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LGBT国会議員連盟の総会で国勢調査の同性カップル集計など様々なLGBT関連の課題について話し合いが行なわれました

2020年09月09日

 9月8日、超党派でLGBTの課題について考える「LGBT議員連盟」の総会が衆議院議員会館で開かれ、国勢調査の同性カップルの集計や、外国人同性パートナーの在留資格について、話し合われました。一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんがレポートしています。

 超党派の国会議員連盟「LGBTに関する課題を考える議連」(以下、「LGBT議連」)は2015年3月、東京都渋谷区が同性カップルに証明書を発行する条例の制定を発表したことを踏まえ、LGBTへの差別をなくそうとの趣旨で、自民党の馳浩・元文部科学副大臣、公明党の谷合正明・政調副会長、民主党(当時)の細野豪志・政調会長らの呼びかけで発足しました(なお、LGBT議連の発足を受けて、LGBTの側も、窓口を一本化するために「LGBT法連合会」を立ち上げました)。以後、たびたび総会が開かれ、LGBTの社会的課題について話し合われてきたほか、2017年3月には、レインボー国会にLGBT議連のメンバーら12人が参加、2018年3月の第2回レインボー国会、2018年12月の第3回レインボー国会にも参加しています。
 
 今回のLGBT議連の総会では、LGBT関連団体から、10月に予定されている国勢調査における同性パートナーの扱いや、国際同性カップルの在留資格、教育・スポーツや雇用労働分野におけるLGBTに関する取組みの要望などが議論されました。以下、できるだけ簡単にご紹介します(詳細は松岡さんの記事「国勢調査の同性カップル集計、外国人同性パートナーの在留資格、LGBT国会議員連盟で議論」をご覧ください)
 
 国勢調査で同性パートナーがお互いを「配偶者」と記入した場合、(以前は誤記扱いでしたが、現在は)おじやおば、いとこなどの「他の親族」として集計されてしまう問題について、弁護士の永野靖さんや社民党・福島みずほ議員、共産党・清水ただし議員らが同性カップルをパートナー関係として集計するよう、要望しました。
 これに対し、総務省統計局の担当者は「国勢調査は法律に基づいた調査を設計しているため、法令から離れた設定で集計することはできません」と回答しました。
「(同性カップルでも)配偶者の欄を記入はできますが、その後の統計処理については、日本の法律に基づいた区分となります」 
「もし同性婚や同性パートナーシップに関する法制度が整備されたら、国勢調査としても捉えていくという順番になると考えます」
 国勢調査の集計としてはパートナーとカウントされないとしても、せめて「元データを公表する可能性」はあるのではないか、と立憲民主党・西村智奈美議員が質問したところ、担当者は「元データをそのまま集計して発表ということはありませんが、(同性カップルが配偶者と選択した)記入状況については検討の余地がある」と回答しました。同性カップルで「配偶者」と記入した人がどれくらいいるかという状況を追うことは可能になるかもしれません。

 次に国際同性カップルの在留資格をめぐる問題です。
 現状、同性カップルは結婚ができないため、たとえ海外で同性婚をしたとしても日本では婚姻関係とは認められず、配偶者ビザを得ることはできません。そのため、外国人同性パートナーは就労ビザなどで日本に滞在することになりますが、もし病気などで職を失ってしまった場合、日本にとどまることができず、帰国せざるをえない状況になっています。
 弁護士の高橋済さんは、「外国人どうしの同性カップルの場合、両方の国で同性婚が認められている場合は、日本で『特定活動』という在留資格を取得することができる」にもかかわらず、一方が日本人なら保護されないというのは「まさに不均衡な状況」であり、「同性婚が認められているかいないかにかかわらず、運用で在留資格を与えることが可能です。外国人と日本人のカップルが、ただ日本で一緒に暮らすということを認めていただくよう、ぜひ前向きに進めていただきたい」と要望しました。
 外務省の担当者も「河野大臣が(2018年12月に)双方の国で婚姻が成立していない場合であっても、在留資格を認めることを検討してほしいということを法務省にお願いしています。その後は、いったん難しいという反応でしたが、なんとかお願いできないかと申し出ている」と述べました。
 法務省出入国在留管理庁の担当者は、「現状の法律では、(海外で同性婚をした、外国人どうしの同性カップルの場合)家族滞在ということになりますが、日本では同性婚ができないため、配偶者にはあてはまりません。要望については、国会からも言われており、どのように対応できるか検討したい」と回答。外国人どうしの同性カップルでも「片方の国でしか同性婚が認められていない場合は、日本でも在留資格を認めていません」が、その理由は一方で婚姻関係を確認できても、もう一方で婚姻関係の継続を確認できないから、ということなので「どのように確認できるかという点を在留管理の立場からも考えたい」と述べました。
「日本でも同性パートナーの法制度上の措置があれば、在留資格も可能となってくるかと思います」

 それから、教育・スポーツや、雇用労働、公共サービス、医療福祉などの分野における、来年度のLGBTに関する予算・政策について、です。
 LGBT法連合会は、今年6月に施行された「パワハラ防止法」では企業だけでなく地方自治体や各教育委員会もその対象に含まれているため、ハラスメントの行為者や被害者などの実態把握を調査、結果公表し、教育委員会から具体的な施策を提示することを促すよう要望しました。
 文科省の担当者は、パワハラ防止法にSOGIハラやアウティングが含まれていることについて触れ、「文科省からも、各教育委員会に対して、この点について明示するよう通知を出しました。通知をふまえて、全国で研修会の場を設け、周知を徹底したいと思います」と回答しました。
 雇用労働分野においても、厚労省が実施した「職場におけるダイバーシティ推進事業」の調査を踏まえ、「国などにルールを示してほしいという割合が最も多かった」ことに触れ、ガイドラインの策定を要望しました。
 厚労省の担当者は「せっかく調査を実施し事例集をまとめたので周知を徹底したいと思います。検討段階ですが、好事例について参考になるわかりやすいツールなども作成しようと考えています」と回答しました。
 また、労災申請の基準となる「心理的負荷評価表」がパワハラ防止法の施行を受けて改訂されたものの、アウティングが明記されなかったことについて「アウティングは殴る蹴るなどのわかりやすいパワハラと違う基準となるため、この項目を新設してほしい」と要望しました。
 厚労省担当者は、パワハラ防止法施行に合わせて6月から心理的負荷評価表の項目を追加、「あくまでも認定基準の評価表は判断の具体例を示している」とし、SOGIハラやアウティングも「心理的評価表に照らし合わせて評価する」と回答しました。

 このほか、LGBT法連合会が6月の要望でも求めていた、新型コロナウイルス感染拡大に関連した情報公表の在り方ついての要望に対しては、厚労省の担当者から、情報公表に関する考え方を7月に出したことが報告され、「個人が特定されないよう自治体に通達、周知するように努めたい」との回答がありました。

 記事のまとめとして、「LGBT議連が発足してからもう5年が経つ。そもそもの設立趣旨である(差別禁止法などの)法制化はまだなのか」との指摘もありました。

 ともあれ、こうして超党派で国会議員の方々が集まり、LGBTが直面しがちな困難や社会的課題について、当事者の訴えも聴きながら、できるだけ政策に活かそうとしてくださっていることは、とても意義があり、今後も関心を持って見守っていくべきかと思います。LGBT議連についての情報は、加盟している議員の方々の一覧や、総会の議事録が公表されているわけではなく、今回のような詳細なレポートは、とても貴重です。ありがたいことです。


参考記事:
国勢調査の同性カップル集計、外国人同性パートナーの在留資格、LGBT国会議員連盟で議論(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsuokasoshi/20200908-00197316/

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