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バイデン氏が史上初めて大統領勝利演説でトランスジェンダーに言及し、トランプ政権下で迫害されていたトランスピープルに希望を与えました

2020年11月09日

 当確が決まり、LGBTQコミュニティが喜びに沸いた7日の夜(現地時間)、カマラ・ハリス氏とジョー・バイデン氏がデラウェア州ウィルミントンで支持者を前に勝利演説を行ないました。バイデン氏は米大統領に選ばれた人物として史上初めて、勝利演説でトランスジェンダーコミュニティに言及した人物となりました。


 カマラ・ハリス氏は冒頭、今年亡くなった公民権運動のレジェンド、ジョン・ルイス議員の「民主主義は状態ではなく、行動だ」との言葉に触れ、「米国の民主主義は保証されているわけではないということだ。私たちがそのために戦う意思があってこそ強くなる」と語りました。「民主主義を守ることは戦いや犠牲も伴う。だがそこには喜びもあるし、進歩もある。なぜなら私たちにはより良い未来を築く力があるからだ。私たちの民主主義がこの選挙で投票にかけられ、アメリカの魂がかけられていた。あなたたちがアメリカに新しい日を導くのを世界が注目していた」
 それから、「私は母に、そして何世代にもわたる女性たちに思いをはせる。黒人、アジア系、白人、ラテンアメリカ系、そして米国先住民の女性が我が国の歴史を通じて、今夜、この瞬間への道を切り開いてきた。黒人を含め、平等や自由、正義のために戦い、犠牲を払ってきた女性たちはあまりにも見過ごされてきた。だが、自分たちが民主主義の支柱であることも証明した」「すべての女性は投票する権利を獲得し、守るために1世紀以上にわたって努力を続けてきた。そして2020年、新たな世代の女性が票を投じ、自らの声を伝えるという基本的な権利のために戦いを続けた。私は彼女たちの苦難を思い起こし、彼女たちの後を継いで取り組む」「私は女性として初めての副大統領かもしれないが、最後にはならないだろう。今夜、これを見ているすべての小さな女の子たちが、アメリカは可能性に満ちた国であることを知ったからだ」と語り、全国の(世界中の)女性にエールを送りました。(素晴らしい!と絶賛されているのは、みなさんご存じの通りです)
 

 そしてバイデン氏は、Twitterで322万件の「いいね」がついたこちらの映像にも表れているように、多様な人種や民族、宗教、思想、性的指向、性自認で構成されるアメリカのあらゆる人々を尊重し(トランプ大統領が分断したものを)再び統合することを約束しました。
「私たちがなしえた連携を誇りに思う。歴史上最も広範で多様な連携だ。民主党、共和党、無党派、進歩派、穏健派、保守派、若者、高齢者、都市部、郊外、農村部、ゲイ、ストレート、トランスジェンダー、白人、ラテン系、アジア系、ネイティブアメリカン。特に選挙戦が最も低迷していた時にはアフリカ系アメリカ人のコミュニティが私のために立ち上がってくれた」
「今はアメリカを癒す時だ。選挙戦が終わった今、国民の意志は何か。我々の使命とは何か」
「私は、アメリカ国民が私たちの時代の中での大きな戦いにおいて良識、公正、科学、そして希望の力を、結集するよう私たちに託したのだと信じている」
 そしてバイデン氏は、黒人でゲイだった作家ラングストン・ヒューズの『叶わぬ夢のモンタージュ』を引用し、「間違いなくあまりにも多くの夢が、あまりにも長い間、先延ばしにされてきた」と語りました。「私たちは、人種、民族、信仰、アイデンティティ、障がいの有無にかかわらず、すべての人のためにこの国の約束を実現させなければならない」
「私たちは転換点に立っている。私たちには絶望を打ち破る機会があり、繁栄と目的がある国を築く機会がある。私たちならできる。できると私は知っている」

 バイデン氏の勝利演説は、2008年のオバマ氏の勝利演説を思い出させるものでした。それは、史上初めて大統領勝利演説でゲイコミュニティに言及した歴史的なスピーチでした。バイデン氏はオバマ氏のレガシーを受け継ぎながら、さらに、トランスジェンダーという、トランプ政権の迫害に遭い※、不安に苛まれ、極めて脆弱な状況に置かれている人々に、大統領として支援していくことを約束し、希望を与えたのです。本当に素晴らしいことです。
  
※トランプ大統領は、2017年2月にトランスジェンダーを擁護する(公立学校での自認性でのトイレ使用の権利を認める)オバマ氏の通達を破棄し、7月には「トランスジェンダーの従軍を禁止する」と発言し、2018年10月には性別変更を禁じる法案を準備していることが明らかになり、今年は医療保険制度の性差別禁止条項からのトランスジェンダーの排除(医師が堂々と差別できるようになる改悪)を進めていました。今年アメリカ国内で殺害されたトランスジェンダーの数は30名に達しています(すでに昨年を上回っています)


 なお、バイデン氏は閣僚人事を含めた新政権構想に着手しはじめたとそうですが、3月まで民主党の大統領候補者指名獲得を目指していたピート・ブティジェッジ氏が、国連大使または退役軍人省長官に起用されると目されている、と報じられています。もし後者に任命されれば、史上初のオープンリー・ゲイの閣僚になります(オバマ大統領は2015年、陸軍長官にオープンリー・ゲイのエリック・K・ファニング氏を指名していますが、閣僚にはLGBTQの人物は起用していませんでした。また、トランプ大統領はオープンリー・ゲイのリチャード・グレネル氏を国家情報長官代行に起用していますが、閣僚ではありませんでした)
 
 それから、カマラ・ハリス氏はカリフォルニア州選出の上院議員ですが、副大統領になるため、同州上院議員の補欠選挙が行われることになります。ハリス氏の後を継いで上院議員になるのでは?と目される人物として、現ロングビーチ市長のロバート・ガルシア氏の名前が急浮上しているそうです。もしガルシア氏が当選すれば、初のラテン系ゲイの上院議員となります。

 

参考記事:
女性副大統領「最初だが最後でない」ハリス氏演説全文(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65999700Z01C20A1FF2000/
「アメリカが再び世界に尊敬される国となるために」バイデン氏勝利宣言で何を語ったか 演説全訳(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/105157
Joe Biden is the first president-elect in US history to include transgender people in his victory speech(Pink News)
https://www.pinknews.co.uk/2020/11/08/joe-biden-victory-speech-transgender-people-first-time-president-elect-wilmington-delaware/
バイデン政権「米国を象徴」 閣僚人事も本格化―米(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020110900813
Will a Latino gay man replace Kamala Harris in the Senate?(LGBTQ Nation)
https://www.lgbtqnation.com/2020/11/will-latino-gay-man-replace-kamala-harris-senate/

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