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米最大規模のLGBTQ向け高齢者施設がテキサス州ヒューストンに設立されました

2021年07月25日

 テキサス州ヒューストンに6月24日、米国最大のLGBTQ向けシニアハウス「ロー・ハリントン高齢者生活センター」がオープンしました。 



 6月24日にテキサス州ヒューストンにオープンした集合住宅「ロー・ハリントン高齢者生活センター」は、寝室1部屋もしくは2部屋の住戸112戸と、図書室やドッグパークなどの共用施設を備えるLGBTQ向けの高齢者施設です。
 高齢で体が弱くなった人々が地域で暮らし続けるために住居を提供することと、より広範にLGBTQコミュニティのメンバーを温かく受け入れていくことを目的に設置された施設です。月々の家賃は500ドル以下という、良心的な価格です。
このプロジェクトを主導したのは、1978年創設のLGBTQ支援団体「モントローズ・センター」で、開設資金として2650万ドルを集めました。
 入居者はLGBTQコミュニティを支援する「レガシー・コミュニティ・ヘルス・サービシズ」の医療クリニックも利用できます。
同団体によると、高齢のLGBTQは過去に差別的に扱われた体験から病院に行かないことも多いといいます。
 オープニングセレモニーに出席したヒューストン前市長のアニス・パーカー氏(オープンリー・レズビアンの方で、2010年、米国の大都市で初のLGBTQの市長となったレジェンドです)は、「多くのLGBTQは介護を担う子どもがいません。またカミングアウトして経済的に困窮したり、職を失ったりしている場合もあります」と語りました。パーカー前市長は、8年前にLAのLGBTQ高齢者向け施設「トライアングル・スクエア」を訪れ、ヒューストンにも同様の集合住宅が必要だと考えるようになったそうです。 
 ロー・ハリントン高齢者生活センターは、LGBTQの高齢者の受け入れに特化した施設としては全米最大を誇ります。ヒューストン出身の活動家、チャールズ・ローとジーン・ハリントンの名前を取って命名されました。施設中央のタワーは、レインボーカラーに彩られています。
 
 トランスジェンダーであり、ドラァグクイーンとして57年間ステージに立ってきたディナ・ジェイコブスさんにとって、人生は困難の連続でしたが、この施設に入れることになって、ようやく長かったトンネルの出口に光が見えてきたといいます。
「どんなことだろうと最終的にはどうにかなる。500万回の『ノー』と1回の『イエス』。その1回がこれ。これが私のイエスです」 
「ハワイにいた1960年代当時、暴力を受けることは日常茶飯事でした。私たちが私たちであるという、それだけの理由で」
 ディナさんはまた、尊厳を持って人生を全うできなかったLGBTQの活動家たちのことを思わずにはいられないと、このようなLGBTQが安心して暮らせる場所がもっと早くから造られるべきだったと語りました。
 その日の夜、ディナさんはグラマラスなドレスで登場し、歌を披露しました。曲はダイアナ・ロスが伝説のミュージカル「The Wiz」で歌った「ホーム」でした(『POSE』でもMJロドリゲスとビリー・ポーターが歌い、涙を誘った歌です)
 
 
 米国でLGBTQのための高齢者施設ができたのは、2007年の「トライアングル・スクエア」が初でした。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映された『安らぎの家を探して』に詳しく描かれていましたが、差別にも負けず、大きな夢を抱いて生きてきた人たちが、サブプライム・バブルによる不動産価格の高騰で住み慣れた部屋を出る羽目になり、劣悪な生活環境に追いやられ、貯金もなく…という現実に直面し、そんなLGBTQ高齢者が安心して住めるよう、住宅プロジェクトが立ち上がったのでした。
 2010年、実際に「トライアングル・スクエア」におじゃまする機会があったのですが、スタッフの方もたいへん感じがよく、ピアノや広めのミーティングルームがあったり、無料のコンドームBOXが設置されていたり、豊かに暮らせるようにという配慮がなされているという印象でした。
 

 実は、世界初かもしれないゲイのための老人ホームは、1975年にフィリピンのパサイ市で誕生した「The Home for the Golden Gays」でした。これはパサイ市の市議会議員をつとめていたフスト・フスト氏が、高齢のLGBTQの窮状を見かねて自宅の一部を貸し与えたのが始まりで、最大で60名ほどが暮らしていたそうです。しかし、2012年に彼が逝去すると、事情が変わり、継続的に運営することが難しくなってしまいました…が、ゴールデンゲイズのメンバーたちはドラァグ・ショーを行ない、資金集めに奔走し、奮闘しています。
 
 レインボー・リール東京2021で上映された映画『叔・叔(スク・スク)』で、2人のゲイの方が香港議会で高齢者LGBTQのための施設の必要性を訴えるシーンが描かれましたが、これは2016年に実際にあった出来事だそうです(詳細はこちら)。おそらくこの施設はまだ実現しておらず、香港の情勢が変わってしまいましたので、難しそうです…

 それから今年3月、英国初のLGBTQ向けのシニアハウスが誕生したことが報じられました。先進的な英国でも今年ようやく、なんですね。

 そして今年5月、ついに日本初のゲイフレンドリーなシニアハウスが設立されることになったというニュースをお届けしました。8月末には2回目の内覧会が催されるそうです。
 こちらのニュースでお伝えしたように、日本でも様々なLGBTQの高齢者や障害者のための介護・福祉サービスが生まれつつあります。いろんな方たちの努力のおかげです。
 いつか(自治体や企業のスポンサーシップを得て)LAやヒューストンのような大きな施設ができるといいですね。


参考記事:
LGBTQ向け高齢者施設、米ヒューストンに登場 米最大(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/3356582

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