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仕事や収入が減って住まいを失ってしまいそうな方へのアンケートの詳細が発表されました

2020年06月24日

 「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」がこの5月、LGBTのなかにも新型コロナウイルスの感染拡大の影響で仕事や収入が減り、住まいを失ってしまう方が増えていくのではないかとの懸念から緊急アンケートを実施しました。
 その結果、仕事が危機的という方が3割に上り、すでに住まいをなくしている方も4名いらしたとのことで、シェルター(同会が中野区に開設した「虹色ハウス」)に入居することになった方もいらっしゃいますが、もう1部屋シェルターを増やしたいということで、クラウドファンディング(支援のお願い)を始めています。
 このアンケートの結果の詳細が「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」から届きましたので、あらためてご紹介いたします。
 本当に切実な声がたくさん寄せられています。一般の会社で働いていて仕事がなくなって生活が苦しくなったという方もいらっしゃる一方、休業を余儀なくされたゲイバーのマスターやミセコさんの、お店が潰れてしまったとか、収入がゼロになって仕方なく部屋を引き払い、荷物を詰めて地方の実家に帰った、といった声もたくさんありました。ぼくらが安心して過ごせる、心の拠り所である、何かあった時には相談に乗ってくれたりもする、かけがえのない居場所であったゲイバーの人たちがこのような苦境に立たされていること、本当に胸が痛みます。一介のリーマンだったりフリーランスだったりするぼくらができることは限られているのですが、こうして(「#SAVEthe2CHOME」だけでなく)「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」の方たちが支援してくださっていることに感謝申し上げたい気持ちです。また、「親にも言えないマイノリティは、自分の家族もできなかったりするので、本当に孤独ですし、精神的にも辛すぎです」といった悲痛な叫びも聞かれました…。1人でも多くの方が救われたり、希望を持てるようになることを願います。
 
 
【LGBT支援ハウス コロナ影響緊急アンケートについて】
■アンケートの背景
・今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、仕事や収入が減ることで、今後、住まいを失う方が増えることが予想されますが、LGBT当事者においても、そうした影響は、どのように現れるか、貧困によって住まいを失ったLGBT当事者に住居を提供するなどのサポートに活かすために把握する必要がある。
■アンケートの目的
・LGBT当事者の方々が、仕事や住まいについてどのような困難を抱えているのか、これからどのようなサポートがあるとよいか現状を把握し、行政への施策提言や私たちの活動の充実につなげていく。
■調査概要
実施主体:LGBTハウジングファーストを考える会・東京
正式名称:LGBT支援ハウス緊急アンケート〜新型コロナウイルスによる仕事や住まいなどへの影響〜
調査方法:ウェブ上のアンケートフォームを利用 (Googleフォーム)
回収期間:2020年5月2日〜6月5日 (35日間)
回答者数:122人
調査項目:
◯属性:性自認または性的指向・年代・経路・当会の存知
◯質問:
(1)仕事・収入への影響 
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、お仕事や収入が減っている方は、その状況について教えていただけますか(友人、同僚、家族の立場から、LGBT当事者について回答いただく場合は、その方の年代とセクシュアリティも教えてください)
(2)住まいへの影響 
新型コロナウイルスの影響で、住まいや寝泊りをしていた場所(居所)を失った、あるいは今後失いそうな場合、その状況について教えていただけますか(友人、同僚、家族の立場から、LGBT当事者について回答いただく場合は、その方の年代とセクシュアリティも教えてください)
(3)希望するサポート
上記の件について、今後どのようなサポートがあるとよいと思いますか。自由にご記載ください。
■データの取扱について
・今回の調査は、「オープン型ウェブ調査(非確率標本:調査実施者が広報を行い、協力者を集める)」のため、集まった回答は社会全体の正確な縮図にはならない、一方、調査テーマに強い関心の持つ層が自発的に回答するため、無作為抽出では把握困難な人口層の実態を捉えることができる等の特徴があり、回答数も120程度と十分な数がないため、調査の回答傾向を一般化することはできないといえる。調査結果の取扱には注意が必要である。

【アンケート結果】
<回答者>
回答数:122件
属性:
◯性的指向・性自認      
ゲイ 89(73%)
レズビアン 7(6%)
バイセクシャル男性 4(3%)
バイセクシャル女性 2(2%)
トランス男性(FtM)    4(3%)
トランス女性(MtF)    5(4%)
本人ではないがLGBT当事者を友人等に持つ 6(5%)
ノンバイナリー 2(2%)
クエスチョニング、クワロロマンテック 1(1%)
アセクシャル 1(1%)
ここに当てはまらない 1(1%)
合計 122
◯年代        
10代以下 1(1%)
20代 21(17%)
30代 32(26%)
40代 40(33%)
50代 25(20%)
60代 3(2%)
合計 122

<質問1への回答:仕事や収入への影響>
 「イベントの仕事をしていたが、全く仕事がない状況(40代、ゲイ)」「内定をいただいた勤務先も入社日が先延ばし状態で、アルバイトも決まらず生活が苦しい(20代、ゲイ)」「フリーランスなので仕事が全くない状態(30代、レズビアン)」「外回り営業(お酒関係の会社)の仕事のため、完全に仕事が無く、今現在収入がない状態(20代、ゲイ)」「会社が潰れることになった。7月以降に無職(30代、ゲイ)」といった声が上がっていました。ほかにも、LGBTならではの回答が様々寄せられています。
・ゲイバーを経営しているが、収入が激減した。(40代、ゲイ)
・ゲイバーで働いていたが、自粛休業となり、収入がゼロに。(30代、ゲイ)
・マッサージと飲食店の仕事が4月頭で完全休業となり、日払いの仕事をするようになったが、毎日仕事があるわけではなく、生活はギリギリ。(ゲイ、20代)
・飲食店やバーの自粛休業に伴い、収入がゼロに。(ゲイ、30代)
・勤務先のゲイバーが休業となり、辛い。(ゲイ、20代)
・半年前にうつ病で会社を退社し、ゲイバーで働きながらなんとか生計を立てていましたが、お店が閉店してしまった。(ゲイ、40代)
・夜の仕事。生活保護から抜け出す予定が白紙になった。障がい者雇用を目指し、就労移行支援に戻ろうと思う。(トランス女性、40代)

<質問2への回答:住まいへの影響>
○現に住居なし
・ネットカフェだったり、公園だったり。(30代、バイセクシュアル男性)
・社宅を出なくてはいけなくなった。(30代、レズビアン)
・仕事が無くなって家賃の支払いが難しくなったので、都内の友人の家に少しの間泊まることに。実家は地方なので、ウイルス拡散防止のため、なるべく帰らない方向で考えていたので、とても助かった。(20代、ゲイ)
・友人宅や相方宅を転々としている状態。(30代、ゲイ)
○住居をなくす恐れあり
・収入がなく、家賃を含め光熱費を払うのがギリギリ。(50代、ゲイ)
・この状況が続いていくなら、いずれホームレスになってしまうおそれがある。(40代、ゲイ)
・貯金が尽きる前に稼ぎを確保しないと一人暮らしの部屋を退去。その際は実家へ帰る予定。(20代、ゲイ)
・貯蓄がなくなれば家賃が払えず住む場所がなくなる。(40代、バイセクシュアル女性)
・賃貸の部屋を追い出される可能性あり。住んでる人の権利でしばらくはどうにかなるか。家賃が払えない人の行政窓口があるのでなんとかなれば、と思っている。金銭的に頼れる人はいない。(ゲイ、50代)
・友人とルームシェア中。この状況があと2〜3ヶ月続けば、家賃支払いがままならなくなる。(20代、ゲイ)
・ほとんど収入がないので、家賃の支払いができず、居場所がなくなってしまう。(40代、ゲイ)
・都内に部屋を借りていますが、家賃が払えなくなるので、住居確保給付金を申請予定。(30代、ゲイ)
・緊急事態宣言後に無職になり、求職活動中。アルバイト等の求人も無く収入も保証も無いので来月には退去命令が出る(40代、ゲイ)
○家賃滞納中
・今のところは家賃支払いを待ってもらっている状況。(20代、ゲイ)
・5月分は家賃を支払えていない。(40代、ゲイ)
・収入がないため家賃生活費に困窮しています。(30代、ゲイ)
・コロナの影響で仕事がなくなり、収入も減り月収10万円いかないので、家賃滞納中。これが続いたら退出せざるをえない。(20代、ゲイ)
○地方在住
・年内は東京に戻れそうもないので、地方都市で就活する予定。マンスリーマンションを借りているが、家賃代を稼ぐのに日々追われ、精神的にギリギリ。(30代、ゲイ)
○実家・家族同居
・ゲイバーの収入がなくなり、家賃も支払えなくなり、荷物をレンタカーに積めて実家に帰省した。(40代、ゲイ)
・母親から同居を勧められていますが、母親は持病があり、金銭的にも余裕がなく、母親との同居は難しい状況。父親はお金には余裕があるが、地方在住のため、実家に帰るとなると今の仕事は全て辞める必要がある。引越資金もなく、出るに出られない。(20代、ゲイ)
・今は家族で上京して首都圏在住ですが、両親共に職を失ってしまい毎月の生活費がどんどん引かれていくばかりで、地元に帰る事を視野に入れて生活している。(20代、ゲイ)
○住まいと仕事連動
・住み込みの宿泊業で、現在職場は休業中。6月までは休業手当が出るが、その後はわからない。転職する場合、住まいも一緒に失うので不安。(レズビアン、30代)
・営業自粛の影響で無収入のため、店舗や自宅の賃料を捻出できない。(30代、ゲイ)
 
<質問3への回答:今後必要なサポートについて>
「生活保護の利用への支援(50代、ゲイ)」といった生活保護関連のこと、「電話やネットで週に10分でも専門知識のある方と話ができたら(40代、ゲイ)」など相談窓口に関すること、「引っ越しをするための資金だけでも支援してほしい(40代、ゲイ)」など資金援助に関すること、「LGBTハウスの拡大(40代、トランス男性)」など住宅の提供に関すること、「住まいだけでなく、仕事も紹介などトータルなサポートがあるとよい(30代、ゲイ)」など就労支援に関することが挙げられました。そのほか、LGBTならではの回答として、このような声が寄せられました。
・退去させられた人へのシェアハウスでLGBTに特化することで、救う対象や日常復帰へのアドバイスも明確に行える。(40代、ゲイ)
・報道によって自分がセクシュアルマイノリティである事を晒されるのがこわい。本人の意見を尊重して、入院している病院側、もしくは何らかの機関によって、記入用紙等を配布していただけるとよいかもしれない。専用の相談ダイヤルから、マイノリティの人が怯えることなく相談し、もし体調に異変がある場合、その相談ダイヤルを通して、個人情報を保護し、かつ、適切な医療機関へ紹介できればいいかな、とも思う。(20代、トランス女性)
・(今まで海外で生活していたが)仕事、住居、全てゲイとして生きたいと思っているので(日本に帰らなければいけないのは)地獄に行く心境です。(40代、ゲイ)
・仕事をして社会的地位を確保しながら贅沢ができなくても安心して死ねるような環境がほしいです。(50代、ゲイ)
・ゲイバーの営業再開が世間的に認められてほしい。(20代、ゲイ)
・安心できる場所づくり、そこにアクセスする方法を知ることができれば助かります。(30代、ゲイ)
・彼氏が1年ほど、在留資格の延長を繰り返していて、働けない。そのため、家に閉じこもり続けると、心が疲れて、疑心暗鬼になり、被害妄想も強くなる。そのため、何か従事できることを探してきたが、本人のモチベーションに沿わないと、全く手につかず、機嫌も悪くなり、支援している私を責めたりして、関係の危機も感じる。なので、まずは住むことが第一だが、住むところはあるが外に出られない、仕事が無い、不安…という人への支援は、何かに従事しているという気持ちを持てることがあればいいと思う。一方的に施しを受け、ご厄介になっているということも、何かの拍子に周囲や支援者への不満や怒り(本当は自分に対するものなのですが)に繋がることがあるようです。(40代、ゲイ)
・個人事業主とか会社しか補助金が出ないので、個人のそしてさらに親にも言えないゲイやマイノリティは、自分の家族もできなかったりするので、本当に孤独ですし、精神的にも辛すぎです。どうにかしてほしいと切に願います。(40代、ゲイ)
・どこから支援してほしいかわからないほど、毎日混乱しています。(40代、ゲイ)
・今はひたすら日々なんとかしようと動いてるので、なんとも解決のヒントも思い浮かばない。(20代、バイセクシュアル男性)
 
【分析】
 質問1「仕事・収入」と質問2「住まい」への影響について、回答の内容から1.危機的で介入が必要な状況、2.まだ持ちこたえられるがサポートが必要な状況、3.軽微な影響を受けている状況、4.影響ない状況、5.無回答、の5段階で評価を行ってみた結果をお伝えします。まず、仕事に厳しい影響が与えられていることが窺えます。今後、時間の経過により、住まいへの影響が現れてくることが懸念されます。


【考察】
■同じような影響を受けている
・仕事について、コロナの影響は、LGBTにとって、LGBTではない方と同じように様々な職種・業種にわたり、中間層まで含めて影響を受けていることが窺える。
■複数の要因が重なることで生活困窮に
・副業などダブルワークをすることなどでギリギリ生活を維持していた方々が、本業のみならず、副業がなくなることで、生活が困難に陥るなど、自己努力で覆い隠されていた生活の困窮状況があらわになった例も多く見受けられた。
・精神面での困難や障害など、外国籍による課題など、複数の要因が重なることで、生活のバランスが崩れて困窮化してしまうLGBT当事者の生活状況の脆弱さをもっている場合があることもわかった。
■今後は住宅を失う可能性が大きい
・住宅については、調査時点では、仕事ほどではないが、緊急度が高い例も見受けられ、現に住宅を失っているものや失う可能性が高いものも多数あり、今後コロナの影響が長引けば、住宅を失う人が多数出ることが想定される。
■安心できる場が必要
・求めるサービスについては、精神的に追い詰められている声やカミングアウトのしづらさによる不安感も寄せられて、LGBTとして安心していられる場(住まい・職場)を求められている。
■「助けて」と言いづらい
・また、そうしたカミングアウトへの不安や偏見にさらされることを恐れて、行政や支援の窓口や家族など身近な人たちにもSOSがなかなか出せないという、セーフティーネットのへのアクセスはしづらさへの解消も課題であると明確になった。

【メッセージ】
 調査にご協力いただいたみなさまに感謝いたします。
 いただいたみなさまの声を踏まえて、LGBT当事者への理解と適切な対応がなされるように行政等の支援する窓口やサービス提供者に求めていくとともに、当会の支援体制を強化して、SOSを受け止められる状況を作れるよう検討してまいります。
 そして、みなさまの声を引き続き受け付けられるようにアンケート調査を継続していくこととします。

※このアンケートについてのお問い合わせ先
LGBTハウジングファーストを考える会・東京

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