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ニュージーランド総選挙で12人のLGBTQ議員が当選。国会の10%を占め、世界一LGBTQの割合が高い国会に

2020年10月22日

 10月17日、ニュージーランドで総選挙が行われ、アーダーン首相率いる与党・労働党が圧勝するとともに、オープンリーLGBTQの議員が7人から12人に増え、定員120人のうちの10%を占めることとなりました。ニュージーランドは、世界で最もクィアな議会を持つ国となりました。


 アーダーン首相といえば、2017年、37歳の若さで首相に選ばれ、世界で最も若い女性の首脳となった人ですが(その記録はフィンランドのサンナ・マリン首相に破られましたが)、今年のコロナ禍に際しては、科学的知見に基づく理にかなった発言と「500万人のチーム」に団結を呼びかけるリーダーシップで封じ込めに成功、世界有数レベルの素晴らしい成功を収めました(死亡者は累計で25人。第二波にも勝利)。この見事なコロナ対応を国民に評価されたことも、17日の総選挙で与党・労働党が圧勝した理由の一つと評されています。労働党は64名の議員を確保し、単独過半数を獲得しましたが(国会の定員は120名)、より広い合意形成を図るため、緑の党(10名)と協議を行なっているそうです。
 ロイターでも報じられたように、今回の総選挙の結果、女性や非白人、LGBTQの議員が多数当選し、ニュージーランドの国会はこれまでで最も多様性に富んだ構成になったそうです。
  
 Pink Newsによると、これまで世界で最もオープンリーLGBTQの議員の割合が高かったのは、650人の定数のうち45人(7%)がオープンリーLGBTQの議員である英国国会だったそうですが、今回の総選挙で、ニュージーランドのオープンリーLGBTQの議員が7人から12人に増えたことで、国会の10%を占めることになり、世界一の割合になりました。
 
 昨年9月、ラグビーW杯に合わせて開館した「プライドハウス東京2019」のオープニングイベントにも登壇したのを憶えている方もいらっしゃるかと思いますが、元女子ラグビー選手でオープンリー・レズビアンのルイサ・ウォール議員(労働党)は、総選挙の前に「数は大切だ」と語っていました。
「私たちLGBTQ議員は国会において可視性のクリティカル・マスに到達し、価値ある存在と見なされている。もし、LGBTQ議員の率が世界一になるまで議員を増やせたら、それはシンプルに偉大なことだろう」

 今回の総選挙で、ウォール議員のほかにも、労働では、グラント・ロバートソン、メカ・ワイティリ、タマティ・コフィ、キリ・アラン、アイシャ・ヴェラル、グレン・ベネット、シャーナン・ハルバートが当選し、LGBTQ議員となりました。
 アーダーン首相が連立を考えている緑の党には、ジャン・ロジー、クロエ・スワブリック、エリザベス・ケレケレ、リカード・メネンデス・マーチという4名のオープンリーLGBTQの国会議員が誕生しました(緑の党では10名中4名がLGBTQです)
 
 マッセー大学人文社会学部のポール・スプーンリー教授は、新しい国会が重要な世代交代を表象していると述べました。
「高齢で白人の男性という旧世代の議員は去り、マオリやパシフィカ(太平洋の諸島の人)など多様な民族、そしてレインボーコミュニティという、多様性あふれるニューカマーに取って代わられた」
「労働党幹部の半数は女性だ。労働党や緑の党は、今のニュージーランドの人々を代表している」
 
 ニュージーランドは2013年、アジア太平洋地域で初めて同性婚を認め(モーリス・ウィリアムソン議員が国会で行った賛成スピーチは、今でもSNSで拡散され、共感を呼んでいます)(また、可決が決まった瞬間、議場は歓喜に包まれ、「ポカレカレ・アナ」という歌の大合唱に…)、これを記念してニュージーランド航空が空の上での同性結婚式を行なっています。昨年8月には、国会議長が審議中にゲイの議員の赤ちゃんを抱っこしてミルクを与える姿が話題になり、12月にはHIV陽性でもドナーになれる世界初の精子バンクが誕生するなど、いろんな意味で素晴らしい国です。



 日本では昨年の調査でLGBTQが人口の10%という結果が出ていますが、ニュージーランドだけでなく世界中の国々が、もしも人種、民族、ジェンダー(性別)、性的指向、性自認、障害の有無などについての偏見(バイアス)を限りなくゼロに近づけ、平等を達成し、人々の多様性を反映した国会を実現していけば、きっとどの国でもLGBTQ議員が10%くらいになるのではないでしょうか。日本でもいつかそうなる日が来ることを期待します(ちなみに現在、国会でカミングアウトしている議員は尾辻かな子さんと石川大我さんのお2人だけですので、LGBTQ議員の割合は0.28%です)


参考記事:
NZ議会、最も多様性に富んだ構成に 女性・非白人・LGBT議員含む(ロイター)
https://jp.reuters.com/video/watch/idOWjpvC2A69R6LKVFEHVHH2F4VRHVCQ3
New Zealand just elected the queerest parliament in the world with one in 10 MPs identifying as LGBT+(Pink News)
https://www.pinknews.co.uk/2020/10/19/new-zealand-election-lgbt-mps-gayest-queerest-parliament/


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