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LGBTQの高齢者や障害者のための介護・福祉サービスが続々と登場、ゲイフレンドリーなシニアハウスの第2回の内覧会も開催されます

2021年07月21日

 LGBTQの高齢者や障害者も安心して福祉サービスを利用できるようにしたいという思いから、当事者が起業した介護施設や障害福祉事業が生まれつつあることを共同通信が報じていました。

 トランス男性の佐藤悠祐さんは昨年、東京都八王子市で障害者への訪問介護事業所「SAISON」を開設したそうです。
 佐藤さんは高校卒業後、専門学校で介護福祉士の資格を取りました。専門学校ではLGBTQに関する知識や接し方に関する授業はなく、また介護や福祉の現場でもLGBTQへの理解が進んでおらず、差別的な言葉が交わされることもあったといいます。そんな環境を変えたいと、以前勤めていた介護事業所を辞め、自ら開業したそうです。
 障害者向けの訪問介護を選んだのは、自宅で暮らす重度障害者や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など難病の人へのサービスが圧倒的に不足しているからだそう。現在の利用者の中にはLGBTQの方はいないものの、広く利用を受け付けているそうです。
 従業員でやはりトランス男性の介護福祉士・荒川優希さんは「利用者との関わり方や自分の悩みを職場で相談しやすいので、心持ちがだいぶ楽」と語っています。LGBTQの高齢者や障害者に門戸が開かれるだけでなく、介護職に携わる当事者の従業員にとっても働きやすい環境が創出されるのは、とてもよいことですね。

 大阪市西成区で「にじいろケアプランセンター」を経営するケアマネジャーの梅田政宏さんは、ゲイであることをオープンにしている方で、西成区にある日本最大級の日雇い労働者の街「あいりん地区」で簡易宿泊所などに身を寄せる高齢男性を中心に約100人の介護サービスの利用計画作りに携わっています。これまでに5人の当事者の方たちを支援してきたそうです。
 梅田さんは、「訪問介護に行ったら、家にゲイ雑誌があった」「亡くなった高齢者に実は同性のパートナーがいた」といった相談が他の事業所から寄せられていると言い、「当事者はなかなかカミングアウトしづらい。僕が間に入ることでサービスを受けやすくなれば」と語っています。
 周辺ではLGBTQフレンドリーなデイサービスや訪問看護事業所も現れているそうで、「ニーズはあるはずで、もっと広がってほしい」と語っています。
 西成区といえば、今年3月、西成区のゲイの方たちが一日だけ女装して歌い踊る「ボールルーム」が開催されたり、そこにも出演した、ずっと独りで生きてきて90歳でやっと本当の自分を隠さずに生きることができるようになった長谷忠さんのことが再びニュースになっていましたが、こうしたゲイの高齢者の方たちが、誰からも理解や共感を得られずに亡くなっていくのではなく、当事者やアライの方のサポートを受けられるようになったというのは、本当に素晴らしいこと。希望が持てます。
 
 元文京区議で福祉問題に詳しい前田邦博さんは、「既存の福祉施設がLGBTQフレンドリーになっていないため、当事者は『自分が利用できる福祉サービスはない』と思い込んで、SOSを出さない傾向がある」と指摘します。
 家族に言えなかったり、いじめや差別を受けたりした結果、孤立や貧困といった負のスパイラルに陥り、住まいを失う人もいます。ところが、公的な一時保護施設(シェルター)は男女別で分けられており、自認する性では利用できなかったり、共同生活のためいづらくなったりして、路上やネットカフェで生活するケースが出ているそうです。
 前田さんも参加している「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」は、(みなさんのご支援もあり)中野区に2戸、LGBTQが安心して利用できるシェルター「虹色ハウス」を運営していますが、必要な人にまだまだ情報が届いていないことが課題だそうです。
 
 それから、うつや発達障害があるLGBTQも安心して利用できる就労移行支援事業所の開設を目指すReBitの薬師さんのことも紹介されていました。


 実は、うつなどの精神疾患を抱えるLGBTQのためのグループホームが2015年、名古屋市に開設されています。名古屋市の一般社団法人「虹望会」が障害者総合支援法に基づく共同生活援助事業所として市内に8部屋を確保し、運営を始めたものです。身近な友人を自死で亡くした経験のある方、うつやパニック障害を患った経験のある方は決して少なくないと思いますが、孤立しがちなうつの方が、同じ性的マイノリティの方から支援を受けられるこのような施設は、本当に意味のあるものと言えます。

 そして今年5月、LGBTQ高齢者のための施設について、「ゲイフレンドリーなシニアハウスの設立がついに実現へ、内覧会が開催」とのニュースをお伝えしました(無事に開催され、『シルバー新報』紙にも掲載されたそうです)。第2回目の内覧会が8月28日(土)に開催されるそうですので、興味のある方はご参加ください(詳細はこちら

 
 これまでなかなか理解・共感に基づく支援が得られなかったLGBTQの高齢者や障害者、精神疾患を抱える人たちに、こうして介護・福祉に携わる当事者やアライの方たちが支援サービスを提供できるようになってきたことは、重ね重ね、本当に意義のあることです。今は若くて健康な方も、将来はこうしたサービスのお世話になる日が来ると思います。全国にこうしたサービスが広がりを見せ、充実していくことを期待します。

 

参考記事:
LGBT向け介護・福祉が登場 当事者起業「安心して利用を」(共同通信)
https://nordot.app/787227465509830656

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