は戸惑い、傷つきながらも、自分自身と向き合い始める。やがて二人は、別々の道を選ぶことになり――。
付き合ってあげてもいいかな
MBS 9月10日(木)より毎週木曜深夜0:59-1:29 ※初回放送のみ5分押し
テレ玉 9月16日より毎週水曜深夜0:30-
ほか
(TVerの見逃し配信もあります)
10月2日公開
レズビアン・スペース・プリンセス
第75回ベルリン国際映画祭でテディ賞最優秀作品賞を受賞するなど多くの映画祭で絶賛され、有名な批評サイト「ロッテントマト」で批評家スコア98%の高評価を獲得した『レズビアン・スペース・プリンセス』は、内気な宇宙人の姫が元カノを救うため、銀河を巡る大冒険へと飛び出すクィアなSFコメディ・アドベンチャー・アニメーション作品です。監督・脚本を務めるのは、オーストラリアでクィアな物語と文化的多様性をユーモラスに描いてきたリーラ・ヴァーギースと、『トーク・トゥ・ミー』などA24作品にも参加経験を持つプロダクションデザイナーでアニメーターのエマ・ハフ・ホブス。「女性主体で、フレッシュな、自分たち視点の物語を作りたい」という2人の監督の想いから生まれた本作は、クィアカルチャー、現代社会へのシニカルなユーモア、あの『少女革命ウテナ』をはじめとしたアニメ愛が融合し、「自分を愛すること」への優しいまなざしが向けられた作品です。
<あらすじ>
レズビアンが治める惑星クリトポリス。この星は数千年にわたり、伝説の武器ラブリュスを呼び出す力をもつクリトピアンの一族によって統治されてきたが、内気なプリンセス・サイラだけはその力を使うことができない。23歳の誕生日、サイラは賞金稼ぎのガールフレンド・キキから、「愛が重すぎる」とフラれてしまう。ショックのあまり部屋に閉じこもって泣きじゃくるサイラのもとに、かつて宇宙最強を誇ったストレート・ホワイト・メイリエンズから、キキを救いたければ宇宙一危険な惑星までラブリュスを持って来いと脅迫の電話がかかってくる。サイラはネット掲示板の情報を頼りに、自分の内に眠るラブリュスを解放するべく、パリピの惑星・Sクラブ17を目指すことになる。壊れかけの宇宙船に乗り込んだ彼女は、道中で出会ったミュージシャン志望のウィローと共に、銀河を巡る大冒険を繰り広げる。
レズビアン・スペース・プリンセス
原題または英題:Lesbian Space Princess
2025年製作/オーストラリア/87分/G/監督:リーラ・バーギース、エマ・ハフ・ホブス
10月2日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開
~10月2日 大阪
10月10~16日 東京
10月16~29日 京都
きっと青春大革命!カルラ8年の記録
Normal Screenが配給する映画『きっと青春大革命!カルラ8年の記録』は、トランス男性の映画監督/研究者であるカニ・ラプエルタが、現代のメキシコを生きるトランスジェンダーの小学生がティーンへと成長していく8年間を共に紡ぎ、完成させた青春映画。監督は様々な“移行”の途中にあるカルラの日々と並走し、コミカルな演出と魔法を交えながら、ジェンダーの固定概念が強い小さな町で成長する思春期の葛藤と揺らぎを喜びに満ちた映画として結実させました。50以上の映画祭で上映され、モロディスト・キーウ国際映画祭、ラ・セレナ国際映画祭、子どもと若者映画祭で最優秀作品賞を受賞、メルボルン・クィア映画祭では最優秀デビュー・ドキュメンタリー賞に輝き、NYやミラノのクィア映画祭で特別表彰されています。7月に公開された作品ですが、今月もいくつかの映画館で上映が始まります(レビューはこちら)
<あらすじ>
メキシコシティの南にある町テポストラン。15歳のカルラが秘密のコクーンで監督のカニと話し合っている。「この映画をどんな作品にしたい?」2人はカルラの人生を小学生だった頃から時系列に振り返り始める。「男子」と「女子」のどちらの列にも並べなかった校庭、永遠にメイクの練習をしたベッドルーム、コロナ禍で学校が再開した朝、名前を正式に変更した市役所、プライドマーチで叫んだスローガン、憧れたバトン部。パンクでヒッピーだった料理人のママとパパ、友だち、監督のカニ、そしてクィアコミュニティと聖なる岩山に見守られながら、カルラがいろんな自分に出会っていく。交換日記のように心のうちを少しずつシェアしながら、カルラと本作を作った監督のカニ・ラプエルタ。トランスジェンダーの彼は、トランスの映画の作り手を見る機会が少ないことに気づき、自らも映像に登場することにした。
きっと青春大革命!カルラ8年の記録
原題:Niñxs
2025年/メキシコ・ドイツ合作/84分/監督カニ・ラプエルタ
~10月2日(金)シネ・ヌーヴォX(大阪)
10月10日(土)~16日(金)下高井戸シネマ (東京)
10月16日(金)~29日(木)アップリンク京都
10月3日 金沢
熱狂をこえて
金沢レインボープライドの連携イベントとして、シネモンドで『熱狂をこえて』が上映されます。映画上映後、松岡弘明監督と松中権さんによるトークイベントもあります。
熱狂をこえて
10月3日(土)19:30-21:45、シネモンドにて上映
10月9日 東京
歪んでいるのは同性愛者ではなく、彼らが生きる社会のほうだ
ゲーテ・インスティトゥート東京が特集上映「ローザ・フォン・プラウンハイムードイツ・クイア映画の先駆者」を実施。ニュー・ジャーマン・シネマの異才、ローザ・フォン・プラウンハイムの作品が4本、上映されます。
ローザ・フォン・プラウンハイム(1942–2025、本名:ホルガー・ミシュヴィツキー)は、ドイツの映画監督、作家であり、ドイツ語圏におけるゲイ・レズビアン解放運動の最も重要な先駆者の一人でした。彼の芸名「ローザ(Rosa/Pink)」は、ナチの強制収容所で同性愛者に付けられた識別胸章「ピンク・トライアングル(Rosa Winkel)」に由来しています。150本以上の作品を手がけたプラウンハイムは、50年以上にわたりクィア映画界を牽引し、芸術、挑発的表現、政治的アクティビズムを一貫して結びつけてきました。プラウンハイムはクィアの可視化を強く訴え続け、エイズ、歴史的抑圧、ジェンダー規範、老いといった様々なテーマを取り上げました。その対立を恐れない表現手法はしばしば論争を呼びましたが、LGBTQ+の権利運動、メディアにおける表象、そしてクィア映画への影響力は比類のないものです。昨年逝去したこの映画作家を追悼し、ゲーテ・インスティトゥート東京では、彼の初期作品『歪んでいるのは同性愛者ではなく、彼らが生きる社会のほうだ』と『ソーセージ枕』を日本語字幕付きで初上映します。併せて『アニタ 背徳のダンサー』および『アンダーグラウンド・イン・N.Y.』も上映し、多彩な才能を持った芸術家・LGBTQアクティビストの幅広い創作活動の一端をご紹介します。(公式サイトより)
『歪んでいるのは同性愛者ではなく、彼らが生きる社会のほうだ』は、公的な場においてゲイの人々が自ら不可視の存在となっている状況を痛烈に批判した作品であり、映画が実際に社会や政治に直接的な影響を与えた数少ない例の一つとして知られています。初上映後には50を超える活動家グループが結成され、現代ドイツのゲイ解放運動の基盤を築く契機となりました。本作は当初サイレントで撮影され、後から皮肉を込めたナレーションが加えられています。フィクションとドキュメンタリーの要素、マニフェストとエッセイを融合させたその構成は、最終的に集団的な自己組織化への直接的な呼びかけへと発展していきます。その実験的で開かれた形式は、あらゆる方向へ向けられた鋭い批判と同様に、今日なお挑発的で観る者に鋭い問いを投げかけています。
<あらすじ>
ダニエルとクレメンスは恋に落ち、同居を始め、異性愛者の一般的な結婚生活を模倣しようとする。しかし、4か月後にその関係が終わりを迎えると、ダニエルは次第にベルリンのゲイ・サブカルチャーへと深く入り込んでいく。彼はゲイ向けのカフェで働き、ゲイの集まる公園や公衆トイレを訪れるようになる。やがて女装者たちが集うバーでパウルと出会い、彼に誘われてゲイの共同生活コミューンに参加する。そこでは、ゲイとしての生き方やアイデンティティについて、既存の規範にとらわれないさまざまな可能性が議論されている。
歪んでいるのは同性愛者ではなく、彼らが生きる社会のほうだ
1971年/西ドイツ/67分/R-16/監督:ローザ・フォン・プラウンハイム/出演: ベルント・フォイアーヘルム、ベリト・ボーレン、エルンスト・クフリングほか
10月9日(金)19:00-、ゲーテ・インスティトゥート東京ホールで上映 ※上映後、ヤン・キューネムント&渋谷
10月10日 東京
ソーセージ枕
特集「ローザ・フォン・プラウンハイムードイツ・クイア映画の先駆者」の一環で上映される『ソーセージ枕』は、プラウンハイムの長編第2作。当時のドイツではまだほとんど知られていなかった「キャンプ(Camp)」の美学が積極的に取り入れられています。ドラァグ・パフォーマンスの歴史、さらには近代英国のゲイ・サブカルチャーと深く結びつくキャンプとは、誇張や悪趣味をあえて用いることで社会規範を風刺する表現実践であり、クィアな抵抗の戦略として理解されてきました。本作はそうしたキャンプ的感性をドイツ映画においていち早く体現した作品のひとつであり、その独特な表現世界は今日においても鮮烈な魅力を放っています。
<あらすじ>
ルツィとディートマーは港町キールで出会い、恋に落ちる。ルツィは小市民的な女性秘書、ディートマーはベルリンからやってきた年下の日雇い労働者。二人は、教育やメディアを通じて身につけた「まっとうな市民生活」の儀礼や習慣を一つひとつなぞるように演じていく。一緒にダンスホールへ出かけ、ルツィは家庭菜園や家族の写真アルバムを見せる。夜を共にした翌朝には、ディートマーが家事を手伝う。やがて二人はクリスマスを祝い、家庭生活の心地よさを分かち合うようになる。しかし、その穏やかな日々は突然終わりを告げる。ディートマーのかつての犯罪仲間たちが現れ、彼を再び犯罪に引き戻そうと、ルツィを誘拐してしまう……。
ソーセージ枕
1971年/西ドイツ/81分/R-16/監督:ローザ・フォン・プラウンハイム/出演:ルツィ・クリン、ディートマー・クラフト、スティーブン・アダチェムスキーほか
10月10日 東京
アンダーグラウンド・イン・N.Y.
特集「ローザ・フォン・プラウンハイムードイツ・クイア映画の先駆者」の一環で上映される『アンダーグラウンド・イン・N.Y.』は、ローザ・フォン・プラウンハイムが1970代のニューヨーク・アンダーグラウンド・シーンを捉えた貴重なドキュメンタリー映画です。小劇場や路上で生み出される新しい演劇やパフォーマンスの世界を中心に、ウィリアム・バロウズ、フェルナンド・アラバール、ロバート・ウィルソン、ディヴァイン、ジャック・スミスなど、ニューヨークの異才たちを取材し、劇場場面も交えながら、アンダーグラウンドな表現の闘争と解放、栄光とX折の歴史をレポートします。ドイツの文化政策を批判し、ウォーホールにも皮肉を向けるプラウンハイムのパーソナルな視点が、当時のリアルな状況を伝えています。
アンダーグラウンド・イン・N.Y.
1976年/西ドイツ/89分/監督:ローザ・フォン・プラウンハイム
10月10日 東京
アニタ 背徳のダンサー
特集「ローザ・フォン・プラウンハイムードイツ・クイア映画の先駆者」の一環で上映される『アニタ 背徳のダンサー』はローザ・フォン・プラウンハイムの1987年の作品です。
1920年代のベルリンで、裸体ダンサーのアニタ・ベルバーは、その奇抜で妥協を許さない生き方によって世間の注目を集めました。振り返ってみると、彼女は戦争、インフレ、性的解放、そしてドラッグによる享楽が入り混じった激動の時代を象徴する存在であったと言えます。ローザ・フォン・プラウンハイムは、この過激な個性のオマージュを、精神科病院に入院した一人の老女の物語として描き出します。カルト的人気を誇る女優ロッティ・フーバーが演じるその女性は、自らをアニタ・ベルバーであると思い込んでいます。彼女が抱く幻想の世界は、ドイツ表現主義のサイレント映画を思わせるイメージに満ちており、撮影監督エルフィ・ミケシュの印象的な映像表現によって鮮やかに描き出されています。
アニタ 背徳のダンサー
1987年/西ドイツ/87分/R-16/監督:ローザ・フォン・プラウンハイム/出演:ロッティ・フーバー、イーナ・ブルーム、ミカエル・オネソー、ローザ・フォン・プラウンハイムほか
INDEX
- 2026年夏の舞台作品
- レポート:名古屋レインボープライド2026
- 2026夏のクィア・アート展
- 特集:第33回レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜
- 特集:プライドマンス2026東京
- レポート:プライドクルーズ大阪2026
- 特集:2026年6月の映画・ドラマ
- レポート:山口レインボープライド2026
- 名古屋のゲイフェス「NLGR+2026」が熱い!
- レポート:乱雄會presents六尺ナイトvol.14
- レポート:huGe+Xposure -ふんどしBanquet-
- レポート:いわてレインボーマーチ2026
- レポート:京都レインボープライド2026
- 特集:2026年5月の映画・ドラマ
- 特集:GAY NIGHT 2026 GW
- 特集:2026年4月の映画・ドラマ
- レポート:GAP6「2030年までのHIV流行終結を目指すPhoto&Movieプロジェクト」記者発表会
- 2026上期の舞台作品
- レポート:第4回岸和田レインボーパレード
- 春だから検査を受けよう! 東京都新宿東口検査・相談室レポート
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