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ビリー・ポーターがエミー賞ドラマ部門主演男優賞を受賞、オープンリー・ゲイの俳優として初

2019年09月23日

 7月にノミネートが発表され、ビリー・ポーターが黒人のゲイとして初めて主演男優賞にノミネートされたことも話題となった今年のエミー賞。現地時間9月22日にエミー賞授賞式が開催され、見事に、ビリー・ポーターがドラマ部門の主演男優賞に輝きました。オープンリー・ゲイの俳優としてエミー賞で主演男優賞を受賞したのはビリーが初めてだそう。史上初の快挙です。

 80年代NYのLGBTQ+コミュニティ(とりわけゲイとMtFトランスジェンダー)をフィーチャーしたライアン・マーフィ制作のドラマ『POSE』に出演していたビリー・ポーターが、第71回プライムタイム・エミー賞のドラマ部門で主演男優賞を受賞、オープンリー・ゲイの俳優として初めて主演男優賞を獲得するという栄誉に輝きました。
 名前を呼ばれたビリーは、両腕をブンブン振り回して全身で喜びを表しながらステージへ上がり、プレゼンターのケリー・ワシントンとギュッとハグ、そしてマイクの前で「あぁーーー!」と叫んでから、スピーチをはじめました。
「この部門は、ラブです!ラブ!自分が生きている間にこんな日が訪れたことに、感動し、圧倒されています。ジェームズ・ボールドウィン(※)は言いました。『自分に対して植えつけられた穢れた考えを吐き出して、自分にはこの地球上に存在する権利があるという考えに至るまで長い時間がかかりました。あと少しで信じるところでした』。自分には権利がある。君にも権利がある。私たちみんなに権利があるのです!」
 その後ビリーは涙の入り混じった声で、同じ部門にノミネートされた俳優たちに「あなたたちと同じ空気が吸えているだけで光栄です」と言って、夫をはじめとした家族や『POSE』のキャスト、プロデューサーのライアン・マーフィなどへの謝辞を述べ、客席に向かってこうシャウトしました。
「僕たちアーティストは、この地球上に暮らす人たちの考え方や感じ方の分子構造に影響を与えられるんです。だからやめないでください。真実を語るのをやめないでください。みなさんを愛しています!」
 拍手喝采で称えられたビリーは最後に、「お願いだから終えてくださいと言われています」とエミー賞主催者側に急かされていることを明かして笑いを誘ってから、ステージを後にしました。 
 アカデミー賞のタキシードドレスや、MET GALAの太陽神など、レッドカーペットでのファッションに注目が集まっているビリーは今回、大きなつばがインパクト大なハットをかぶって登場しました。ヘッドピースデザイナーのスティーブン・ジョーンズがビリーのために制作したものだそうです。スーツはマイケル・コースのカスタム、ジュエリーはオスカー・ハイマンだったそうです。

※アメリカの公民権活動家。著書の中には黒人でありゲイであることをテーマにしたものもあります。

 それから、今回のエミー賞授賞式では、ドラマ『The Act(ザ・アクト)』でリミテッドシリーズ部門の助演女優賞を受賞したパトリシア・アークエットのスピーチが、人々の胸を打ちました。パトリシアは「50歳になった今、人生最高の役を手に入れられていることに感謝しています。しかし、私の心は悲しみでいっぱいです。妹のアレクシスを亡くしたからです」と、2016年に他界したアレクシス・アークエットについて涙ながらに語ったのです。
「トランスジェンダーの人々は今でも迫害されています。アレクシス、私は毎日あなたを思い、喪に服しています。そしてこれからの人生、トランスジェンダーの人々が迫害されなくなるまでずっとそうします。トランスジェンダーに仕事を与えてください。トランスジェンダーだって人間なんです。あちこちに存在する偏見を取り除きましょう」
 このスピーチは、スタンディングオベーションで讃えられました。

 パトリシアの涙のスピーチにスタンディングオベーションを送っていたラバーン・コックスも、この日、ファッションでトランスジェンダーの権利向上を訴えました。
 ラバーン自身がデザインしたという虹色のクラッチの一面には、「10月8日 タイトル7 最高裁(Oct 8, Title VII, Supreme Court)」の文字が。そしてもう一面には、トランスジェンダー・フラッグと「トランスは美しい(TRANSISBEAUTIFUL)」というハッシュタグが描かれていました。
 アメリカでは、LGBTQに対する雇用差別が性差別にあたるかどうかの審議が10月8日から最高裁で始まります。この審議では、人種、宗教、性別、出身地を理由とした雇用差別を禁じる1964年の公民権法「Title VIIof the Civil Rights Act of 1964”」にLGBTQの労働者が該当するかどうかも審議されます。

 なお、今回のエミー賞では、オープンリー・ゲイのベン・ウィショーが「英国スキャンダル〜セックスと陰謀のソープ事件」で、テレビ映画部門助演男優賞に輝いているほか、「ル・ポールのドラァグ・レース」がコンペティション部門作品賞を受賞しています。(受賞結果の一覧はこちら



ビリー・ポーターがLGBTQとしてエミー賞で歴史的快挙(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17304703

エミー賞2019で「トランスジェンダーの権利」求めパワフルな訴え(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17304683

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