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東北初! 青森県弘前市が同性パートナーシップ証明制度を実現しました

2020年12月05日

 青森県弘前市が同性パートナーシップ証明制度導入へのニュースでお伝えていた通り、12月4日、東北で初めて弘前市が「市パートナーシップ宣誓制度」を制定しました。世界人権デーにあたる12月10日からスタートするそうです。
 市役所で会見した桜田宏市長は、「悩みや生きづらさを抱える人の不安を少しでも解消できるよう取り組んだ。今後、アパートの入居や入院の手続きにもサービスの利用を検討したい」「制度を契機に困難な状況に置かれている人への理解と共感が広がり、多様性を尊重するまちづくりが一層進むことを願う」と語りました。

 同制度の対象は市内在住または転入予定の成人で、双方または一方が性的マイノリティであるカップル。市に宣誓書を提出すると、受領証を交付されるもの(いわゆる世田谷方式)です。
 カップルのどちらかが所得課税証明書の代理申請や市民税の代理申告などを行う際、従来は委任状や同意書が必要だったり、関係性の聞き取りが行われたりしましたが、受領証があれば窓口で提示するだけで手続きを進められるようになるといいます。
 宣誓する場合は、事前に市企画課ひとづくり推進室に予約し、当日、住民票など必要書類を持参し、二人が宣誓書に記入すれば「受領証」を即日発行するそうです。10日から受付が始まります。
 市は今後、受領証を持つカップルに夫婦と同等のサービスを提供する民間事業者が増えるよう取り組むほか、市民にも理解と共感が広がるよう努める方針です。

 市は制度導入に先立ち、9月15日から約1ヵ月間、パブリックコメントの募集を行ない、61人と2団体から89件の意見が寄せられましたが、内訳は賛成15件、反対44件だったそうです。東奥日報によると、反対として「市民に性的マイノリティの人たちに対する差別や偏見があると思えない。制度導入によって、行き過ぎた批判を浴びせられ、地域社会の雰囲気を壊すことにならないか」「制度ではなく、市民の思いやりで性的マイノリティの人たちの悩みや生きづらさを解決できないか」といった意見があったそうです(この反対コメントを見た方からは、半ば唖然として「そのような理屈で制度を認めようとしないことが差別でなくて何なのか」などの声が上がっていました)
 こうした反対に対し、桜田宏市長は「制度は反対する人に何ら不利益や変化をもたらさない」として制度導入を決めたそうです。「当事者が抱える不安を軽減し、多様性を尊重するまちになるよう市民に働きかけていきます」(素晴らしいですね)
 
 なお、弘前市では制度導入を控えた11月、「性的マイノリティの人たちの人権保障の観点から自治体職員に期待されること」をテーマに市職員を対象とした研修会が開かれました。講師を務めた弘前大学男女共同参画推進室の山下梓助教は、LGBTQの基本的な概念や、日本が複数の国から制度設計を進めるよう勧告を受けている状況などを説明。県にゆかりのある当事者の多くが差別や偏見、生きづらさを感じたことがあるというアンケート調査の結果や、行政当局が「無関心であったり知識がないということは公権力の行使に当たる者として許されない」とした東京高裁の判例(1997)を引用し、「皆さんと同じように地域の中で暮らしている(当事者の)人たちがいる。一緒に考え、取り組んでもらえれば」と呼びかけました。
 また、同じ11月には、市立小中学校の教職員らを対象に開かれた性教育研修講座で、性的マイノリティ(LGBTQ)について理解を深められるような研修が行なわれたそうです。
 

 青森県に限らず、東北地方(に限らず、地方)では、まだまだ(男尊女卑で)同性愛に対する根強い偏見や差別が残っている地域も多いことでしょう。弘前市は北東北の中でもかなり文化的な都市なのですが(もともと津軽藩の城下町として栄えた街であり、県内唯一の国立大学である弘前大学があり、様々な文化人を輩出しています)、それでも、今回のように反対意見が上がるのです…。浦添市などのように、強い反対に遭い、制度づくりをやめてしまうケースもあるなか(古くは、2004年に都城市で同性愛者の人権を擁護する画期的な条例が制定されましたが、猛烈な反対に遭い、2年後に削除されてしまいました。これらの反対は特定の宗教団体によるものだと見られています。こちらの秋田のケースもそうです)、弘前市はそのような声に耳を貸さず、同性パートナーシップ証明制度ができたところで「既存の婚姻制度が脅かされたりはしない」と決然と制度導入を決めてくれました。市長さんのメッセージも、たいへん素晴らしかったです。東北地方全体への希望となることでしょう。弘前市での制度実現を心よりお祝い申し上げます。
 
 
参考記事:
弘前市、パートナー制度導入 性的少数者カップル認定(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20201205/ddl/k02/040/019000c
弘前市パートナーシップ制度 10日施行(陸奥新報)
http://www.mutusinpou.co.jp/news/2020/12/62621.html
弘前市パートナーシップ宣誓制度10日に施行(東奥日報)
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/446617
弘前市パートナーシップ制度に賛否の意見(東奥日報)
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/444720
LGBTQ理解へ弘前市が職員向け研修会(陸奥新報)
http://www.mutusinpou.co.jp/news/2020/11/62434.html
性的少数者に理解を 弘前市教委、教職員らに研修講座(東奥日報)
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/439309

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