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【米大統領選】オープンリー・ゲイのピート・ブティジェッジが初戦・アイオワ州で勝利! 本当にゲイの大統領が誕生するかもしれません

2020年02月06日

 米大統領選の民主党指名候補選びの初戦として全米の注目を集めたアイオワ州の党員集会の暫定結果が2月4日(現地時間)に発表され、大方の予想を覆し、オープンリー・ゲイのピート・ブティジェッジ候補が26.2%(集計率97%)の支持を得て首位に立ち、全米を驚かせました。
 もしもこのままの勢いで民主党の大統領候補に指名され、トランプ大統領に勝利すれば、本当にアメリカ初のゲイの大統領が誕生することになります。
 
 今後の指名候補選びにおいて非常に重要な意味を持つ初戦・アイオワ州で勝利を収め、「これは間違いなく運動の勝利だ」と語ったブティジェッジ。昨年1月に大統領選への出馬を表明したばかりの(当時、彼を全面的に応援してもよさそうなゲイサイトですら「勝ち目の薄い(一か八かの)大穴候補」と評していました)、国政の経験もない、資金もない無名の候補が、並み居る候補に打ち勝ち、首位に立てたのは、なぜなのでしょうか?
 
 「(2016年の)前回はヒラリー・クリントンに投票したが、トランプに敗れた。あの失敗を繰り返したくない」と、エンジニアのジェフ・ティグロテンホイス(52)は語ります。適任と思う候補が決まらず、政治経験が豊富で、超党派の立法活動の実績をアピールしているエイミー・クロブシャーとどちらにするか、前夜まで悩み、「米国を変えるには若い力しかない。弁も立つ彼ならトランプに勝てる」とブティジェッジ氏を推すことを決断したそうです。
 「ブティジェッジは若く、分断した米国を結束できるリーダーだ。バイデンはもう過去の人だ」とフランシス・スティーフォー(63)は語りました。
 ブティジェッジと争うバーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員、ジョー・バイデン前副大統領がいずれも70代であるのに対し、38歳のブティジェッジは飛び抜けて若い候補(指名争いに名乗りを上げている11人の中でも最年少)です。ブティジェッジもインタビューなどで「私たちは世代交代が必要だ」と強調しています。
 ピート・ブティジェッジは、高校時代は「最も大統領になる可能性が高い生徒」に選ばれたほどの「神童」で、ハーバード大学を卒業後、超エリートの証とも言われるローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学し、コンサルティング大手マッキンゼーに勤務、生まれ故郷である中西部インディアナ州の人口約10万人の街・サウスベンドの市長に史上最年少の29歳で就任し、市の財政を立て直しました。そして、海軍予備役に志願し、市長の役職を休職してアフガニスタンに従軍した経験を持ちます。
 若くして米大統領の座をうかがう点では、オバマ前大統領と共通するものがあります。3日の党員集会では「2008年のオバマを思い出してほしい。今年はブティジェッジだ。彼は新顔だ」と支持者が呼びかけました。「オバマもブティジェッジも、2人とも人々とうまく打ち解け、個人的な親しみを感じさせる」と、支持者のルー・バンダーボルト(76)は評します。大統領候補としての清新さや、有権者の心をつかむ巧みな演説も相通じるものがあるといいます。
 「(トランプ)大統領のビジョンは暗く、分断をもたらす。われわれのビジョンは違う」。トランプ大統領の一般教書演説後、ブティジェッジはビデオメッセージで支持を呼びかけました。左派の候補がトランプ大統領との対決姿勢を前面に出しているのに対し、分断を乗り越え、課題に対処するリーダーが必要だと、党派を超えて呼びかけ、トランプ政権のもと「分断疲れ」を感じている層にも支持を広げてきました。
 政策的には中道の立ち位置で、サンダースら左派の候補が掲げる国民皆保険や大学無償化など、巨額の財源が必要な政策とは一線を画し、経済・外交政策の現実路線が際立ちます。
 また、ゲイであることをオープンにし、夫のチャスティンとともに選挙運動を展開しています。昨年5月には、『TIME』誌がブピート&チャスティンの写真を表紙に掲載し、大統領とその家族を意味する「ファーストファミリー」と題したことが話題を呼びました。
 
 アメリカの政治に詳しい慶應義塾大学の渡辺靖教授は「初戦のアイオワ州にかなり力を入れていて、サプライズを起こして、勢いをつけていくという戦略をとっていたが、それが見事にはまった」「党員集会では、強固なファンがブティジェッジを後押しした。中道派として一定の安心感があると同時に、若々しく、オバマ大統領の再来のような新たな息吹を、アメリカ政治の中に吹き込んでくれる人だとの期待が、ブティジェッジをここまで押し上げた。今後、かなりダークホース的な存在感を示していくかもしれない」と分析しています。
 
 とはいえ、ゲイであるブティジェッジは黒人有権者からの支持があまり見込めないという見方もあり※、今回アイオワで僅差で2位となったサンダースも、若者の絶大な支持を得ており、大票田であるカリフォルニア州など予備選が集中する3月3日のスーパーチューズデーには前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグも参戦する見込みで、民主党の指名候補争いはまだまだ混戦模様です。

※これまでの世論調査で、オープンリー・ゲイの大統領をアメリカ人が受け入れられるかどうかについて、様々な結果が出ています。『マクラッチー』紙が昨年行った調査によると、民主党の重要な支持層である黒人有権者の多くがブティジェッジ候補の性的指向を問題視する可能性があることが示されているそうです。
  
 ゲイであることに関して言えば、今回ブティジェッジに投票した女性が、同氏がゲイであることを知り、信仰を理由に投票内容の撤回を求める出来事がありました。
 彼女はブティジェッジ陣営の選挙区幹事に対し、「彼には同性のパートナーがいるって? 冗談でしょ?」「なら私はそんな人間にホワイトハウスにいてほしくない。だから私の票を返してもらえますか?」と要求したそうです。
 一方、この女性とのやり取りに応じた選挙区幹事のニッキー・ヒーバーは、「心の奥深くまで掘り下げて考えてもらいたのですが、相手が言うことに賛成できるのなら、その人が女性なのか男性なのか、異性愛者なのか同性愛者なのかは重要なのでしょうか」と語りました。女性が「彼は聖書を読んだ方がいい」と述べると、ヒーバー幹事は「ピートは聖書を読んでいます」「あなたの考え方は尊重しています」「でも、自分の心の中に問いかけてほしい。あなたはキリスト教徒女性のようだし、私もキリスト教徒の女性だから。私の神は、私に対してすべての人を愛してほしいと考えている」と語りました。
 この様子は動画に捉えられ、ニッキー・ヒーバーの冷静で思いやりのある対応を称賛する声が上がっています。







民主党アイオワ州党員集会 ブティジェッジ氏首位 集計続く(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200205/k10012273531000.html

民主党アイオワ州党員集会 ブティジェッジ氏首位保つ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200206/k10012274431000.html

【報ステ】ブティジェッジ氏 アイオワで暫定トップ(ANN)
https://www.youtube.com/watch?v=Sy7Bcfwwei8

38歳新星ブティジェッジ氏 世代交代訴え(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55287530V00C20A2FF8000/

米民主、波乱の船出 集計混乱、本命不在…「トランプ氏に勝てるのはだれだ」 2020年大統領選(毎日新聞)
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20200204/k00/00m/030/255000c

<米大統領選>ブティジェッジ氏 首位 アイオワ州・中間集計(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202002/CK2020020602000151.html

ブティジェッジ氏の同性愛知らず… 支持者が投票撤回を要求(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3266927

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